六弾目 どうでも良くなったので爆弾投げてみた!

 突然、ダイナは消えた。大量の爆弾とスナイパーライフルを置いて。きっと、ダイナは気分屋だから何処かへ遊びに行ったのだろう。その程度しか気にかけなかった。

 ニュースをつけた。そして息を止め、ガタンとリモコンを落とした。



  〘ニュース〙

『 ○月○日。○時○○分。噂の“脅威の爆弾魔”が自首しました。彼は、今まで○○○人の人を殺して影に消える凶悪犯でしたがついに折れた模様。彼は記者のカメラに向けピースを向けて俯いて車に乗っていきました。容疑を認めている模様。


 彼は裁判の結果____処刑が決定致しました。


 次のニュースです…。』


 

 テレビには間違いなくピースをするダイナが映っていた。息が止まるのを感じた。背筋が凍った。

 いつ捕まるかわからない。とかいう自虐ネタを披露していたがまさか本当に捕まってしまうなんて。そして、処刑になるなんて…。

 頭がクラクラして痛んだ。どうして?なんで?

言葉にならない苦しみが込み上げてくる。

 ピースをしてるダイナが脳裏に焼き付いた。自首?彼は、自ら捕まったんだ。



 しかし、私はもうもとの普通の人間ではなかった。きっとダイナに洗脳されたんだろう。そんなふうに言い逃れながらダイナの爆弾を持った。



 

 死んだ目で爆弾片手に暗闇を彷徨う。さよなら、素晴らしい世界!!


 暗い夜。真っ赤な花火みたいな爆弾を投げながら豪快に笑った。今まで辛かった事すべて忘れるように。戸惑う人の声。警笛と、警官の凛々しい声。しかし、今の私には何も見えなかった。ダイナが収容されてるはずの刑務所も爆破させた。逃げる人と笑う人。


 何故か溢れる涙。上がる口角に流れ落ちる涙。今までの苦しみを爆破したい。思い出を爆破したい。この日々を爆破して。私自身も爆破して。

 もういいんだよ。さよならだ全部全部吹き飛んじまえ!!

 舞台のスポットライトの下、狂ったように笑う私は爆弾魔。


 壊れた街は美しかった。


「お前も堕ちたなー!!!」

 そう言ったのは誰でもなく間違えなくあいつだった。振り向いた。そこには血と汚れで傷ついたダイナマイトだった。

「なァ?ハルカ!」

 私は笑って泣いてダイナマイトのお腹に抱きついた。ダイナは豪快に笑うとぐしゃぐしゃと頭を撫でてくれた。

「もう最高!楽しい。幸せだぁ。ね!ダイナマイト!!!」

 

 もういいよ。いいんだよ。


「吹き飛んじまえ!!世界!」



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爆弾魔 桐崎 春太郎 @candyfish

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