五弾目 お金欲しいので爆弾投げてみた!
まさかだった。本当に大金を持って帰ってきた。唯一の休みの日はダイナが出かけると言い出した。本当は、ようやく給料が入ったから何か食べに行こうと思ったのだが仕方ない。そう思って休みを満喫していた。寝ていた。気がつくと日が傾いていてダイナに顔を覗かれていた。思わず勢いに身を任せ起きると何故か血だらけだった。つぅ〜んと鼻の先をつく鉄の香り。気の所為と言える匂いではない。私はいつもより楽しそうなダイナを恐れながら恐る恐る聞いた。
「……ど、どうしたの?怪我でもしたの?」
「金が入ったよ。約百万!!!褒めて!」
褒めて褒めてと近寄ってくる犬のようなダイナに後ずさりした。ダイナは無垢だった。きっと恨んでいたから殺した。羨ましいから殺した。そういう理由ではなく、面白いから殺した。金が入るから殺した。それくらいしか理由がないのだろう。それは良くないし教育するべきだ。そう思った。
「……ありがとう。でも、殺しはしちゃ駄目でしょ?駄目なの。わかった?嬉しいけど…でも、誰かを殺すようなら私、嬉しくなんてない。」
「ふぅ〜ん?でもお前の職場も人を殺すようなところだろ?メンタル削って、追い詰めて、やる側に利益がある。殺しとそれ、何が違うの?俺にはさっぱりなんだけど。」
全然違う、と言えなかった。確かにダイナの言うことにも一理あった。しかし、本当に殺しと一緒なのか、ほぼ分からなかった。言葉に詰まってるとダイナはクククッと喉を鳴らした。
「今月は任せて。俺を頼って?な?そんで、冷静になれたらハルカにも仕事やるから待ってて。」
血腥いダイナはそう言って服を脱ぎ始めた。そして慣れた手付きで血を洗い出した。
ダイナの言い方はまるで私が間違えているようだった。私が生きてる世界はダイナが見てる世界と違っている。互いに噛み合っていない。いつもより良いもので彩りも、栄養バランスも良い料理をダイナはいつも通り振舞ってくれた。
本当、その点に関しては感謝ばかり。
暫くダイナが作ってくれた休みを満喫した。本当今まで辛かったんだとわかった。足も、手も、体も痛い。無理してたんだと思い知った。ダイナがやっていることは間違えてる。けれどこうして休みを取ってくれる事が嬉しかった。このままがずっと続いてくれればいいのに。そうとすら考えてしまう。
美味しいご飯。長い睡眠時間。有り余った時間。ダイナが稼いでくれるお金。本当私にとって麻薬のようなものだった。幸せなのに駄目になってしまいそうで怖い。けれど手放せない。
「ハルカ、怒らなくなったね。」
ダイナが突然言い出した。笑って優しい声で。安心しているようなそんな声で。
「疲れてたのよ。」
私は弱々しく笑ってそう言った。ダイナも初めてあった日から優しく、人間らしくなったものだ。
「職場、変えなよ。俺、いつ捕まるかわからないよ?」
やっぱり自覚あるのね。笑った。
「……よく笑うようになったね。」
「ダイナのお陰だね。ありがとう。」
「………うん。」
きっとこれがダイナと交わした最後の会話だった。
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