青年期ささたけ(大学生) 漫画編

 こんな人生を歩んでみたい。

 漫画を読んでいると、そう憧れる世界に触れることは多々あることだと思う。

 今日はそんな私の一冊をご紹介しよう。


 よつばと!(あずまきよひこ 著)


 だいぶ有名な作品だとは思うのだが、念のため軽く説明しておくと――五歳の少女である小岩井よつばと、その父親であるとーちゃんの日常を描いた作品である。

 小岩井家以外の主要キャラクターとしてまず、美少女三姉妹を始めとしたお隣さんの「綾瀬さん一家」が登場する。

 だからといってそこに憧れたわけではないので、邪推してはいけない。


 その他にも、「ジャンボ」や「やんだ」といったとーちゃんの友人たちも現れる。

 別に気の置けない男友達に憧れたわけでもないので以下略。


 私が憧れたのは、そこに流れる時間の緩やかさである。


 思い返せば、小学生の頃に「時間の流れが早い」などと感じたことはなかった。というか時間の流れに気を配ったことすらなかった。夏休みはいつまでも終わらなかったし、一日が二十四時間だと言われても信じることはできなかった。そもそも二十四時間ってなんだっていうくらいだった。

 それが中学生、高校生と年月を過ごすにつれ過去に思いを馳せることが増え――大学生ともなれば過ぎ行く時間の流れに哀愁を感じるようになってしまったのである。

 そんな中で出会ったこの「よつばと!」では、一話につきほぼ一日程度の時間の流れで話が進む。むしろ場合によっては一話で一日も進まないこともある。しかもその一日は、特別なことなど起きない、何気ない日常なのである。


 断っておくが、大学時代の私の一日が振り返る価値のない鈍色にびいろの日々だったわけではない。


 むしろ幾度振り返っても色あせることない虹色にじいろの日々だったからこそ、過ぎ行く時間はあっという間で――それゆえに少しでもその時を留めたいと思えばこそ――作中の緩慢な時間の流れに憧れたのである。


 改めて言うまでもないが、時間は過去へは戻らない。


 だからこそ、時には己の歩んできた道程を振り返り、過ぎる時の流れの早さに想いを馳せるのも一興なのである。

 もっとも――振り返ってばかりでは未来へ進めないので、郷愁もほどほどにしなければ、あっという間に晩冬が訪れて――などと。




 解る人にだけ解るようなオチで申し訳ない。

(注釈:「しまうー」とは作中に登場するキャラクターです)

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