少年期ささたけ(小学生) 小説編

 前回のような過程を経て、無事読書に目覚めた私は、次なるステージに進む。


 小学校である。


 私にとっての幼稚園と小学校の最大の違い――それは図書室の存在であった。


 友人がみんな動物図鑑や植物図鑑など、絵や写真があるものに興味を惹かれている中、多少文字の読めるようになった私は、文章を求めるようになっていた。

 当然である。私は挿絵には飽き飽きしていたのだ。


 文字が読みたい――その欲求を抱えた私は日がな図書館へ通い詰めた。


 手当たり次第に本を手に取り、読めると思ったものは借りて帰る日々であった。とりあえず小学校の一年~三年生くらいで覚えているのは、


 四字熟語辞典

 慣用句辞典

 やどかりのおひっこし


くらいであろうか。正直、文字を眺めていられれば満足していたので、あまりこの頃に読んだ本は覚えていない。


 しかし。

 小学校四年生になった頃、運命の出会いを果たすことになる。


 ズッコケ三人組シリーズ(那須正幹 著)


である。

 おそらく私の人生において、初めて意識的に触れた小説である。

 結果は言うまでもない。




 ドハマリした。




 どのくらいドハマリしたかといえば、返却期限を過ぎても本を返却せず、そのせいで母親に叱られたことがあるくらいである。初めて触れた物語ストーリーは、それほど私にとっては刺激的であった。


 念のためこのシリーズを知らない方へ説明すると、ハチベエ・ハカセ・モーちゃんと呼ばれる小学生三人組が織りなす、様々な事件や日常生活を綴った物語である。話の内容は多岐にわたり、小学生が株式会社を立ち上げたり、無人島に漂流したり、怪盗と対決したり、ハワイに行ったりと――とにかく小学生たちの冒険を描いた物語である。もちろん二十年以上前の小学生が主人公の作品なので、スマホはおろか携帯電話すら登場せず、現代に照らし合わせれば時代設定的に古めかしさは否めないかもしれないが――誰もが小学生の時分に感じた『今日は何かが起こるかもしれない』という好奇心を満たすには、十分に楽しめる作品であると思う。


 田舎の小学校なので年に一冊程度しか新刊が補充されることはなかったが、一度読んだものを何度も読み返すほど、私にとっては思い出深い作品であった。ちなみに今でも全巻揃えたいと思っている。なお先日知ったのであるが、なんでも大人になった三人組の物語も発売されていたらしい。なんてことだ。


 なにはともあれ――こうして私の読書人生は決定づけられた。

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