第6話 再び翠の場合
「いいでしょ」
私は一緒に選んだミキオに十分自慢した後に、その性能を試すべく写メでその街並みを撮ってSNSにあげる。
「ねえ、ちょっと休もうよ」
私はミキオにそう促すと、ミキオは相変わらず爽やかな笑顔で頷く。
店に入ると、コーヒーの香りが充満していた。この匂いが好きで高校のころは毎週のように通っていた事を思い出す。
いつも通り、私はモカを頼みミキオはラテをたのむ。
店員の手はせわしなく動き、笑顔でオーダーを交わす。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
そう言って飲み物を受け取る前にミキオはトイレへと向かい、私はその背中を見送った。
飲み物を二つ受け取ると、荷物で取っておいた席に座り、モカとラテを並べた写真を再びsnsで投稿する。上げただけで満足する私はあまりレスを気にしない。
モカに口をつけると、甘い香りが鼻を抜ける。
その瞬間、携帯が鳴った。
―今どこにいる?―
幸子からのメールだった。
―ミキオと新宿だよ―
―今からそっち行っていい?―
―もちろん―
私が携帯をテーブルに置くと、ミキオが戻ってきた。
「なんか、サチが来るって」
私は笑顔でミキオを見る。
「今?」
ミキオの質問に私は頷く。
「どうしたの?」
あんまり歓迎していないようだった。
「みどり」
そこまで言うと、幸子から電話がかかる。
「ちょっと待って、サチからだ」
ミキオの言葉を遮る。
「着いたよ。どこいる?」
「はやいね」
そう言って店の名前を言おうとしたら、入り口に幸子見えた。
私は笑顔で幸子に手を振る。
サチも手を振りながら笑顔で一歩一歩こちらへ向かってくる。
私はモカをもう一口含んだ。甘さが一瞬広がり、苦さが余韻を残した。
くしゃっとミキオがレシートを握りつぶす音が聞こえた。
目の前に立つサチを見、ミキオを見た。
二人とも何も話さず、互いに視線が交差すると、ミキオからその視線を外した。
「そと、まだ晴れていた?」
私の声だけが鈍く響いた。
多分
そとはまだ晴れている。
外はたぶん晴れている マシンマン @machineman
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