第五章

伝説の都アトランティス


1


ピーターとロビンの、誘拐事件が解決してから、七ヶ月が過ぎたある日、イアンとケンジが飛行船に乗って海岸線を飛んでいた。


「いろんな所を見たけど、この場所がキャプテンの要望に、一番近いと思うんだけど」


「そうだねケンジ、広さも十分有るから、畑や田んぼ、牧場も沢山作れるし、周りが海だから美味しい魚が獲れそうだ、何より人口が増えても大丈夫そうだね」


現在住んでいる場所から、引っ越しをする為に、二人は新しい土地を探していたところ、理想的な場所を見付けたようだ。

そこは陸続きで、円い島になっていて、直径百km位の広さがある。


「ところで子供が産まれたらしいな」


「そうなんだよ、一昨日に女の子が産まれたばかりなんだ、誰に聞いたんだ、情報が早いな」


「やっぱりそうか、イアンおめでとう、狭い町だぜ噂はすぐ広がるもんだよ」


「そう言えばケンジは、できちゃった結婚だったな、何ヵ月になったんだ」


「今七ヶ月だけど、性別は聞いてないんだ」


「そうか、無事に健康で産まれると良いな、子供は可愛いぞ」


その日の調査は終わり町に帰って行った。


今まで調査した結果をまとめて、

キャプテンに報告すると、


「長い間ご苦労さんだったな、この資料によると、この円い島になった土地がもっとも理想的と思えるようだ」


「はい僕達もそう思います、ただ土地が広い分、集落がいくつかあって人が住んでいるようです」


「そうかそれでは早速、明日現地へ行って撮影してきてくれ」


その日の仕事は終わり、婦人病棟のニコルの部屋に入いると、赤ちゃんを抱いてベッドサイドに座り、その横で嬉しそうに覗き込んでいるピーターの姿があった。


「イアンお疲れ様、今お乳を飲んだところよ」


「パパ、お帰り」


「ただいま」

近づいて来たピーターを抱いて、

赤ちゃんの顔を見ると、大きなあくびをしている。


「可愛いいな、眠いのかな、ところで名前はどうするの」


「色々考えて見たけど、アリスと言う名前はどうかしら」


「アリスか、良いね、ピーターはどう思う」


「うん、いいよ」


「じゃあアリスで決まりね」


その日は終わり、

次の日の朝、飛行船に乗って調査に向かう二人がいて、一時間程で現地に着くと、島の海岸沿いをぐるりと一周したあと、渦巻き状に飛んで全体を撮影したあと、町に帰った。


「キャプテン撮影してきました」


「ご苦労様、なるほど島の周りに三十ヶ所、中には五十ヶ所程の集落がある様だな、一つ一つの村と我々が住む為に、開発する話しを

交渉するには無理があるな」


「では、どの様にするのですか?」


「それは特殊な方法を使うのだが、我々と出会っても友好的になる、光りを見てもらう事にしよう」


「そんな方法があるのですか?」


「それがあるんだ、夜に円盤を島の上空に浮かべて光りを出すと、

それを見た人達は深層心理の中に入り、私達と友好的になるんだ、人体的にも精神的にも、何の影響も無いから心配ないよ」


「それだと時間をかけて、交渉しなくても済むので、合理的ですね」


「では、早速明日の夜に円盤を飛ばす事にする、工事開始は三日後からになる」


そして、次の日の夕方六時に円盤十機が、ホープから発進して島の各場所に配置されると、

上空1キロから点滅する光りを五時間出していた、


それを見た人々はアトラのマークがある人間や、工事用の乗り物、ロボットなどを見ても驚かないようにする為に、光りから人の記憶の中に情報が刷り込まれた、


また仲間だと認識しているので、とても友好的になるのだ。


それを見たある村では、


「おいちょっと出て来てみろ」


ぞろぞろと家族全員が家から出てき来て、


「なにー、どうしたのお父さん」


男が空を指差している、


「何なのあれは、光りが点滅しているわ」


「月よりも明るいなー」


「何じゃあれは、初めて見たぞ」

じいさんも驚いていた。



それから二日後の朝、工事を始めるべくホープが空に浮かび上がった。


「マイク、工事車両とロボットの準備は出来ているかな」


「はいキャプテン、準備は万端です、初めての移転なので気分的にワクワクします」


「ハ、ハ、ハ、気が早いな引っ越しをするのは、十日位先になると思うよ」


「そうですね、今度の設計図からすると、大規模な工事になるので完成するには、かなりの年数がかかりそうです、スケールが大きいですね」


そして、現地に到着すると設計図のホログラムを出して、

島の陸続きの場所から近くに集落が無いことを確認すると、


円盤状になったホープの腹の面が開いて、

上空二百メートルの地点から、

物質を分解する光りの光線に、

強弱をつけながら放出し続けて、地面を削ると左右に移動を重ねていき、前にも進み横五km立て十kmの広場を造った。


「キャプテン食事と、整備をするので降りて下さい」


「了解、ホープ大量に材木や瓦礫が有るから、全部は食べられないだろう」


「そうですね、食事をして残りの分は、工事ロボット達に任せます」


乗っていた隊員十人を地上に降ろして、

材木や瓦礫の方に飛んで行き、

大型の重機やロボット二十台ずつと、原子や分子の物質を変換させることが出来る、光りを出す円盤六機を降ろすと、

口の大きな四足動物に姿を変えて、美味しそうに食べ始めると、「ガッシャン、バリバリ」と大きなな音たてながら前に食べ進んで、


熱を放出する穴が背中に六ヶ所開き、「ピーッ、ピーッ」煙を出して鳴っている、

食べた物がホープの中に入ると、

太陽熱でどんな物でも熔けるのだが、ダイヤや宝石など貴重な物質は選別しているのだ。


後部のトビラが開き、大きなブロックが次々と出てくると、ロボットが作業車の荷台に乗せて、所定の場所に運んでいる。


ホープの体長は二百メートルで、

体を維持する為に毎月二回、宇宙で食事をしている、星が爆発した星屑を好んで食べている、金やプラチナ、宝石などの含有量が多い物がたまに有る。


作業の様子を、円盤から送られて来る映像で見ていると、

馬に乗った髪の長い屈強そうな男六人が、近づいて来たのだ。

隊員達に緊張が走ったのだが、

キャプテンが一歩前に出て、笑顔を浮かべながら、


「やあー、みんな元気かい」

友達のように話しかけると、


「ヨー兄弟、工事を始めたんだな

大変だろうが頑張れよ」


「そうなんだ、もうすぐ引っ越しをするので、よろしく頼むよ」


「分かった、俺達は狩りをしていたんだけど、これはお裾分けだ」

ウサギを二わキャプテンに渡した後、何事もなく帰って行った。


マイクが大きく息を吐いて、

「ビックリしました、何とも友好的ですね」


「そうなんだよ、我々を仲間だと思っているから、友達と話しているように、会話すれば良いんだ」


少ししてホープが戻って来ると、入り口を開けたので、全員が中に入って持ち場についた。


「食事は終わったのかな」


「はい、後はロボット達に任せます、一週間後にまた来ましょう」


そのまま町に帰って、司令室に入ったところで、


「ホープ、聞きたい事があるんだが」


「はい、キャプテン何でしょうか」


「誘拐事件の時、突然現れたブラホさんとジソンさんの事を、教えてくれないか」


「二人は天界から来た神様です」


「何だって!」


「一人は私に体を授けて下さった方でブラフマー様、人間には光りにしか見えないので、ブラホとして仮の姿で、現れたのです」


「なるほど、其れでどうゆう神様なんだ」


「百億年位前から、天の川銀河の魂を管理しているのです」


「そうか、物凄い神様と知り合いになったんだな」


「はい、私は幸せ物です」


「もう一人のジソンさんは、どんな神様なんだ」


「話すと世界感が変わりますが、良いですか?」


「良いとも興味深いから、是非とも聞きたいな」


「ジソンさんは、本来の名前は地蔵尊で、分身を世界中に送って世の中を見守っているのですが、

もう一つの顔は地獄の管理者、閻魔大王、

肉体が滅びて魂が来ると、アラハン七人が裁判をおこない、

【アラハン修行を積んで煩悩を払い真実の智聖を完成させた聖者】


生前関わりのあった魂が、賠償人になり審議をして、最後に天上界

に行けるか地獄に墜ちるか、それを決める権限を持っている方なのです」


「ほう、それでは私も死んだら閻魔様と会えるのか」


「はい、忘れているだけで何度もお会いしているはずです」


「そうか、じゃあ次ぎにお会いする迄、誠実に生きる様に努力するよ、良い目標が出来た」


それから一週間後に、隊員達を乗せて、ホープが引っ越し先に向かっている、しばらくすると建築中のさまざまな建物が見えてきて、石畳の広場に到着すると、キャプテン達が出て来た。


「建設と工事は順調に進んでいる様だな」


「そうですね土地が広い分、いろんな事に対応出来ますね」


「今回の目玉はドームだから、皆がきっと喜んでくれると思うよ」


東京ドームの様な建物が建設中なのだが、温水プールや、運動場、アトラクション、温泉も引いているので、お風呂も有り多目的に使えるのだ。

街全体の作りは野生の動物が入って来ないように、二キロ四方周りを、高さ五メートルのフェンスで囲っていて、全体的には公園の様になっている、

また現地の人が遊びに来ることも有るので、二百メートルの間隔で、フェンスに出入り口を作って、ドアボーイならぬドアロボットを配置する予定に、なっている。


「ホープあと何日で完成しそうなんだ」


「はい、三日です」


「そうか予定通りだな、では余裕を持って、五日後の朝ハ時に引っ越しを始めよう、全員にメールを送ってくれ」


「了解しました」


それから四日後の夜、

「ピーター明日引っ越しだから、オモチャをこの部屋に持って来て」


「ハーイ、パパこれで全部だよ」


「よーし、じゃあ見ててよ」


ピストルの様な形の機械を、全部のオモチャに向けて、縮小光線を当てると、百円ライター位の大きさになった。


「ウワー!!小さくなったね」


「向こうに着いたら、元に戻してあげるから、大事に持っててよ」


家中の必要な物を小さくして、荷物をまとめて、準備は出来たようだ、その様子をアリスをあやしながら、ニコルが見ていた。


そして朝になり、住民全員がホープの前の広場に集まって、二階建てのバスの様な、大型飛行船六台に次々に乗っている。

ホープが全員乗船したことを、確認すると、


「キャプテン全員乗船しました」


「了解、それでは出発進行だ」



いよいよ、引っ越し先に向かって、飛び始めると全員が期待に、胸を膨らませてわくわくしている。

ホープの中では隊員五十名程が乗っていて、司令室や前方が見える場所に点在しているが、その中にイアンとケンジが何やら話しをしている。


「島の真ん中に大きな山があったね、明日行って見ないか」


「そうそう、俺も気になっていたんだケンジ、引っ越しが落ち着いたら連絡をするから、早速行ってみよう」


一時間位たち、街が近づいて来ると、巨大な建物がいくつも見えてきた、飛行船に乗っている人達は大興奮をしている。

最初に目に飛び込んで来た物は、三十階建ての都庁の様な建物で、学校、病院、科学技術部、防衛省、道場、その他…


その手前には二十階建ての、マンションがあって一階部分は駐車場になっていて、二階は食品売場、食器類、調理家電、その他、スーパーの様な感じ、ファミリーレストランもある、買い物は全て電子マネーで、仕事によって給料はポイント制になっている。


六ヶ所に光りのエレベーターが有り、三から七LDK現在の人口の倍近くの許容量を用意してある、ベランダを広く作っているので、駐車場になり、ガーデニング、家庭菜園が出来る。

遠くから見ると段々畑の付いた建物に見える。


全ての建物とは何ヵ所も通路あって、春夏秋冬何時でも快適に使える、人々が飛行船から降りて街を探索しているころ、

ホープは三十階ビルの真後ろに、スペースが有り其処に収まると、後部の出入り口が大きく開いて、


【隣に高さ三十、横三十、長さ五百メートルの建物】の中に乳牛二十頭、山羊二十、羊二十匹、卵用ニワトリ五百羽、食肉用ニワトリ五百羽、イノブタ五十匹、赤毛の牛三十頭が中に入って行って、ちなみに未だ魚が入っていないのだが、


隣に同じ規模の水産の建物が並んでいる。

ドームから温泉、温水を引いているので、色々な魚の養殖が期待出来そうだ。

そして次の日の朝九時頃、イアンとケンジが飛行船で、山に向かっていると、山のふもとが見えたので、頂上に向かって飛んで行く途中に、


「この山とても綺麗だけど、たぶん何処から観ても、三角形になっているみたいだよ」


「そうだな、神様の様に大事にされているみたいだね、あっちこっちに社や神社沢山有るな」


標高五千三百メートル頂上の火口周辺に二人は降りて歩いていると、風速二十メートルの軽めの吹雪が舞い躍っている。


「イアン吹雪で何も見えないないから、飛行船に戻るよ」


「了解」


二人は戻って船を発進させながら、

「急に天気が悪くなったな」


「山の天気は変わりやすいから、安定するのは夏の1ヶ月位だろうね」


二人はそのままキャプテンの元に帰って行った、ホープの会議室で島全体のホログラムを見ながら、


「この島全体が火山の噴火によって出来たようだ、ホープ説明してくれ」


「了解しました、今からハ千年程前に、海底火山が大爆発をして、1ヶ月以上爆発を繰り返し、島の底に成る場所からどんどん盛り上がり、隆起を繰り返しながら、最終的に今の姿になったのです、それから一度も噴火はしていません」


「今の説明にあったように、この島は火山の噴火によって出来た物で、つまり溶岩の塊で出来ている、島の真ん中に有る山のお陰で、絶えず山水や湧き水が流れているので、豊かな森林が育っている、火山の噴火もしばらくは無さそうだから、まずは安心して良さそうだ」


「良く解りました、後はゆっくり開発をしていくだけですね」


「そうだな、島全体が街として完成するには、百年以上二百年位はかかるだろう、まー、気長に創って行けば良いだろう、それと分かっているとおもうが、明日は昼からドームで、引っ越し祝いをするのでよろしく頼むよ」


次の日の朝ハ時頃から、ニコルが料理長になり、女性ハ十人と男二十人で、ゲストも入れて四百三十人分のさまざまな料理を作り始めた、


そして、十一時四十分位に近くの村人三十人程が、馬や馬車に乗ってやって来た、フェンスのドアロボットが、

「いらしゃいませ、ワタクシが馬と馬車の世話をしますので、そこのバーに繋いで下さい」


驚いた男達の一人が、

「何だお前は変わった奴だな」


「ワタクシはドアロボットです」


「変わった名前だな、まー良い、じゃあ頼んだぞ」


「お任せ下さい、ごゆっくり楽しんで下さい」


長老の様な老人が一言、

「変わった生き物がいるもんじゃな、長生きはするもんだホ、ホ、ホ」

楽しそうにドームに入って行った。


イアンが鬼族のジンとリリーを連れてゲストの席に座ってもらって、一般の住民も全員席に座っている。


「なかなか広いドームだな、ジン今度ここでライブコンサートを、やらしてもらったらどうだ」


「良いなー、兄者と相談してみよう」


そして、総合司会を副司令官のマイクが務める事になり、ステージの後ろからシンセサイザーとベース、ドラムの音が流れて、マイクの進行でキャプテンが現れた。


「皆さん今日はお忙しい中、お集まり頂きまして、有りがとうございます、

かねてより計画をしていた、引っ越しが無事に終わりましたので、ここで街の名前を発表したいと思います、

我々の故郷の星アトラの名前に足して、【アトランティス】と命名させて頂きます、それではお祝いの宴会を始めます時間の許す限り、ゆっくり食べて飲んで下さい」

手に持っているグラスを高々と挙げた。

マイクがすかさず、

「今日はサプライズが二つ有りまして、キャプテンのジャック、ハリソン四十六才とアニーさん二十六才が晴れて結婚する事になりました、

もう一つは息子のロビン、ハリソン二十二才とメアリー二十才がダブルで、めでたく結婚する事になりました、皆様温かい拍手をお願いいたします」


ステージに二組のカップルが並んで、お客さんの方に頭を下げると大きな拍手がなり続け、イアンがロビンにニコルがジャックに、花束を渡して更に大きな拍手に包まれながら退場して行った。


直ぐその後、優しい音楽と共にニコルを先頭に、ニ十人の容姿の良い隊員が巫女か天女の様な、シルクの白い衣装を着て、棒に布が付いた道具を両手に持ち、太極拳と新体操が混ざった美しい、踊りを披露し始めた。


一糸乱れぬ演技に会場の人々は、息を止めて見いっている、最後の見せ場は全員でピラミッドの形になり、ニコルがてっぺんに立ち、布が波の様な動きの中バック転をして、全員が波の様に布を動かしてくるくる回りながら、退場して行った、会場から割れんばかりの拍手の中、ニコルがリリーに近づいて行き、


「リリー私と組み手、演武をしませんか?」


「良いぜ、是非やろう」


リリーがステージに上がると、会場から大きな拍手が鳴り出した、

ニコルが百七十センチメートルの棒を渡すと、慣れた手付きで西遊記の孫悟空の様に鮮やかに、棒をくるくる回している、それを見たニコルも全く同じ動きをして見せた、


「ちょっと位当たっても良いんだろ、本気でいくぜ」


スピードがあるハードな音楽が流れ出し、凄い勢いで棒を当てに行くと、鏡に写った様に同じ動きをして、「カンカン」と会場に鳴り響いている、

リリーの動きは更に加速しても、全く同じ動きをして「カンカン」と音が会場に鳴り響いている、見ている人々は余りの速さに唖然としていて、リリーが空中で三回転しながら棒を当てに行くと、同じ動きをして棒を止めたあと、


「有りがとう、これで演武は終わりよ」

そう言うと、二人は離れてお辞儀をして、大きな拍手が鳴り響く中会場の人々に手を振ってステージから退場した、そのあとマイクの進行で子供達と親が一緒にクイズゲームがステージで始まった。


リリーがジンの横に座り、

「完敗だったぜ」


「そうだな、ニコルの方が0・2から0・5秒先を読んでるから動きを見られていたな」


「それじゃあ認めるしかないな、俺も修行のやり直しだ」


二人が話していると、イアンとニコルがやって来た、


「リリーさっきは有りがとう、お陰で会場は盛り上がったわ」


「良いって事よ、二人とも用事が済んでたら座ってくれよ、お土産を持って来たんだぜ」


二人が席に座って四人で乾杯した後、リリーがアタッシュケースをテーブルに置いて、ケースを開くと、回転式の拳銃と実弾三十発、並びに銀のナイフ一本が入っている、


「イアンこれなんだか分かるだろう」


「うん、たぶん悪魔退治の武器だろう」


「ピンポン、当たりだよ使う事が無ければ一番良いんだけど、万が一の為に二ケース持って来たんだぜ」


「有りがとう、貴重な物だね大事にするよ」


酒を酌み交わしながら、話しが盛り上がっていく中、二人めの女の子アリスの話しをすると、


「良いなー、子供って可愛いんだろうな、俺も良い男を見付けて子供を作ろうかな」


「リリーさんは美人なんだら、その気になれば直ぐ見つかるわよ」


「そのさんて言うのは止めてくれ、同じ年なんだぜ、まー美人は置いといて、何だか女に持てるからめんどくさいんだよ」


「じゃあ今度会う時は、良い男見付けてね」

話しがしばらく続いた後、ジンとリリーは温泉に入り、ゆっくりした後、何時ものようにマンションの客室でイアンと一緒に、夜明け迄飲みあかした。

イアンが帰った後、リリーが眠れないので、マンション周辺を歩いていると、目の前を白馬に乗った白いスーツの男が横ぎって行った、目を疑いながら追いかけて声をかけた。


「ちょっと待ってくれ、貴方ひょっとしてジムさんじゃないか?」


振り向いて馬から降りると、ジムその物なのだが雰囲気が違うので、


「貴方ジムさんじゃないな、一体何者なんだ?」


「私はジムのクローンニ号で、中味はホープです、今は街の見回りをしていました」


「じゃあ俺の知っているジムさんもクローンなのかい」


「その通りです」


「じゃあオリジナルは何処にいるんだ」


「大分昔に亡くなっています」


「そうだったのか、俺はクローンでもよかったんだけど、そう言うわけにはいかないよな、これで踏ん切りが付いたよ」


リリーは部屋に帰り一眠りしてジンと一緒に自分達の星に帰って行った。


そして月日は流れ五十年が過ぎて、ジャックは九十六才になり、アニーと結婚して直ぐに女の子を授かって、ロビンは女の子と男の子二人を授かり世代交代で、孫のピーターが指導者になっていた、


ジャックはルールを作っていて、この星の環境を変え無い為に、自分達の島以外は開発をしない事、


それから更に月日は流れ百五十年が過ぎた、島は山を中心にして四分割されて、それぞれの機能を持つ街が完成されて、ハリソン家は平均寿命百十才で亡くなって、山の麓に功績を讃えられた、記念碑と共にお墓が祀られている、


街は高層ビルが立ち並んで、芸術的で美しいフォルムを描き、夜には煌びやかな電飾が輝いて、飛行船が飛びかつている、人口は百万人を超えているようだ、


ある日ホープは何時ものように、食事をする為に宇宙を飛んでいると、いきなり人々の叫び声が聴こえてきたので、大急ぎで街に帰ってみると、そこには目を見張る無惨な光景が広がっていた、


海底のプレートがはねあがり、M9・5の地震が発生すると同時に火山が大噴火をして、島全体に亀裂が走りあっちこっちで噴火をして、轟音と共に崩れて行き海の水が沸き上がり、渦の中にみるみる間に島が沈んでしまうと、


ほんの六時間程で二百年のアトランティスの歴史が跡形も無く消え去ってしまったのだった。


ホープはなす術がなく、茫然とその光景を眺めていた…

何もなくなった海をどれだけの時間眺めていただろうか、

ホープは突然眠くなり海の深い所を目指して、ゆっくり動き出し海の中に入ると、ゆらゆらと揺れながら、静かに深く沈んで行き海底に着くと身動きもせずに、深い眠りに入っていった……


さて、ホープが深い眠りについて、一万四千年の歳月が流れたようだ、ひょっとしたら明日にでも目覚めて、我々の目の前に現れる日が来るかもしれない。

ご愛読有りがとうございました。

これにて完結致します。











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人類の始まり(ホモサピエンス)ホープ誕生の秘話 尊伝義光(ソンデンギコウ) @sunrise_murata

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