第2章

       1 


   伝説になった生物達の誕生  


惑星アトラからアースに移住して、五年の歳月が流れた。


現地の住民との交流も有り、

移住して来た人達も数多くいる、


人々は色んな出会いの中、

結婚して家庭を持つ人達が増えた、現在の人口は三百人程度なのだが、近じか海沿いの場所に移る予定のようだ。


町の様子を観ると、

住居になる建物や建造物が増えて、道路を行き交う人達、

特に家族ずれが多く子供の声が聞こえて賑やかになった。 


噴水広場にニコルの姿が見える。


「ピーター、もう帰るわよ」


「ママー、ちょと待って、」


そう言うと友達にサヨナラをして、笑いながら走って来て抱きついて来た。


「もう、甘えん坊さんね」

と言って幸せそうな顔をして笑っている。

コンビニの様な店と市場で、

晩ご飯の買い物をして迎えに来たのだ。

二人乗り自動運転のタイヤが無い、ホバークラフトの様な乗り物で家に向かった。


家と言っても五階建てのマンションの様な物で、三LDK有りオートマチックだから快適である。


ニコルは二十二才になり、

ピーターは三才と十一ヶ月で、

もちろん旦那はイアンだ。


誘拐事件や鬼族との交流から、

二ヶ月後にイアンに連れられて海に行った、


この日はニコルの誕生日、

浜辺に座りしばらく夕焼けを見ながら語り合い、良い雰囲気になった所、プロボーズをして来たので

二つ返事でOKをすると、

六月の誕生石パールの指輪をプレゼントしてくれた。


後はご自由に、読者のご想像にお任せします。


ロビンは二十一才になり、

科学技術部に入って三年新しい研究に没頭していた、それは想像した生き物を機械の中で、現実に創り出すと言う画期的なものだ。


ホールの様な施設の中で大型の機械を使い実験をしている。

隣にはトムがいて、


「ロビン、これで二十回目だな」


「違うよ、二十一回目だよ」


「そうか、成功すると良いな」


二人は固唾を飲んで見守っている、

目の前にある機械は大きな乾燥機の様な形をした物で、透明な蓋が有り中ではサッカーボール位の卵が、光の渦やプラズマが当たり輝いている。


「前回は九分五十九秒で、失敗したから、十分ちょうどで止めるよ」


「分かった、」トムはタイマーをセットした。

トムはイアンと同じ二十四才で、ロビンの先輩なのだが、あまりにも優秀なので実力を認めている。


時間が来て機械が止まると、

少し眺めた後、蓋を開けて卵を取り出して、柔らかいクッションの付いた保温機の中に入れた。


「これで様子を観てみよう、早ければ一日遅くても三日位で、ふ化するはずだよ」


「前回は惜しかったよな」


「そうだね、生まれて来たけど十分位で融けてしまった、空気に触れて細胞が分解したんだ」


「また、ここに泊まって徹夜するつもりなのか?」


「いや今日は用事があるから一度帰って、明日の朝早めに来るよ」


夕食に来る様にイアンに呼ばれて

いた、


夕方イアンが家に帰ると、

「パパー、」と言ってピーターが飛び付いて来た。


「おっと、今日も元気だな」

抱き上げて、夕飯の仕度をしているニコルの所に行くと、


「今日も、お父さんがオモチャを持って来たわよ」


「孫が可愛くて、たまらないんだよ」


「それは分かるけど、子供部屋がオモチャでいっぱいよ、貴方からお父さんに注意してくれる」


ピーターの顔を見ながら苦笑いをしているとチャイムがなって、


ドアを開けると、ロビンが笑顔でお土産にオモチャの光る剣を持って入って来た、ピーターに渡すと「おじさん、ありがとう。」と言って、ニコルに見せに走って行った。


「あっちゃー、タイミングが悪いな」

さっきの話しをすると、困った顔をしている。


気まずい空気の中、美味しそうな料理が次々とテーブルいっぱいに並べられた。

ピーターは子供用のイスに座り手にフォークを持っている。

皆が席に座るとニコルの機嫌はすっかり直っていて、


「ロビンくん、いっぱい食べてね」


「はい、頂きます。」


ワインで乾杯して、食事が始まり

食べている途中、


「ニコルさんの料理のメニューはどれだけ有るのかな、何を食べても美味しいけど毎回違う品物が出て来る」


「じつは、俺もそう思っていた」


「それは、ヒ、ミ、ツよ」

鬼族のミラーに貰ったメニューの事は内緒にしているので、

心の中でしてやったりと思って嬉しくなっている。


楽しい会話をして、食事も終わりかけた頃、ロビンが今研究している話しをしていると、


ピーターが走って行った、すると手にお絵描きボードを持って来てそれをロビンに渡した、


「さっきの話しを聞いていたんだ」


ボードを開いて見ると、ホログラムの映像が出て、ピーターの描いた動物や怪獣が出て来た。


お世辞も交えて、

「上手だね、そうそう、こんな感じの生き物が出来るんだ」


ピーターは、ニコニコ笑いながら一生懸命、説明している、


「描いた絵が本物になったら面白いな」


イアンがそう言うと、ニコルが横で笑っていた。


楽しい時間と、食事が終わりロビンは帰って行った。


       2


次ぎの日、

朝早くからラボに来て卵の様子を観察していたが、何の変化もまだなかった、夕方になってその日は泊まる事にした、

いつもの事のようだ。

そして朝が来て、パソコンで今までのデーターを集計していたら、トムが来て、


「どんな様子なの?」


「まだ反応無しだね」


「そうか、気長に待つしかないね」

そう言って卵に近付いてい見ると、


「あれ、何か音がしているよ。」


「え、」

と言って立ち上がり、近付いて来ると覗き込んだ。


「本当だ、音がしている」

嬉しくなってトムの顔に目をやっていると。


卵からの音がだんだん、大きくなってきた、すると一ヵ所にヒビが入って全体に広がっている、


「いよいよだね」


「世紀の瞬間だ」


突然卵が割れて、白い馬の用な小さな生き物が立っている。


ロビンがトムの背中を叩いて、


「わー、成功だー」

と、言って喜んだ。


小さな羽が生えている、

伝説の生き物【ペガサス】


ロビンが温室機の蓋を開けると、

首を振りながらすり寄って来た、優しく抱き上げて台の上に乗せると、ヒンヒンと鳴いている、


「可愛いなー」


「お腹が空いている様だね」


調理室に行って、ミルクの入った哺乳瓶を持って来た。

口に持っていくとくわえて飲み始めて、目を細めて夢中で飲んでいる。


「親と、思っているのかな?」


「親みたいなもんだよ、生まれてから、十分位たったよ」


「もう大丈夫かな、もう少し様子を見てみよう」


馬が乗っている台は、身体測定器なので、別のリラックス出来る場所に移動させた。様子を見ながら、


「大体三十分位たったよ、」


「そうだね、第一段階クリアって所だね」


「名前を付けようぜ、」


「いいね、呼びやすいのが良いね」


色々考えてから、[ペガ]に決まった。


次ぎの日ラボに作った、囲いの中で、元気に走り回っている、


「もう安心だね」


「これからどうするの?」


「試作の生物が出来たから、子供達を招待して色々創ってみよう」


「そうか、良いね子供達は想像力が豊かだからね、きっと大喜びするよ」


それから一週間がたって、成長著しくペガは体がネコ位の大きさになっている、背中の羽は広がっているが、飛ぶにはまだ無理な様だ。

成長を見て安心したので、募集する事にした。

十五才までの子供を持つ親にメールを送って、先着十名にして募集をした、もちろん最優先でピーターも入っている。


それからまた一週間がたち、

その日の朝、当選に当たった家族連れが続々とラボに入って来た。


科学技術の部員が手伝いに来てくれて、全員で十名がそれぞれ家族の担当者になって作品を創る事になる。


「ロビンくん、来たわよ」

ニコルがピーターをを連れて、

手を振りながら満面の笑顔で、

近付いて来た。


「おじさん、来たよ」

と、言って抱き付いて来たので、


「おー、良く来たね」

と、言って抱き上げた。


「良い物を見せてあげるよ」

ダッコしたままペガの方に歩いていくと、ニコルが指をさして、


「この間から言っていた通りだ、凄い本当に馬に羽が生えている」

大興奮をして、走って行った。


また成長してヤギ位の大きさになっている、羽を羽ばたかせているのだが体が二十センチ位浮く程度だ。


三人が見ていると、


「真っ白でキレイね、この子の名前は?」


「ペガって言うんだよ、ピーターそこのニンジンを食べさせて」


恐る恐る口に持っていくと美味しそうに食べている。少したって、


「そろそろ作品を創りに行こうか」


三人はパソコンの前に行って、


「この間のボード持って来たかな?」


肩に提げたカバンから出してニコニコしながら渡した。

映像が出て、あれこれ迷った結果火を吹く怪獣に決まり、

子供の絵では解りにくいので手直して、


「こんな感じかな?」


「うん、いいよカッコいいね」


「大丈夫かな、噛みついたりしないの?」


「心配ないよ、人には危害をかけない様に設定するから」


「そう、それなら良いけど、もっと可愛いのが良かったなー」


「残念そうだね、今日は子供が主役だから我慢して」


「はーい」


データーを入力してから、

「僕たちは三番目だからちょっと待ってようね」


暫くして順番が来たので、

卵が出来る所を見ていた。


「こんな風にして創るのね、とっても綺麗だわ」


そして、機械が停まり卵を取り出して、測定器に乗せた後、貸し出し用の保温機に入れてニコルに渡した。


「ボクが持つー」


「落としたら怪獣が生まれて来ないわよ」


「いやだ、持つのやめとく」


「じゃあさっき説明した事に注意して、生まれたらデーターを取るので一週間後にラボに連れて来て下さい」


そう言う事で一週間がたって、

生まれた生物を連れて続々と家族連れが集まって来た。


部員が入って来た順番に整理券を渡している。

皆が自分達の生き物を見せ合って、大騒ぎの状態だ。


ロビンとトムが、


「最初の方どうぞ」

声を出すと、


十二才の男の子と両親で来て、

ロビンは生き物を見て驚いた、


上半身が鷲かコンドルの様で、下半身が獅子みたいな姿。

【グリフォン】


「強そうで、カッコいいね」


「ありがとう」

と、言って満面の笑顔を見せた。


「次ぎ方どうぞ」

今度は八才の女の子と、お父さん。

頭に一本角が生えた馬。

【ユニコーン】


「これは、一人で考えたの?」


「お父さんと二人で考えたのよ」


「とても綺麗だね」


「ありがとう」

笑顔を見せて喜んでいる。


「次ぎの方どうぞ」


ピーターと、ニコルが来た。


「おじさん連れて来たよ」


「そうか、良く来たね待っていたよ見せてくれるかな」


台の上に乗せて観察すると、

細めのゴジラの様な体に大きな羽が付いている、自分で描いた物だが実物は興味深い。

【ドラゴン】


「想像していたよりカッコ良いね」


「うん、名前はドゴンで、胸を押すと、火が出るよ」


胸を押すと、ライター位の火を吐いた。


「これは凄いなでも火事には気を付けて、教えてあげると覚えるから」


「うん、わかった」


「次ぎの方どうぞ」


十才の男の子とお父さん。

今度の生物にも目を見張った。

ライオンの頭に山羊の体ヘビの尻尾【キマイラ】


「これはまた迫力があって、強そうですね」


「うん、お父さんと二人で考えたんだ」


こうしてデーター測定が進んだ結果、男の子はドラゴン系が多く、女の子二人はペガサスが気にいった様で同じ物を創っていた。


部員達の作品を紹介すると、

火の鳥、鳳凰[ほうおう]、龍

麒麟[きりん]など、傑作揃いの様だ。


       3


平和に日々が過ぎていく中、

新たに悪い事が起き様としていた。


太陽系の中をアースに向かって、不気味な大型宇宙船が進んでいる。

中の様子を覗いて見ると、

ドロン[カエルの親分]と、イヤミ[トカゲ人間の支配者]がいる。


「ケ、ケ、ケ、やっと恨みを晴らす時が近付いていて期ましたぜ、八つ裂きにしてやりましょう」


「そうだな、こてんぱんの、ケチョンケチョンで、ミンチにして靴で踏み付けて殺るんだ、グワ、グワ、グワ」


「この五年間、最強のハンターや、殺し屋を探すのにどれだけ苦労した事か、奴らの脅えた姿が目に浮かぶ、ケ、ケ、ケ」


「わしは、悔しくて眠れん日が何回も有ったぞ、この時が来るのをどれだけ待った事か、グワ」


「安心して下さい、今回集めた七人は宇宙最強ですぜ」


「そうか、そうか、そりゃあ楽しみだな一人一億キン出しているのだから、しっかり働いてもらわんとな、グワ、グワ」


それから一時間後、アースに入り上空を飛んでいた。


「もうすぐ奴らの町が見える頃ですぜ、ケ、ケ、」


「そうか、それで今回はどうやってターゲットを見つけるつもりなんだね」


「任せて下さい、今回は魔術師がいます、部屋に行きましょう」


部屋に入ると、二人いた、

西洋の王宮に入った様な内装で

豪華な椅子に座り、キンピカの鎧にマントを付けて、ワイングラスに入った黒い液体を飲んでいる。

魔王サタンの息子[マモン]


もう一人は魔術師[ウイザ]

黒いずきんを被り、いかにも妖しげな雰囲気を出している。


「何かご用ですか?」


イヤミが説明をすると、

大きな水晶の前に行き呪文を唱えると、ジャックやイアンの姿が見えている。


「カー、いまいましい、こいつらは後でぶち殺すから今はいい次ぎだ、次ぎ」


「今度はニコルとピーターの姿が見えている」


「おーこれだ、これで決まりだな、子供だけ拐って母親の悲しむ姿を見てやろう、ケ、ケ、ケ」


「おい、お前さっそく行ってこいグワ、グワ、」


「良いでしょう、お安いご用です」

おもむろに、指先で円をえがいて空間に大きな穴を開けると、向こう側に入って行った。


二人は部屋をでて移動中、


「おい、凄い奴を雇ったな、

あんな奴が居たら勝ったも同然だなグワ、グワ、グワ、」


「喜んでもらえて、光栄です」


「あの態度のでかい奴は何者だ、

部屋まで模様替えしおって」


「サタンの息子と、言ってましたぜ、魔術師が連れて来て、自分より強いと言う話しです」


「そうかそりゃあ心強い、まあ大目に見てやるか、グワ、グワ、」


その頃、町に行ったウイザの前にラボが有り、

中からロビンとドゴンを抱いたピーターが出てきた、

そして、乗り物で迎えに来たニコルが見える、

ウイザが近付くと、

咄嗟にロビンがピーターを抱きかかえて守ろうとしていたら、

透明な玉に囲われてしまった、


その後、空中に浮き上がって行きだすと横に大きな穴が空き、吸い込まれて行ったのだ、

ウイザの姿はすでに消えている。


ニコルはなす術もなく茫然自失になっていた。


つづく


次回は、

凶悪な殺し屋を連れてトカゲ人間達の再来襲

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