第11話 銀髪少女ありきの選択

「これからどうするつもりなの」

 上空数メートル地点で、僕は銀髪少女に圧迫面接を受けていた。

 翼の大きさに比例して光も強くなるらしく、彼女曰く、こうして話していなければ、すぐにでも僕は昏睡状態に陥るらしい。

 流石のレイナちゃんの力でも、気を失った男子大学生を運ぶのは至難の業らしく、まるで車酔いを未然に防ごうとする保護者のように、答えにくいことから僕のキャリアデザインまで幅広く追及されていた。それこそ、この光が取調室にあるような電球の役割を演じて、何から何まで照らし出す勢いを、風を切りながら感じていた。


 しかしそれにしても、僕は自分のしたことをこれほどまでに糾弾されるとは予想していなかった。いや、研究員の皆様方には精神汚染レベルが測定値以上だったと、モルモットもびっくりながなされるのは覚悟していたが、まさかレイナちゃん自身にチクチクと刺されるとは。


「21世紀の情報社会で、どうやって逃げ切るつもりかって聞いてるの。ばかふみや」

 初佳だって、こんなに怒らないよ。そういや初佳、心配してるだろうな。

「落とすよ」

「それだけはご勘弁を」

『レイナちゃんを悪の科学者から救った』などというおこがましい考えこそ、僕は捨てなければならないようだ。人生はいかに奇妙な事の連続であったとしても、主人公は僕という訳ではないらしい。

 株や何かの失敗で僕だけが人生を棒に振ったのならまだしも、レイナちゃんも巻き込んでしまった。


「本当に……本当にごめん」

 僕は無力だ。レイナちゃんのように自由も制約も持ち合わせてはいなかったのだから。

「……疲れたからちょっと休憩する」


 僕らは若くして大きな障壁を背負ってしまった。だが、彼女にとってそのような悲観は、直接的な疲労にはならない。

 レイナちゃんは渡り鳥ではない、あの能力は多少なりともダメージを伴う。

 僕らが出会った時はいつだってそうだったように、彼女は冷却・水浴びをしなければ、さっき聞きかじった専門用語を使えば『鳥籠消失メルトダウン』し、やがて死んでしまう。


 そう、彼女の自由と解放を望んだ僕は、結果的に命の危機へと追いやってしまった事を意味する。


「だから言ったじゃん」

「え?」

「ふみやはこのままだと夏休みが終わる頃に死んでしまうよって」

 かつて使のお告げの如く、儚げな少女の口から発せられたダメ出し。

 そしてそれは、現状と原因が明らかになった今だからこそ、余命宣告として重みを増しているのだった。


 レイナちゃんといることを思わず選んでしまった。

 だが、レイナちゃんといると、待っているのは精神汚染の末にある死、ただそれだけ。

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