8、運が無さすぎる

クソガキというか。

小学生の伊藤巴という少女が俺の元に来た。

そして俺に対して、芽衣子さんに近付かないで、と言ってから。

そのまま去って行った。

何だありゃ。


「何か.....色々な人が居るねぇ」


「.....まあ確かにな。まさか小学生にそんな生意気な口を聞かれるとは思わなかったが」


「アハハ。老若男女に好かれるね。君は」


「冗談でもよしてくれ」


「アハハ」


山吹と一緒に高校まで来た。

しかしあのクソガキ。

女性の姿だった頃の芽衣子を知っている様だが。

どういう事だ?

と考えながら俺は顎に手を添える。


「思ったけど芽衣子君って不思議な人だね」


「.....どう不思議なんだ?」


「魅力が有るよね。何だか」


洒落にならない事を話す山吹。

確かに魅力は有るが。

それは女性としての誘惑だろうか。

ヤバいなそっちだったら、と思いつつ下駄箱で上靴に履き替える。

それから歩くと.....目の前に芽衣子が立っていた。


「.....傑。ちょっといい?」


「.....?.....いや。まあ時間はあるが。どうした?」


「.....伊藤さんの事に関してだよ。君に接触した」


「.....ああ。お前も知り合いなのか?」


知ってるよ。

と複雑な顔をする芽衣子。

俺は振り返ってから山吹を見る。


すまないが先に教室に行っててくれ、と。

山吹は、うん、と言いながら教室に向かった。

俺は改めて芽衣子を見る。

芽衣子。誰だ?あの子、と俺は芽衣子に聞く。


「あの子は.....まあ作文コンクールで共に共闘していた子だよ」


「.....そうなのか。どうりでお前の事を.....」


「6才だったんだよね。当時彼女は。.....まあ何というか私に憧れていたみたいで」


「小1のコンクールって事か?」


「.....まあそん感じかな。.....それで何だか私を好きになったみたいで」


だからずっと彼女は小説を書いて欲しいって言ってるんだよね、とまた複雑な顔をする芽衣子。

そんなもん断れば良いのに。

無理だって、と言いながら芽衣子を見る。


「そうしたいんだけどね。彼女は本気で私を助けたいみたいでね。無碍に断るのもね.....」


「.....彼女は優しいんだな」


「.....そうだよ。.....とっても良い子だよ。ちょっと暴走する所もあるけどね」


「.....」


私が作文やら小説を書けるまで.....、とか言ってくれるの、と笑みを浮かべてから芽衣子は苦笑した。

俺は目線だけ外にずらしながら。

そうなのか、と答えた。


「その子が何だか君に接触したって事を報告したから。.....だから聞いたの。君に」


「.....まあ確かにな。そうだけど」


「.....あの子、君を敵の存在で見ているから。ゴメンね」


「何でだ?」


「.....簡単に言うと.....彼女はきっと君が原因で全てが歪んでいると思っているんだと思う。思い込みって感じかな」


まあ子供は.....そうだよな。

大概思い込むと厄介だ、と思う。

俺は.....溜息混じりで、まあお前に接触はあまりしないよ、と答える。

あの子の前では、と、だ。

芽衣子は、うん。有難う、と答えた。


「でも勘違いしないで。本当にいい子だから。あの子は」


「.....分かってる。確かにお前の話から聞いて大丈夫そうだから」


「有難う。傑」


「.....どうって事ないさ」


そして俺達は教室に向かった。

それから教室のドアを開けてから。

女子生徒と話している山吹を見てからそのまま椅子に腰掛ける。

するととんでもない噂が流れているのに気が付いた。


「山吹、告白したんだって。誰かに」


「嘘だろお前。あの可愛い子が?」


「マジか俺告白しようと思っていたのに。何処の誰だ。殺すぞ」


そんな噂が、だ。

俺は額に手を添えながら.....頬杖を突きつつ外を見る。

全くな、と思いながら、だ。

でも.....芽衣子が頑張っているんだな、と思う。

俺も頑張らないとな、と.....思えた。


ガラッ


「.....芽衣子.....」


そんな感じで思っていると。

いきなり何かに勢い良く抱き締められた。

何かに、だ。

俺は衝撃に前に有った窓に頭を打つける。

え!?!?!


「やっと見つけましたよ。先輩」


「.....!?.....!?」


そこに女の子が立っている。

腰にジャージらしきものを腰パンの様に巻いて、肩までの髪の毛を右だけ結って。

スカートにカッターシャツ。

それから.....茶色の髪の毛で.....顔立ちはかなりの美少女。

そしてトドメにナイスバディ。

所謂完全系のスタイル抜群、顔立ちも抜群の美少女だが.....。


え?いや、ちょっと待て.....誰?

俺は額の痛みに悶えながらその子をマジな顔で見る。

周りがざわめく。

特に.....山吹と芽衣子が目をパチクリしている。


「先輩。私です。.....飯島梨花(いいじまりか)です。.....アレですよ。数学コンクールで何時も2位しか取れなかった.....」


「いいじま.....りか。.....ああ!!!!お前!久々だな!?可愛くなったな!?」


「ですです!先輩!.....もー。なんで数学を辞めたんですか?探しましたよ本当に」


「マジか.....あのクソガキがこんなになるんだな。って言うか同じ高校だったんだな」


「わざわざ先輩が居る高校を聞きつけて此処にしたんですよ。レベル高い高校をわざわざ蹴って、です。先輩と一緒が良いので」


いや。え?何でそこまでしてこの場所に。

俺は飯島を見ながら、お前天才だろ。何でこの場所を選択した、と言う。

するとまさかの爆弾発言が飛んできた。

それは.....。


「先輩が好きだから是非是非、付き合って下さいよ」


「.....」


「.....」


「.....は?」


目が点になる。

教室がカチンコチンに凍った気がした。

特に.....不安になっている様な感じの山吹。


そして.....芽衣子の顎が落ちた。

俺は.....眉を顰めて一瞬だけ考えてから。

真っ赤に赤面した。


「平然とこの場で何を告白してんの!!!!?馬鹿なのお前!!!!?」


「だって先輩の事憧れの存在でそして魅力的でした。だから付き合うのはおかしい事じゃないですよね。それに先輩、童貞でしょ?どうせ」


「有難いけどな!童貞言うな!そして俺を舐めるな!」


「じゃあ私が貰っても良いですよね♪」


「いやいや、ちょっとま.....」


そこまで言い掛けて吹雪が吹いた気がした。

俺は青ざめながら背後を見る。

そこに.....眉を寄せた山吹と芽衣子が立っていた。

そして、誰?この人?、と山吹は笑顔を見せる。

それから.....誰かなコイツは。傑、とも。


「いや、ちょっと待て。落ち着け。お前ら」


「.....先輩?誰っすかこれは?」


いや、これ、っておま。

睨みながら2人を見る飯島。

いや、何ちゅう言い方をするんだよ。

俺は真っ青になる。

殺されるわ。


「.....貴方の方が誰?突然現れて.....」


「そうだね。今回は流石に意見が一致するね。山吹さん」


「???.....ああ。先輩の何かですか?.....より正確に言うなら金魚のフンか何かですか?」


コラァ!、と俺は血の気が引く。

次の瞬間、ァア?、と威圧の声がした。

飯島。もう喋るな。割と本気で。

俺は飯島の口を勢い良く抑えながら2人に弁明する。


コイツは数学の大会で良く一緒に戦った奴なんだ。

ふざけた事も言うが良い奴でな。

許してやってくれ、と。


「.....ふーん.....」


「.....へー.....」


何でこんな目に遭うんですかね俺。

なんか今日の運勢最悪の様な気がする。

考えながら.....マジな顔をしている2人と。


文句を言いそうになっている飯島を見て.....盛大に溜息を吐いた。

クラスの男子の殺意もMAXレベルになっているのだが.....。

女子達はキャーキャー言ってるし.....。

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