7、厄介な.....。
芽衣子には大切な親友が居る。
いや正確には。
居た、が正しいかもしれない。
俺よりも芽衣子がずっと仲良しだったその親友の名前。
和泉鏡花(いずみきょうか)。
眼鏡が似合っている可愛い女の子。
享年13歳。
当時は中学1年生だった少女である。
病名はマイコプラズマ肺炎。
重度の肺炎で亡くなった。
今だから話してくれる.....芽衣子はこう言っている。
『鏡花とは自身の全てを話せた唯一無二の友人』
その様に、だ。
俺は芽衣子のその言葉を受けながら。
芽衣子をずっと見てきた。
その頃からだったのかもしれない。
芽衣子が女の子を切り捨て男装を始めたのは、だ。
その時は俺はまだ芽衣子の友人では無かったので.....何が起こったか詳しくはよく分からない。
だけど芽衣子が死のうとしていたので手を差し伸べたのは覚えている。
それから芽衣子と友人になったのだ。
『もう私は小説は書かないよ?』
芽衣子は俺も知っているが作文の全国大会で毎回の如く優勝を繰り返し新聞に良く載っていた。
その時には男装していたのだが。
それらは家族も知っている。
その為に芽衣子が小説好きなのは知っている。
だけど芽衣子はそう言う。
もう一切合切で小説は書かない、と。
その理由として.....小説を書くのが怖いのと。
過去の全てを思い出してしまうなどが挙げられる。
ああ見えて傷つき易いのだ芽衣子は。
まあ女子だしな、中身。
だから俺は小説の事に関してはあまり言わないが。
久々に聞いてみたのだ。
小説の事を、だ。
すると、今は書こうと努力をしている、と返事が来た。
でも過去を思い出すという。
『みんなと重なってしまう』
そう芽衣子は心から苦悩している。
多分だけど男装をしているのは、自分が全てが変わりたいと思っているので男装をしているのでは無いか、と思い始めた。
俺は考えながら.....翌日を迎える。
考えながら降りて飯食って準備をして母さん(清子)と父さん(順平)と道葉に挨拶をしてからリビングを出つつ.....また考える。
俺の親は言う。
彼に寄り添ってあげて、と、だ。
俺はその言葉に頷きながら、当たり前だ、と答えた。
それから玄関を開けて.....見ると。
「おはよう。傑」
「.....よお。どうしたんだ?」
「ううん。どうもしてないけど。でも迎えに来た」
「.....そうか」
目の前に芽衣子が居た。
相変わらずの男装姿で、だ。
俺はその姿に、芽衣子。昨日はすまないな、と話す。
そして目線だけ外側に向けた。
「.....?.....何が?」
「小説だよ。思い出して怖いのに.....聞いてすまない」
「.....ああ。成程ね。.....大丈夫だよ?傑。私は.....小説は今は書けないし」
「.....いつかは小説やら作文は書く予定はあるのか」
「.....今は考えられない。.....鏡花の事も有るしね」
鏡花ちゃん、か。
考えながら俺は空を見上げる。
飛行機雲とかそんなのが広がった青空。
俺はその空気を吸い込みながら芽衣子を見る。
芽衣子は少しだけモジモジしていた。
「.....ねえ傑」
「.....どうしたんだ?」
「話変わるけど.....わ、私の胸って大きい?」
「.....」
「.....」
いきなり何を言っているんでしょうねこの子。
考えながら芽衣子を見る。
芽衣子は、もう限界だと思ってる。サラシが、と答えた。
そんなの知らないがな。
「.....だって昨日見せたじゃない。谷間。胸の」
「.....お前は童貞を殺す気か?」
「どう!?.....このスケベ」
「いや、お前な。童貞を殺しに掛かっているんだからな。昨日の件は」
真っ赤になっている芽衣子には申し訳無いけど。
俺はマジに昨日の件は忘れないからな。
童貞にはキツいんだからな昨日の事は、だ。
いい加減にせい、って感じだ。
「傑の変態」
「お前だって処女だろ」
「.....傑。本当の本当に君の事嫌いになるよ。それ以上言ったら」
「すまん。ジョークだ」
マジで殺しに掛かる目ですね。
考えながら俺達は通学路を歩いていると。
目の前に山吹が立ってこっちに、ハロハロー、と手を振っていた。
笑顔で、である。
何でだよ!?
「山吹!?何でこの場所が!?」
「うーん。聞いちゃった。色々な人から」
「おいおいおいおい!!!!!冗談じゃない!俺の個人情報は原子力よりも大切だぞ!」
「アハハ。まあまあ」
「良くないって!」
何でそんな簡単に個人情報が手に入るんだよ。
というツッコミはまた今度にして.....何をやっているんだ?山吹は。
考えながら居ると.....山吹は俺の横に立ってきた。
それから腕を絡ませてくる。
その事に俺達は愕然として.....特に。
芽衣子が顎が落ちた。
「えへへ。一緒に学校行こ」
「.....おいおい!!!!!」
すると。
猛烈な殺気がした。
横を見るとそこら辺の石を拾っている。
芽衣子が、だ。
そして殴り掛かろうとしている。
「すーぐーるくーん。あっそびましょう!」
「お前も落ち着けこら!芽衣子!」
「芽衣子君!?落ち着いて!」
芽衣子は、.....傑のアホ、と呟いて早足で去って行く。
俺は、あちゃー、と思いながら山吹を見る。
そういや山吹の髪留めが変わっている。
髪型も、だ。
可愛くなっている。
「山吹。髪型とか変えたのか?」
「え?気付いた?嬉しいな」
「そりゃまあ」
「.....君の為に変えてみました!アハハ」
「.....積極的過ぎるのは勘弁とあれほど.....」
そんなのに素直に従うと思う?私。
振られても君が好きだから。
私は私なりの道を歩むよ?、と満面の笑顔を見せる山吹。
勘弁してくれよマジに.....、と思っていると。
目の前に仁王立ちしている赤髪の少女が居.....いや。
ランドセル.....え?小学生?
「.....?」
「貴方が市川傑って人間?」
「.....!?.....ま、まあそうだが.....お前誰だ」
「小6だけど.....私の名前は伊藤。伊藤巴(いとうともえ)。.....貴方に用事があって来たんだけど」
小6?12歳って事か?
随分と偉そうな口を叩くクソガキだな。
用事があって来たんだけど?
俺は高校生だっつの。
何だよコイツは、と思っているとそのクソガキはこう言った。
特に何の躊躇いも無く、だ。
「正直に言うわ。.....二度と山彦芽衣子さんに近付かないで」
「.....?.....は.....?」
「私の大切な人に近付かないで、と言っているの」
「.....はぁ?は?」
俺に指差してくるクソガキ。
何だかまた厄介な気配がしてきた。
どうしたら良いのだろうかと俺は額に手を添える。
何と言うか厄介だ。
それは何故かと言えば.....横に山吹が居るし。
俺は考えながら.....盛大に溜息を吐いた。
何だコイツは.....。
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