芽衣子の大切な友人

6、芽衣子が失ったもの

色々と思い出す事がある。

何を思い出すかと言えば.....そうだな。

例えば昔の話とか。


俺と芽衣子が出会った頃の話だ。

数学の全国模試とか連続で落ちまくった時、芽衣子は俺に寄り添ってくれたのだ。

まあ当時からずっと男と思っていたのですが.....。


考えながら俺はお風呂に入ってから.....飯を食ってからそのまま勉強をしていた。

ラノベも読む。

そもそも俺はアニオタなので.....。


まあ昔は違ったけどな。

昔は数学が好きだったのだ。

だけど天才から落ちてから.....俺は。

絶望の淵に立っていた時にアニメに出会った。

深夜アニメに、だ。


「このラノベは面白いな」


何というかラブコメだ。

男装趣味のある女の子が男の子に気付いて欲しく.....あれ?

これ今の状況と似てね?

と思ったが.....まあ有り得ないだろう、と思い首を振った。


だってそうだろ。

芽衣子が.....俺に恋をする訳が無い。

何故かって言えば散々振っているのに、だ。

それにアイツは、と思った時点で俺はまた首を振った。

嫌な事ばかりだな。


「でもまさか男装しているとはね。アイツ.....」


考えながら俺はラノベの表紙を見る。

そこには男装している女の子。

ボーイッシュな美少女が表紙になっている。

萌えキャラだが.....何だかなぁ。

かなり身近に感じるんだが。


「.....まあこんな恋は有り得ないけどな。そもそも俺がモテるとかありな.....有り得るか。現に告白されたしな.....」


でも流石に有り得ないだろう、と思う。

芽衣子との関係は、だ。

まあ恋人の仲じゃ無いしな。

そもそも、だ。

これは親友同士の関係だ。


「.....でも何だか芽衣子の行動はおかしいよな。うーん」


さてどう接したものかな。

割とマジにどう行動するべきか。

芽衣子に会うのが気まずい。

あんな事をされると、だ。


「.....積極的になったよな。芽衣子は」


昔とは違うな。

あの頃は.....そうだな。

芽衣子はかなり貧弱だった気がする。

貧弱ってのは簡単に言えば.....勇気が持てて無かったのだ。

勇気を持っているのだ、今の芽衣子は。


「.....まあ女性であれ男性であれ。俺はめい事は友人を続けたいしな」


芽衣子は言っていた。

このままぶっ壊れるのは怖い、と。

確かにな。


それは俺も同様だから。

俺は.....このまま俺は芽衣子にこのままで接しよう。

考えながら俺は.....目の前のノートとラノベを見つめる。

特にラノベを、だ。

男装の趣味の女の子のラノベ。


「でもこのラノベには.....男装趣味は基本的に何かを隠す事をしていると書かれているが.....うーん?」


芽衣子が何かを隠している?

男装で?、か?

隠しているなら何を隠しているのだろうか。


考えながら俺は顎に手を添える。

それから.....考えるが。

まあ.....芽衣子だし隠せない筈なんだが、と思う。

長い付き合いだ。

嘘を隠せないのだ芽衣子は。


「.....うーん.....」


駄目だ頭が回転しない。

ラノベが邪魔をする。

俺の思考を、だ。

もう良いや。

取り敢えずは.....芽衣子にはそのまま接しよう。


「さて.....取り敢えずは勉強するか」


考えながら俺は.....勉強をし始める。

そうしていると芽衣子からメッセージが来た。

俺は?を浮かべながら.....芽衣子のメッセージを読む。

芽衣子はこうメッセージを送っていた。


(今日はゴメン。突然押し掛けて)


(まあ良いよ。お前らしいんじゃないか。猪突猛進は)


(そんな事ないもん)


(.....いや。あるよ.....それ)


俺は苦笑いを浮かべながら.....芽衣子のメッセージを読む。

芽衣子は、もー。何それ、とメッセージを送ってくる。

そのメッセージに、お前は昔から変わらないよ。そういう.....大切な事に自らの信念を持って突っ込んで行くのは、だ、と送る。

芽衣子はビックリした様な感じで俺に送ってくる。


(お前さ。変わらないよな。もう.....5年以上一緒に居るけど)


(.....傑.....有難うね。そう言ってくれて)


(俺はただ単に思った事を言っているだけだ)


(そういう所が.....変わらないね。.....傑。だから私は.....)


ううん。今は言えないって言ったもんね。

ゴメンね、と俺に謝ってくる芽衣子。

俺はその姿に、うんや。芽衣子。俺たちの関係が大切だもんな、とメッセージを返事する。

芽衣子は、傑。有難う、と送ってくる。


(傑。君に出会えて良かった)


(.....だな。俺もだ。.....ああそういやお前.....最近は小説は書いているのか?)


(取り敢えず書いてるよ。.....でももう怖いかな。また.....色々複雑になりそうだから)


(少なくとも書いて良くない事は無いから書いたらどうだ)


俺は少しだけ笑みを浮かべながらそうメッセージを送る。

すると数秒あってから、そうだね、と返事があった。

俺は少しだけ眉を顰める。


実は芽衣子は昔.....作文が得意だったのだ。

でも今はもう書いてない。

何故なのかと言えば.....芽衣子は友達を失ったから、だ。

病気で、だ。


(芽衣子。.....まだ.....)


(.....もう私はあまり考えてないよ。.....考えても戻って来ないからね。.....うん)


(.....そうか)


(.....でもあの子が最初に私の作文を褒めてくれたから。.....私は.....君が書いてみたら、って言うなら書きたい。.....でも怖い)


正直言って俺と芽衣子が友人になるのも。

相当に苦労したのを覚えている。

未だに忘れられない。


だけど俺達は友人でやって来れた。

それは.....芽衣子が一歩を踏み出してくれたから、だ。

芽衣子が一歩を踏み出して俺の手を握ってくれたから今がある。

俺達は支え合ったのだ。


(芽衣子。また手を合わせに行こうな。その子の家の仏壇に)


(是非ともに来てって言ってたから行きたい。.....君と一緒に)


(.....そうか。良かった)


芽衣子は友人を失った怖さから友人を作るのが怖い。

そして小説も、だ。

作文も、だ。

俺は.....少しだけ複雑な顔をしながら横を見る。

そして.....スマホの画面を見つめる。


(芽衣子。あの子は幸せだと思う。そして今も多分.....小説を書いてって思っていると思う。だからかいてあげたらどうかな)


(.....だね。それは思う)


(.....全国の大会で作文で連勝で優勝していたお前だ。.....だから大丈夫だよ)


(もー。それは言わないで。私は天才じゃ無いよ)


(天才だろ。.....少なくとも馬鹿な事故で全てを失った俺よりも)


そんな事言わないで傑、と怒られた。

俺は、すまん、と答える。

そして.....俺は芽衣子からメッセージを受ける。

君がそんなに捻じ曲がる姿は見たく無い、と芽衣子は送ってきた。

俺は、すまない、とまた謝る。


(.....悲しくなるから。君がそう言うと)


(.....すまない。またクソになっているな。俺)


(クソじゃ無いけど.....まあクソだね)


(いや、それはどっちだよ)


俺は苦笑いを浮かべながらメッセージを送りつつ。

暫く芽衣子とメッセージをやり取りしてから.....あの子の家に向かう事を約束してそれから俺は芽衣子と別れた。

それから.....俺はまた勉強をし始める。

明日を考えながら、だ。

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