5、強硬手段

何かがズレている気がする。

それが何かと言えば.....そうだな。

芽衣子の事と.....言えるのだが。


決して言わないとは思うが芽衣子がかなりおかしい。

行動とか言動とか、だ。

何でこうなっているのか、だが。


「.....」


俺は2階の自室でベッドで横になっていた。

そして静かに天井を眉を顰めて見上げる。

それから横にあるスマホを見る。

未だに女とバレて以降、芽衣子から何もコメントが無い。

俺は溜息混じりに居ると.....。


プルルルル


「うお!?ビックリした!?」


山吹とメールアドレスとか電話番号を交換した。

その山吹から電話が入ってくる。

俺は誰からもまあ電話は掛かってはこないと思っていたので飛び起きる。

そして電話に、もしもし、と出た。

すると山吹から、もしもし傑くん?、と言葉がある。


「どうしたんだ?山吹」


『何でも無いけど話をしてみたかったからだよ。アハハ』


「.....そうか」


君と話すのは一番楽しいからね、と山吹は言う。

俺はその言葉に、俺もかもな、と返事をする。

そうだったら嬉しいね、と山吹は笑顔での声の様な声を発する。

俺は笑みを浮かべた。


「山吹。有難うな告白。嬉しかった」


『.....あ。そうそう。.....そのお返事も.....聞きたいかなって』


「.....」


返事としては今直ぐにでも付き合いたい、と言いたい。

だけど何だか知らないが心に引っ掛かるものがある。

それは簡単に言えば.....芽衣子の事だ。


何で引っ掛かるのかも分からないけど、だ。

多分.....友情関係を気にしているのだろう俺は。

考えながら俺は.....前のポスターを見ながら山吹に返事をした。


「すまない。俺は.....やっぱり付き合えないかもしれない。過去の事もあるし」


『そっか。.....でも私.....君に諦めたく無いからアピールする。気が変わる様に』


「.....嫌じゃ無いから.....まあ自由にしてくれ。.....だけど過激なのは止めてくれよ」


『過激なもの?一緒にお風呂とか?』


過激過ぎる。

考えながら俺は.....目の前のアニメのポスターで連想する。

それで俺は鼻血が出そうになった。

アカン!!!!!、と思っているとニヤニヤした様な声がする。

あー。もしかして想像した?、と、だ。


「オイオイ.....」


『アハハ。でもこれ以上は攻めないよ。私も恥ずかしい』


「そうしてくれ。流石に俺も恥ずかしい」


『アハハ』


山吹の野郎。

考えながら俺は盛大に溜息を吐く。

そうしていると.....インターフォンが鳴った。


はーい、と妹が駆け出して行く。

どうやら.....宅急便の様だが。

まあこのまま妹に任せよう。

考えながら山吹と会話をまた再開する。


『今日は記念日にするからね。私。君に告白した記念日』


「.....いや。恥ずかしいって.....だから」


『私は恥ずかしくないよ。君が心から好きだから。この気持ちは変わらないから』


「.....」


そもそも何でそんなに好いてくれるのか。

ちょっと意味が分からないが.....まあ良いか、と思いつつ。

俺は頬を掻きながら苦笑いを浮かべつつ話そうとする。

するとノックが聞こえてきた。


「お兄ちゃん。芽衣子君だよ」


「.....何?!」


それから芽衣子と道葉がノック後にドアを開けて顔を見せる。

驚愕しながら俺は2人を見た。

俺をジッと見て来る芽衣子。

その事に、すまん。山吹。ちょっとお客さんが来た、と電話を切る。

それから芽衣子を見た。


「芽衣子?どうしたんだ。もう18時だぞ。いくら近所とは言え.....」


「.....うん。分かってる。ちょっと席を外してくれる?妹ちゃん」


「あ。うん。大丈夫だよ」


笑みを浮かべながら道葉は手を振る。

そして男同士の語り合いだね、とニコニコしながら去って行く。

それから俺は芽衣子を心臓をバクバクしながら見る。

芽衣子はジッと俺を見る。


「.....また山吹さん?」


「.....そうだが.....何だ一体お前は。どうしたんだよ」


「.....私と山吹さんはどっちが魅力がある?」


「.....え?.....ハァ!?意味が分からないんだが!?いきなり!?」


俺は真っ赤に赤面して芽衣子を見る。

芽衣子は真剣な顔をして俺を見ていた。

そして悲しげな顔をする。

私は.....魅力無い?、と、だ。

いや魅力って言うか。


「.....お前自身の事はずっと男性と思っていた。だからそんな感情は今は芽生えないかもしれないんだが」


「.....そうなんだ。.....じゃあ私が男装を捨てたら芽生える?」


「.....え?」


そして芽衣子はサラシを巻いた胸元を見せてくる。

俺は真っ赤になりながら、何やってんだ!、と慌てる。

すると芽衣子も真っ赤になっているのに気が付いた。

芽衣子はそれから、魅力を沸かせる、と俺に迫って来る。


「あのな!そんな事をしても無駄だって!俺は無理だって!」


「わ、私だってこんな真似をするの恥ずかしいんだから。.....でもそれで無駄って事は無いから」


「何で突然そんな事をし始めるんだ!意味が分からない!」


「.....わ、私は.....」


芽衣子は黙る。

そして唇を噛む様にして俺を見上げる。

それから俺を見つめてくる。

これ以上は言えない、と言う感じだ。

俺は???を浮かべながら芽衣子を見る。


「.....傑。私はね.....貴方と山吹さんがイチャイチャするのが.....許せない」


「いや本当に何で?本当に意味が分からないんだが。お願いだから.....根本を言ってくれよ」


だがその言葉に.....芽衣子は涙を流し始める。

そして俺を見てくる。

言いたいよ私だって.....でも。

もしかしたら今の関係性が壊れるかもしれないとかから言えない、と俺に言う。

何だそれは.....?


「関係が壊れるのは嫌。でも.....その。とにかく.....嫌だ」


「.....」


「.....だから私は話さない」


「.....わ、分かったよ。じゃあ聞かない」


「.....うん.....」


目をウルウルさせながら俺を見上げる芽衣子。

くそう.....芽衣子め。

こんなに可愛い顔だったか?


ボーイッシュな顔なのに.....こんなに女の子の様な。

今のいままで男だったのに。

そんななのに.....く。くそ.....。


「.....とにかく女子生徒と一緒になったら嫌」


「.....分かったよ。意味が分からないけど.....なるだけお前に配慮する」


「.....有難う.....傑.....そしてゴメンね.....」


「.....ハァ.....」


そしてこの日。

俺と芽衣子は約束をした。

女子生徒にあまり近付かないという謎の約束を。

どうしてこうなった、という感じだ。

考えながら俺は額に手を添えた。

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