2、芽衣子の嫉妬

とんでも無い事が判明した。

俺達の男同士の友情の変化に繋がりかねない事だ。

何が判明したかと言えば.....そうだな。


俺の男友達が実際は女友達だった、と言える。

何言ってんのお前、と思うかもしれないがマジなんだが。

どうしたら良いのか俺にも分からん。

混乱しているんだがどうすれば良いのでしょうか。


「.....」


4時限目の昼休み。

屋上で飯を食う俺と芽衣子.....では無く。

芽衣子ちゃんの間には気まずい空気が流れていた。

どんな気まずいかというと。


どう反応したら良いかも全く分からない様なそんな感じ。

向かい合ってはいるが衝撃で。

そして赤面せざるを得ない。

これマズイ気がする.....んだが。

かなり別の趣味の方向が目が覚めそうで。


「なんか喋ってよ。傑」


「お前。この状況でそれは無理があるだろ。どう反応したら良いんだよ」


「ご飯美味しいとか」


「そうだな。いや、無理だろ。これって女の子が作っていたのかよって思うわ」


「言ったら駄目って言ったよね」


いや.....無理だって。

絶対に無理だってばよ。

だってお前.....美少女でボーイッシュって。


勘弁してくれ.....。

昨日の何も知らない俺に遡りたい気分だわ。

今日、学校休めば良かった。

考えながら飯を食う。


「.....何時も通りに接して。今からもこれからも。お願い」


「.....例えば?」


「.....例えば.....僕と一緒にゲーセンに行って写真を撮るとか。男友達の関係で」


「ぶっ飛びすぎだろ。.....じゃあお前は俺と一緒に写真を撮れるのか。今の状況で」


「.....」


「.....」


寄り添って撮るか?、と言う。

だが芽衣子ちゃんは真っ赤になりながら俯く。

何だよコイツ.....、と思いつつ俺はご飯を突く。


と言うか.....それでこんなに女々しい様なご飯の盛り方だったんだな。

おかずとか、だ。

納得がいくわ今なら、だ。

考えつつ芽衣子ちゃんを見る。

名前も芽衣子ちゃんって女らしい名前も納得です。


「何で今まで隠していたんだよ。女である事を」


「.....それ聞く?話さないって言ったよね」


「.....そうですか.....じゃあこの事は親父さんも知っているのか。お袋さんとか」


「知ってるよ。わた.....じゃ無くて僕の事」


「.....いや。わた、言ってるし。.....意味が分からない.....」


根本を言わないから何故男装しているのかも分からない。

思いつつ俺は.....芽衣子ちゃんを見る。

おかずを小さく食べる芽衣子ちゃんを、だ。

俺は頭を掻いた。


「お前が男装を辞めないって言うなら俺は何も言わない。でも絶対に無理がある。いつかはバレるぞこれ」


「.....そんな事無いし。今も昔もバレてないから」


「.....いやいや。たまたま運が良かっただけでしょうに」


「バレないって」


「バレるって」


もう。何でそんな意地の悪い事を言うの?、と芽衣子ちゃんは頬を膨らませる。

俺はその事に、あのな。現実を考えろ、と説得する。

芽衣子ちゃんは、う、と口を噤んだ。

多分恥ずかしいから別室で着替えをやっていたのだろうけど。

今日みたいにバレたら意味が無いしな。


「芽衣子ちゃん。限界は絶対にあるから」


「その芽衣子ちゃんってのも止めて」


「あ、はい」


「何時も通りに接しなさい」


「はいよ.....全く」


この先が本当に思いやられそうだ。

どうしたもんかな、と思いながら俺は空を見上げる。

そして俺は芽衣子に向く。

仮にも友人だからな。

それは崩す訳にはいかない、か。


「分かった。出来る限りの事はする」


「.....!.....うん.....」


「だからいつか。話せる時がきたら俺に話してくれ。男装の理由を。それが出来る限りの事をする報酬だ」


「今は話せないけど.....分かった。約束する」


「.....そうか」


そして俺達は黙々と飯を食べてから.....そのまま弁当箱を片す。

そうしていると芽衣子が俺を見てきた。

でもそんな感じで簡単に協力してくれるんだ、と。

私の傲慢なのに、と言う。

俺はその言葉に芽衣子を見る。


「まあ.....全てを失うのはもうゴメンだからな」


「.....そうなんだね」


「大切な物を失い過ぎた。俺は。だから人に嫌われたく無いんだろうな」


「.....まあそういう所が好きなんだけどね.....」


何か芽衣子がブツブツ言った。

今何つったよ?

聞こえなかったんだが、と思いつつ芽衣子を見る。

何と言ったんだ?、と聞き返す様に、だ。

すると芽衣子は、何でも無いから、とプイッと横を向く。


「.....まあとにかくそういう訳で。俺はお前に協力する。クラスメイトとかにもバレない様に」


「.....有難う。傑」


「しかし全くな。こんな事になるとは」


「御免.....」


シュンとする芽衣子。

可愛いから止めてほしいんだが。

やっぱり男じゃ無いんだよなこういうの.....。


考えながら俺は赤面を隠しつつ立ち上がる。

そうしていると目の前のドアが開いた。

そして女子が顔を見せる。


「ヤッホッホー」


「何だ?山吹じゃないか」


山吹美紅(やまぶきみく)。

俺のクラスのクラスメイトだ。

八重歯が特徴的な細い眉毛の大きな目.....そうだな。


褐色肌でボブヘアーの女の子。

少しだけはっちゃけている。

そして髪の毛にリボンを結んでいる女の子。

身長162センチの所謂.....夏な女の子だ。

クラス委員である。


「探したよ?先生呼んでたからね」


「.....そうか」


「?.....どしたの?」


「どうもしてないよ。すまん」


そんな山吹は俺の幼馴染の様な存在だ。

というか山吹が俺に幼馴染の様に接してくるせいだ。

何故か知らないけど、である。

俺に対して何時もニコニコしている。


まあ恐らくだが.....人にそう接した方が良いとそう思っているのだろう。

有難い事だ。

俺みたいな奴に接してくれる事に。


「ふーん?まあ良いけど。.....それはそうと早く行って来なされ。アハハ」


「.....はいはい。分かった分かった」


俺は苦笑いを浮かべながら芽衣子に向く。

その芽衣子だが.....何故か思いっきり眉を顰めていた。

それからプイッとそっぽを向いてツンとする。

え?何だよオイ。

女性みたいな接し方をするなって言っておいて自らはそうしたら意味無いだろ。


「.....芽衣子?.....お前。どうした」


「.....うん?.....何でも無いよ?アハハ」


「.....???」


そんな風に接するなって言った癖に.....。

何でそんなに背後に炎を燃やしているのか全く分からないが取り敢えずは.....先生に呼ばれてしまったのなら早く行くしか無い。

後は山吹に任せてから俺は直ぐにその場を後にした。

それから職員室に向かう。

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