夢は花咲く。彩られる世界

アキノリ@pokkey11.1

第一章 俺の友人が.....。

マジかオイ

1、モテる美男子(美少女)

桜もそれなりに散った様な4月の初頭の事。

俺、市川傑(いちかわすぐる)17歳の県立高校2年生は変わらずの大欠伸でこのど田舎の街に唯一存在している県立高校に田んぼ道を通りつつ通っていた。


鞄を気怠く背中にくっ付けて背負いながら、である。

高校に通うのにも1キロは歩かないといけない。

実に面倒臭い。


そんな俺のステータスは童貞、身長175センチ。

彼女を作った事も無い。

そして言うなれば成績もそこそこで顔立ちもそこそこ。

不細工では無いがそんなにモテる顔じゃ無い。


幼馴染とか友人の女の子とか夢のまた夢な感じだ。

神様を恨んでも良いかもな、多分。


その様な人間が俺。

つまりあまりにも凡人過ぎて面白みが全く無い。

改めて俺のステータスが嘆かわしく思いながら額に手を添えて歩いていると、おーい、と声がした。


俺は背後を、おっす、と言いながら振り返る。

そこには汗を滲ませた友人Aが居た。

いやまあそれは冗談であるが。

考えながら俺は友人の山彦芽衣子(やまひこめいこ)を見る。

身長163センチ。

単発で.....シャンプーの良い香りがする男を。


「どうしたの?そんな辛気臭い顔をして」


「.....何でも無い。お前の顔が見れて幸せだ」


「?.....変な傑」


「.....4月でかったるいんだよ。つまり」


「.....あー。成程ね。確かにね。テストもあるし.....入学式とかも.....」


入学式って苦痛か?

言いつつ考えながら顎に手を添える。

すると、まあまあ、と芽衣子は俺を見てきた。


長いまつ毛に柔らかそうな唇。

何というか長髪なら女性と間違えそうだ。

歌舞伎で言うなら女装姿が絶対に受けそうな美男子。


「.....それはそうとまた告白されたってな。お前さん」


「そうだね。.....でも僕は.....女性に興味無いから」


「.....そうかい」


「僕は親友さえ居れば良いから」


「不思議な奴だよな。お前さんって」


俺なら1人だけでも女性から告白されたら舞い上がるのにな。

でもそれが芽衣子には全く無い。

芽衣子はよく女性に美貌で告白されるのだ。


だけどそれを毎回蹴る。

それはゆうに50人ぐらい蹴ったと思う。

中には男子も居た様だが。


「.....俺は一人も告白された事無いからなぁ」


「アハハ。君は君なりの魅力があるから」


「ねぇよ。俺に魅力なんぞ」


「そんな事無いよ。君は天才だよね」


「だった、だからな」


数学のコンテストで俺は日本全国の小学生の中で最優秀になった。

その時の知能は120を超えていたと思う。

しかし事故で平凡な男に知能が落ちた。

事故ってのは階段から落ちたのだ。

それで頭を打った。


「.....でもそんな君でも嫌いじゃ無いよ」


「嫌いになってないのはお前だけだわ。教室でも浮いているしな。プカプカと」


「それは君が人嫌いなだけだよね」


「的確なアドバイスに感謝します」


「もー。真面目に聞いて」


頬を可愛らしく膨らませる芽衣子。

まあ.....確かにそうなんだけどな。

俺が人を嫌っているだけで全ては俺が悪い。

だから頑張れば何とかなるんだけどな。


「.....でも芽衣子さえ居ればどうでも良い」


「.....昔の事もあるから?」


「.....そうだな。人に失望されるのはもうゴメンだ」


「.....」


「芽衣子は認めてくれるから」


まあ確かにね、と苦笑いを浮かべる芽衣子。

それから.....俺に、そういえば近所に面白そうなカフェが出来たよ。行ってみない?、と言ってくる芽衣子。

話を切り返すのも上手い、と思う。


「そうだな。一緒に行くか」


「だね。アハハ」


そう言えば今日もお弁当作ってきたよ、と芽衣子は弁当を取り出す。

それから俺にニコニコしながら渡してくる。

俺は、お前って本当に女々しいよな.....、と苦笑いを浮かべる。


女々しいかな?、と芽衣子は首を傾げる。

いや。だってそうでしょう。

コイツがもし髪伸ばしたらマジに女子だわ。


「.....芽衣子。そういえば親父さんは元気か」


「え?親父?.....うん。元気だよ」


「.....また会いに行くからな」


「.....そうだね。一緒に病院に行こうね。傑」


芽衣子の親父さんは入院している。

ガンの治療で、だ。

だから病院にずっと居るのだ。


そんな会話をしていると。

俺達は学校に着いた。


それから.....俺達は下駄箱に向かう。

すると下駄箱を開けた芽衣子は、あれー。まただ、と言葉を発した。

見ると白い封筒が入っている。


「何だ?またラブレターか?」


「.....うん。そうだねぇ.....」


「.....モテる奴は辛いねぇ」


「あげれるならあげたいよ。君に.....あ。でもそれじゃマズイか」


「.....そうか」


俺は芽衣子に苦笑いを浮かべる。

その中で、また断らないと、と芽衣子はブツブツ言う。

そんな姿を見ながら俺は目の前の下駄箱から上履きを出した。

それから上履きを地面に置く。


「じゃあ教室に行くか」


「.....そうだね。行こうか」


「後で何とかなるか?それ」


「なると思う。うん」


なら行くか、と俺は芽衣子に苦笑する。

芽衣子は、そうだね、と苦笑いで返事をした。

それから俺達は教室へ向かう。

何というか.....その。

今日が運命の日になるとは全く知らずに、だ。



俺と芽衣子は同じクラスメイト。

今日の3時間目は体育だ。

だけど芽衣子は体操服を着替えるのもどっかの別室で1人で着替えている。

何故かは分からないが.....かなり大きな傷があって人目に晒すのが嫌だそうだ。


俺はその事も有り芽衣子を待つのだが。

今日はちょっと体育で使う為の点数表を取りに行く為に空き部屋の倉庫を開けた。

だが何故か鍵が掛かって無くそのまますんなり入ると。


「.....?.....!?.....え?」


「え.....す、傑!!!!?」


そこに.....サラシの様な物を巻いている.....胸がはみ出る様なそんな感じで女性用下着を身につけている芽衣子が居た。

艶かしい足が.....って言うか.....え.....え?

俺は顎が落ちそうになった。

芽衣子は涙目で真っ赤になっていく。


「.....え、え、な、何で.....」


「.....お、お、お前.....女だったのか!!!!?」


「す、傑。恥ずかしから出て行って.....」


「出て行きます!!!!!」


胸を隠す様な仕草をする芽衣子。

え。ちょっと待って?

俺は顎に手を添えながら.....考える。

しかし.....駄目だ思考回路がショートした。

どうなっているんだ!!!!?


「.....え?アイツ女だったの?マジ?」


俺は空き部屋の側で口元に手を添えながら崩れ落ちつつ冷や汗をかく。

マジにどうなっている!?

え?え?え!?

俺は目をパチクリしながら真っ赤で居ると空き部屋から芽衣子が顔を見せた。


「.....傑」


「.....な、何だ。芽衣子」


「お願い。誰にも言わないで」


「.....む、無茶な.....」


そんな滅茶苦茶な。

しかしそんな言葉に芽衣子はキッと目を尖らせながら赤くなる。

そもそもにこうなっているのは君のせいだから。

と俺に向いて、だ。

は?


「.....それってどういう意味だ.....」


「.....言わないけど.....そういう事」


「.....ちょっと待て。高校の戸籍も男だよな?お前。.....え?割とマジにどうすんの?」


「.....別に。気にならないから。君以外なら」


何だか知らないが。

俺の学校生活が.....ガラガラと音を立てて崩れていく気がした。

これどうすんの?マジに。


これは.....芽衣子と俺の。

最大にして最大のラブコメ。

こんな感じの、だ。

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