第5話

 紀元前後期、全地球規模で人類を脅かしたパンデミックは、危機の際の類例として新たな進歩もまた、賜った。

 一つはリクスマネジメント、即断即決意志決定補助機能としてのAI、そして時短手段である量子コンピューティング、両者は正に両輪となって人類の技術文明を強力に駆動する。

 その成果はパンデミック対策最終回答としてのマイクロテクノロジー、医療を目的とするナノ・マシンの実用化として結実した。病変容態人体生理に疾病からの回復健康状態復帰を目的として必要機序のみ働きかけ機能させる、ようやくにして人類は完全無害な薬を手中とした。

 辛くもまた危機を脱し、しかし人類は地球、という単一閉鎖環境の脆弱さを思い知る。種の保存として宇宙進出が加速される。

 一方、医療用ナノ・マシン、ナノメディによる健康維持管理は依存どころではない、水と空気とナノメディというくらいの、これは人類の退歩だいやこれこそ新しい、人類特有の進化そのものだと百家争鳴する程には良くも悪くも影響を、人類史に新たな頁を記していた。

 緊急時には外科処置修復脳機能保全は無論、大気から水分を補給し生体電気分解で酸素を供給し木石から炭素系生物たる我々の飢餓を救う、ヒト種の生残性は爆発的に進捗した。

 不老不死。

 が、ここでヒトはヒトの限界を見る。

 如何に永遠のフィジカルを得ようと、或いは相応の加齢を自らに課そうとも、無限の時間、可能性、それは、祝福であり同時に呪い、実現可能性を現実化せしめる才能、努力、ガンバレニッポン!! えーだって100メーター1秒は切れないでもやった遂にやりました10年越しの偉業達成遂に1プランク秒更新ニッポン新!! 。時間も健康も無限、可能性も無限、ただ意志のみ有限。

 人間の天命は200年でじゅうぶんっす。

 ナノデス。

 安らぎ、もうゴールしてもいいよね。

 それでも尚、死せず飢えず人類安寧の日々是好日。

 歴史は微睡む。

 目覚めよ、その声は、火星で。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る