第6話 転移後の喧騒


 訓練場につき、その広大な土地を前に息を呑む。


 「いつみてもここはすごいよなー、、、どうやってできたんだろうな、ここ。笑」


 「ヴァン、もうそんなこと考えててもしょうがないでしょ?ここにきた時から驚きっぱなしで、僕はもう感覚が麻痺してるよ。。はは。。。」


 そう、あの時。


ーーーー

 

 俺たち子供が連れ去られたあの日、目が覚めたらこの訓練場にいた。誰一人傷ついていなく、周りのみんなも困惑した様子であたりを見回していた。


 「ここ、どこなの、、?王都?でもこんなところ知らないよ。。。こわい、こわいよお兄ちゃん。。!!みんなどこ行っちゃったの?!馬車は!?私たちの荷物は!?大人の人たちは!?」


 凄い勢いで隣の少年を捲し立てる、ツインテールの少女。お兄ちゃんと言われていたその少年は、宥めるようにその少女に努めて優しく接する。


  「だ、大丈夫だよカレン、、、俺がそばにいるから。。お兄ちゃんといれば怖くないよ、お兄ちゃんが守ってあげるからね?大丈夫、大丈夫。。」


 お兄さんの方も困惑してるのがわかるが、その姿に何故か羨ましさを感じた。ついこの間まで共に暮らしていた弟とのことを思い出してしまうからだろうか。


 「いや、そんなわけないでしょ。」


 今更、あの弟とこの状況になったとしてもあんな風に宥めることはしないだろう。だからこそ、の感情なのかもしれない。


 「今はそれより、この状況をどうにかしないと。。ここはどこなんだ、、」


 俺も実際かなり焦っている。才能なしの上に唯一の持ち物である小遣いと愛剣すら見当たらない。周りもちらほら騒ぎ出してきた。


 「ねぇ、、ここどこかな、、?僕知らないよこんなこところ、、、君はなにかわかる、、?えーっと、、、」


 「っ!?あ、ああ、俺も全然。ここがどこなのかも、奴らが誰なのかもわからないよ。。君の名前は?俺はヴァン。声をかけてくれて助かった。一人で心細かったんだ。」


 「へへ。。僕も一人じゃ怖くて。。笑

僕はフランだよ!!よろしくねヴァン君!」


 「ヴァンでいいよ、見たところ歳も近いようだしね」


 「じゃあそうする!ヴァン、妙に落ち着いてるよね。。見てると僕も安心するよ。しばらく一緒に居ていい?」


 突然声をかけられて困惑していたが、、なんだこの可愛い生物。。見た目からして女の子、、?だとは思うけど、服装が何やら男っぽいな。。。それに胸も。。。。


 「あー!!ヴァンもそうやって。。僕は男です!!!ほら!見てこの筋肉!かっちかちでしょ!?ね!?」


 と見せられた二の腕は残念ながらカチカチに至るどころかふにふにだ。


 「お、おう、、悪かったな。。謝るよ。改めてよろしく、フラン」


 「うん!よろしく!!」


 不思議なやつだな、、こいつといると妙に和むというか、、とにかく、話しかけてくれてありがたい。っと、


 「遂に登場って感じだな。」


 黒いフード付きコートを着た、長身の男が俺たちの目の前に現れた。

 男は俺たちと向かい合うように立つ。

それだけで只者じゃないと感じるほどの魔力とオーラを感じる。こいつは、やばい。

 

 「俺はスカー。お前たちをここに連れてきた張本人。と、言ったところか。」


 そう言うと男は、パチンっと指を鳴らす。

すると何もないところから突如現れた、男と同じコートを着た10人の人間。

 そこにいるどの人からも、スカーに近い力を感じることができた。


 「そして、この世界を本来の在り方に変える。それが俺たち組織の目的だ」


 そうして俺たちはこの組織、

 ケルベロスと邂逅した。

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