第3話 馬車でため息


 この世界には魔物が蔓延っている。


 今から数100年ほど前、突如として魔王という存在が現れたそうだ。

 魔王は自らの力であらゆる魔物を生み出し、この世界を襲わせた。魔王のこの力も才能だったと言われている。

 

 で、その才能に対抗するように生まれたのが勇者の才能。あらゆる適正に秀でていて、魔王に有効打を与えられる存在だった。

 他にも聖女のみが使える聖属性付与魔法などを使えば対抗手段になったそうだ。

 

 そして無事魔王を倒して勇者一行は晴れて英雄となった。

 この世界に平和が訪れた。はずだった。。。




 俺はこのアストラダムに複数存在する国家。その一つであるワンダポリターノ国にいる。

 そして、今は王都ワンダーを目指して馬車に揺られていた。ちなみに俺の実家もワンダポリターノ国の領土だ。


 

 「はあ〜〜。まずは王都に行って冒険者登録、日銭を稼いで安宿を探さないと。。はあ。この先どうなっちゃうんだろうな。。」


 この世界は魔王討伐後も魔物たちが消えることは無かった。そして今も増え続ける魔物のせいで、あらゆる場所に被害が起きていた。


 魔物には種類があり、上級魔物に属する存在にはハッキリとした意思があるという。

曰く、今後必ず魔王が再誕すると宣言していたそうだ。その残滓が原因で魔物発生が止まらないとも言われていた。


 これに対抗すべく、この世界で冒険者ギルドという組織が作られた。

冒険者は主に魔物の討伐を行い世界を魔物の恐怖から少しでも救うことを目的としている。


 そして、魔物からはあらゆる素材が手に入り、これらの素材は魔導具や日用品、はたまた冒険者の装備などに幅広く使われている。


この世界にある物の多くは、この魔物の素材から作られた、または一部が使われたものだ。特に魔物からごく稀に手に入る魔核は各都市の魔力の原動力にもなり、種類によっては一生遊んで暮らせるほどの富を手に入れることができるものもあるという。


 魔物は一般の人にも狩ることができるが、一般の人が狩るメリットは修練以外ほとんどない。

 魔物の素材は冒険者にならないと買い取ってもらえないのだ。それに冒険者になると依頼として受けることもでき、達成ごとに依頼料をもらえる。さらに、ある程度必要なバックアップをギルド側が行ってくれるのだ。入らない手はない。


 そのほかに魔物討伐だけでは無く、家庭教師から花壇の水やり、商人の護衛など、多種の依頼に対応していて、もはやこれに登録するのが一般の常識となっていた。

 

 冒険者にはランク付けがされており、SSSランクからFランクまで存在する。


 これは、依頼達成数や貢献度、はたまた上層部の決定で決められ、上に行くほど待遇が良く、ある一定のランクがなければ受けられない依頼などもある。


 そして、SSSランクともなろうものならこの世界のもう一つのトップと言っても過言ではないほどの影響力があった。…まあ今は誰一人いないんだが。


 昔は、、、というか、つい先週までは俺もいつかはSランク冒険者に!なんて思っていた。思ってました。はい。


 「才能なしって、まじかー。今更ながら本当に大きい障害すぎるだろこりゃ。。これじゃあFランクから一生上がることもできないし、できる仕事は飼い猫探しや、街のトイレ掃除、いい依頼料なものなら家庭教師もありだけど、、、学園にもまだ通ってないガキができることでもないか。。。せめて学園だけは通わせてもらってから追い出して欲しかった。。まあ今更だけど、、はあ。」


 つい口に出して呟いてしまい、同じ馬車に乗っている12歳ほどの人たちに白い目で見られた。

 

 そうか、、今は12歳の人たちが王都の学園に通いはじめる時期なのか。それでこんなに同じくらいの歳の人が乗っていたのね。


 「俺もあと2年後は学園に通うことになるはずなんだけど、、、」


 学園に通うには試験を受け、ある程度の能力を持った人なら入れる仕組みになっている。

 そして寮に入り3年間、この世界の常識や戦い方。商売の仕方や歴史など、あらゆることを学ぶことができる。

 学園にも色々な種類があって、その中でも特に優秀なのが冒険者を育成する学園だ。

 その最高峰、トーラス学園。みんなここに入りたくて修練をし、開花した才能を2年間で伸ばす。

 

 トーラス生になれば、卒業後冒険者ランクB以上からの高待遇や、他の各上層部に優先的に配属することができる。貴族の子はかなりの拍がつき、どの家も裏金を払ってでもこのトーラスにいれるのが常識となっていた。


 まあ、結果貴族だらけの格差社会の誕生。。というわけなんだけどね、、学園自体は身分差は認められないと言ってはいるが、そこは傲慢な貴族。そうやすやすと格差が無くなるわけじゃない。

 

 俺はそういうの好きじゃないし、普通の学園に入れれば、、、平和、平和が一番。何よりももう目立ちたくない。


 ここにくるまでも、ルードルフ領の周辺では才能なしと馬鹿にされ、石を投げられ唾を吐きつけられた。

 そんな俺がトーラスを目指したとしても同じかそれ以上の被害に遭うに違いない。もういっそ学園には入らないのも手だな、、、


 「はあ。もう何もしたくないし、考えるのも疲れた。とりあえず寝よう。」


 そうして今日何度目かわからないため息をついて、馬車に揺られながら眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る