第2話 旅立ち


 監禁から1週間がたった。俺は今屋敷の執務室にいる。


 目の前の父ことアーノルドが隣に座る俺の弟、ラザニア・ルードルフの頭を撫でながらめんどくさそうに言う。


 「ヴァン、お前をルードルフ家から除名とする。才能なしの能無しなど、我がルードルフ家には不要。学園に入学する2年後の12歳までは面倒を見てやろうとも思ったが、能無しのお前などを抱えていることが広まると家名に傷がつく。荷物をまとめて今日中に出て行け。」


 …まあ予想通りの追放宣言だこと。一応父親としての面目もあって2年面倒を見るとかなんとか言っていたが最初からその気はなかったのだろう。今の態度を見れば明らかだ。

 

 「…わかりました。今までお世話になりました。今後はルードルフの名を捨て生きていくことにします。今後の繁栄を願っております。」


 こちらも、よほど思ってもないことを言い放ってそそくさと執務室を出ることにした。部屋に戻って準備をしないと。

 いつも使ってる愛用の剣と、あーあと昔から貯めてたお小遣いも持っていこう。


 などと考えて部屋で準備を開始すると部屋の扉が開いた。

 

 「よう兄さん、旅立ちの準備は済んだかい?いいざまだよ、はは」


 …この弟は本当に父親に似ている。昔からラザニアとは争っていた記憶しかない。親父とはいつもこんなだった。


 ここで俺の昔の話をしておこう。俺は俗に言う天才児だった。それもとびっきりの。

 剣を振らせれば才能持ちの年上の少年とも互角に近い争いをし、魔法をやらせてみれば才能持ちを上回るであろう威力の魔法を放った。

 「才能は3つ以上は間違いない、それもいきなり上級だ!!」と、領内全員に騒がれていたもんだ。


 そんな俺とラザニアは腹違いの兄弟で、いつも顔を合わせれば言い合いをしていた。


 優秀な俺と平凡な弟。家の訓練もいつも一緒だったけど負けたことは一度もなく、いつも悔しい目で俺を見ていた。


 そんな俺は会うたびに笑いかけ、積極的に世間話をしようと声をかけたりもした。遊ぶことはなかったけど、俺は弟を大切にしていた、、、とは思う。気持ち的には。。。

 声をかけては睨まれ、いざ声をかけてみると「うっせぇ!」やら、「ぜってぇ蹴落とす!」やら、、、あれ?思い出したら段々と腹が立って、、、


 「おうラザ、目障りな兄が出て行くことになってよかったな。これで次期領主はお前。ルードルフ家の今後が楽しみだな。頑張れよ。」


少し皮肉っぽかったかな?まあ、あいつにはこのくらいがちょうどいいだろう。

 兄っぽいことはしてやれなかったけど、いつか助けてあげられることがあれば手を貸してやろう。兄だからな。


 「うっさいクソ兄さん。お前が出て行くことになって本当に良かったよ!いつもいつも僕の前を行きやがって、、クソむかついてたんだ。いいきみだよ才能なし!!必ず才能を二つ以上開花させて、無能な兄さんを笑ってあげるよ、ははは」


 ……オ、オレハアニダカラナ……アニラシイコトヲシテ…シテ………


あいつぜってぇ許さねえ、、いつか見返してやるからな、、、


 こうして俺はルードルフ領を旅立った。


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