第25話 突破!その弐

オロチ隊が領事館の正門を攻めている頃、イッコ達は東門へ向かっていた。

東門は崖に面している為、攻める方も難しい。それゆえに守りも手薄になっていると予想できた。


「思ってたより険しい崖だなぁ。」


イッコは訝しい顔で呟いた。

ここは東門が真上から見える位置にある場所。

衛兵もまさかここから攻め入られる事はないだろうと思っている。


「そうね。でも、まずまず問題なさそうね、」


ガルーダは涼しい顔で言った。


「言うのは簡単だが、じいさん。あんたこの崖をどう下るつもりなんだ!」


後ろで控えている男がガルーダにむけて怪訝そうに言った。


「ばか!この人はな、この世を解脱してんだぞ!軽く見てんじゃないよ!」


イッコは失礼な態度の男を叱りつけた。

ガルーダの見かけは一見、華奢な壮年だ。

面識のない者からしたら仕方のない事かも知れない。


「いいのよ。」


ガルーダは優しく男にむけて言った。


「そうよね。私が先に降りるわ。皆さんは後からついてきて下さいね。」


にっこりと微笑むとヒョイと崖から飛び降りた。


ピョンピョンと所々にある岩のでっぱりや木の枝に乗り移り、両手を後ろに組みながら軽いステップを踏んで降りていく。


「やっぱ、只者じゃないなぁ。」


イッコはガルーダのそんな姿を見て嬉しそうだ。


「続けぇー!」


そして、号令をかけ、イッコも皆を引き連れ崖をかけ降りる。


ドドドドド!


総勢30数名が

断崖絶壁の崖を勇猛にかけ降りてくるのである。

東門を守る衛兵も目を疑った。


「一体、何事だー!」

「ば、馬鹿。敵襲だー!」


慌てて兵備兵は警報を鳴らす。


Woooooo!


多くの警備兵は正門に回っていた。

確かに東門は手薄だったようだ。


「よーし!このまま攻め込めー!」


イッコの号令で隊は雪崩のように領事館へ攻め込んだ。


先頭はイッコである。

見事な体さばきで敵をかわす。まるで猫のように身軽だ。

更に腰にさしたサーベルを抜き、敵を蹴散らす。剣さばきも申し分ない。


「さすが、きんちゃんの孫ねぇ。」


ガルーダはイッコの獅子奮闘ぶりに微笑んだ。


しかし、不思議な光景だが

ガルーダはこの戦闘のなか、避ける事も戦う事もなく只、乱闘の中を歩いているだけなのである。

警備兵にはガルーダが見えていないのというとそうでもない。

普通の人間を含む生命のある者は何故かその存在を無意識に避けてしまうのである。

世間から解脱したガルーダとはそういう存在ののである。


「さて、私も行くとしましょうか。」


ガルーダは又、テクテクと歩きだした。


イッコ達がロビーを突破したところで防御壁が作動した。更に、コンピューター制御されている攻撃ユニットが彼女達の行く手を阻む。


キュイーーン キュイーーン


ヒシュン! ヒシュン!


攻撃ユニットのレーザーが飛んでくる。


イッコはとっさに物陰にかくれてこれを回避した。


「みんな!どこでもいいから隠れて!」


無線で皆に号令をだした。


「イッコ。ここは私にまかせて。スザクさんからウイルスの入った偽造カードを預かってるの。」


「さすが、スザクさんだ!」


「そこの壁にあるカードリーダーに読み込ませれば防御癖はダウンするわ。でも、攻撃ユニットのレーザーは別の動力で動いているらしいの。」


「そうか。どうしたらいいんだ……。」


「スザクさんが送ってくれたマップでは防御壁の数メートル先に制御板があるわ。それを破壊すればレーザーは止まるはずよ。」


「レーザーの攻撃をかわして、ここを抜けないといけないのか。難しいな。」




「俺ならやれるぜ。」


無線でのやり取りに別の声が割って入ってきた。


「オウリュウか!」


オウリュウは先日、失踪した名スナイパー、セイリュウの息子である。


「これぐらいの距離なら目をつぶってても当てられる。」


「オウリュウ。お父さんが大変な時なのに、戦いに参加してくれてありがとう。君なら安心だ。任せるよ。」



「決まりね。」


ガルーダはカードリーダーをとおしてウイルスをながした。


防御癖がダウンして、道が開いた。


「さあ!頼むよ!」


「ああ!任せな!」


オウリュウはライフルを既に構えている。

そして、トリガーにかかった指を引いた。


ヒュン!!!!

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