第23話 進撃
ひょんな事からレジスタンスと共にテロを起こすことなった天達。
この街、カンザノートは天が統括している事になっている。その街に起こるテロを手伝うのだから何とも妙な話である。
実際に統括しているのは天の名を語る偽物だ。そのふとどき者を退治すると言えば相応に理由がたつので、そう思う事にした。
レジスタンスのリーダーはオロチだ。
領事館占拠と行方不明のセイリュウの捜索を遂行する為、昨晩は作戦を練っていた。
「セイリュウさんの捜索はスザクさんとゲンブさんの指揮下で行う事にする。人選は任せるぜ!」
「他の者は、領事館の戦略に参加してもらう。すまんが天達には同行してほしい。」
オロチは街の戦える男達を集めて、そう言った。
「領事館へは早速、今晩攻めいる事にする。バッダの死亡が確認される前に片付けたい。」
「領事館は堀で囲まれていて門は3つ。そして正門はジャイアントを飼っている。そいつは俺とリュウが殺ればなんとかなるだろう。」
「よっしゃ!任せな!」
リュウは勢いよく言い放った。
「その時、他の門は手薄になるだろう。特に東門は崖に面しているから奴らは安心している筈だ。そこはイッコが先頭に攻め込む。」
「あいよ!」
「地下に抜け道があるとスザクさんの調べでわかっている。上役のやつらはここから逃亡するだろうから待ち伏せだ。ここは天に任せたいと思うが、どうだろう?」
「ありがとうございます!勿論です。」
どうやら大まかな役割が決まったようだ。
「よし、それぞれ準備をしてくれ。」
オオオー!
現場の士気が最高に高まる。
ーその夜ー
静まりかえったカンザノート。オロチを先頭に男達は街を出た。
「オロチ隊!行くぜ!」
「おう!」
斬り込み隊であるこの隊は、より一層意気込んでいる。リュウもその一人だ!
「ッヒョウ!腕が鳴るぜぇ。」
更にオロチ隊は足を進める。
そして、いよいよ領事館の正面に着いた。
「よし!いっくぜー!」
オロチの掛け声と共に総勢20名の男達は正門に突っ込んでいく。
「おおおおお!」
ドドドドドー!
一番先頭にいるのはやはりリュウであった。
手に持つは伝説の槍〈トライデント〉だ。
「破っ!!!」
リュウの渾身の突きで正門は砕け飛んだ。
ガッゴッーン!バラバラバラ
領事館の門番は慌てて警報を鳴らす。
WoooWoooWooo!
「敵襲ー!敵襲ー!緊急事態発生!」
警備兵がすぐさま駆けつけてきた。
そして、その後ろに巨大な影が見える。
ジャイアントだ!
~~~~~~~~~~~~~~~~
少し遅れてイッコの隊が出た。
この隊が一番大人数だ。
「みんなー!気をつけてね!無理をせず、危なかったら逃げるんだよ!」
イッコは皆に言い聞かせた。
「何かあったら私に任せて。」
イッコの側で落ち着いた声でこう言ったのはガルーダである。
「ありがとう。貴方が居たら安心だよ!」
「ガルーダって呼んで。私もあなたの事はイッコって呼ぶわ。」
「あの……。こんな時に聞くのはおかしいけど、その。おじいちゃんはどんなでしたか?」
「イッコのおじいちゃんはそれはもう、凄かったわ。剣の腕はピカいちだし、それでいて誰にでも優しい人格者。芸術にも明るくてね。フルートが凄く上手だったわ。」
「うん。フルートは小さい頃よく聞かせてくれたよ。」
「あの頃は今より情勢は酷くてね。戦国時代だったわね。各種族での争いが絶えなかったわね。」
「そう!じいちゃんは一族の英雄だったよ!」
大所帯の隊を任されていたイッコはそれなりにプレッシャーを感じていた。イッコ自身は剣の達人だが、引き連れているのは只の民間人だ。この戦いで命を落とさないとも限らない。ガルーダの存在はこの上なく心強いに違いなかった。
イッコ隊が領事館に到着した。
すでにオロチ隊が正門で戦闘の最中だ。
「よし!東門に回るよ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~
そして、もう一つの隊は天がキーパーソンだ。
天はこの街の者ではないので隊長はグループ長のビャッコが務める。
事前に領事館には秘密の抜け道があることは調べがついていた。
そこを待ち伏せして叩くのが、この隊の責務であった。
「天くん。慣れない土地で大変だろう。俺達は本当に嬉しいんだ。ありがとうな。」
ビャッコは改めて天に礼を言った。
「いえ。お礼は頂くほどの事ではないです。僕の名前を利用されているのです。これは僕個人の問題でもありますので……」
天は申し訳なさそうに言葉を返した。
3年前にこの世界に飛ばされてきた頃に比べれば随分、心身共にたくましく成長したものである。
ラクシュも天と同行していた。
「応急看護は任せてくだい。私、回復呪文が使えますのでしっかりサポートしますよ。」
「そうかい!それはありがてえ。頼りにしてるぜ。」
ビャッコは満面の恵比寿顔をラクシュに向けた。
そうして、ビャッコの隊は鬱蒼と緑が生い茂る森に到着した。
ここが抜け道の出口だ。
ビャッコと天を始め十数人は静かに闇に身を沈めた。
こうして、それぞれの隊の決戦が始まったのであった。
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