第19話 真打ち登場

「オオオオオオオッー!」


「オオオオオオオアーー!!」


バッダ将軍と竜神リュウの三度に渡る対戦である。


リュウは街の消火栓、貯水槽から集めた大量の水を再び操り始めた。


手に持つ伝説の槍「トライデント」を頭上でぐるぐる回しながら矢じりの先に水を集めている。


「ドオァオオオオオアーー!」


槍を力一杯に横に振った。

大量の水が大きな円上のカッターになってバッダに飛んでいく!


バッダはそれを避ける様子は無い。

が、バッダの後ろから別の敵が現れた。


バッダも大柄の体格だがそれより更に20cmは背が高くマッチョである。肌は不気味に青い。


「ハッハァァァーー!!」


その全身青色の大男は突如大風を舞い起こした。


ブゥオオオオオオ!!


リュウが放った特大水カッターはバッダに届く前に消し飛ばされてしまった。


「くっ!? 何者だ?」


「ハッーハッ! 俺は風の魔神ジンだ!よろしくな!」


その青色の大男は悪意たっぷりの笑顔をリュウに向けた。


「くそっ!水を封じた位で得意になってんじゃねぇよ!」


リュウは構わず突進する。


ジンはバッダの前に出て応戦する。大柄の体に似合わぬ素早い動きだ。腕に何重もの金属の輪をはめておりカンフーにも似た動きで攻撃を繰り出している。


バッバッバッ!


ビュンヒュンビュン!!


ジンとリュウの激しい攻防が続く。


「くっ!なかなか、骨が折れるぜ!」


「ハッハッハー!」


不敵な笑いを隠さないジン。



ドパパパパパパパパパパパパパパ!!


二人の攻防を妨げたのは、不意打ちの銃弾であった。


バッダを含む三人は素早く避けた。


「チンタラやってんじゃねーぞ!」


業を煮やしたオロチの加勢?であった。

いつの間にか残っていた軍隊は壊滅していた。

オロチの圧勝だったようだ。


「バカヤロー! 危ねぇだろが!」


リュウはオロチに叫んだ。


オロチは腰に下げている刃渡り40cmもあるダガーでバッダに向かっていく。


「よせ!オロチ!そいつの強さはマシでヤバいんだ!」


リュウは叫んだがオロチはお構い無しだ。

そのまま突進をやめない。


オロチは右手を前に出すアクションをとった。

すると、自身の姿が3つに別れた。

尚も突進をやめない3人のオロチ。後ろから太陽が照りつける。それぞれ濃い影が伸びている。


次にオロチは両手をクロスした後、すばやく左右に広げるアクションを繰り広げた。


それぞれの3つの濃い影は更にバッダに向かってスルスルスルーと伸びていった。その様はまるで生き物のようである。


バッダの手前まで来た影達は地面から急に直角に起き上がり、囲むようにぐるぐる回り始めた。

バッダは影達に覆われて身動き出来なくなった。


もがくバッダ。

影に覆われて苦しそうだ。


遅れて到着した3人のオロチは先程まで手に持っていたダガーをしまい、背に背負っていたギターケースを機関銃のようにそれぞれの構えた。


「砲撃ーー!!」


ドパパパパパパパパパパパパパパ!!!


ギターケースの先から機関銃の弾が乱発される。オロチの隠し銃である。


3つの機関銃で至近距離から砲撃を食らってはさすがのバッダもたまったものではないであろう。


オロチは影をバッダから剥がした。


「!!!」


中にはバッダの遺体は無く、土の塊があるだけだった。オロチは失敗したのだ。


次の瞬間、地面からバッダが飛び出した。

魔剣デュランダルがオロチを襲う!


ジョバッー!


オロチは縦に体を真二つにされた。


殺られたのは三体のうちの影の方で、本体では無かった。


「ふぅ。危なかったぜ……」


再び間合いを取る。



「なんだ。結構やるじゃないのよ。殺られたけど。」


リュウはオロチの戦い方に感心していた。


「よそ見はしない方がいいぞー!ははっ!」


ジンの攻撃は止まない。丸太のような足で蹴りが飛んできた。


リュウは槍で受け止めるが吹っ飛ばされた。

なおもジンの突進は止まらない。


徐々にリュウが押されてきた。

元々ウエイトに差がありすぎるのである。無理もない。


「くそ!水さえ使えれば……」

リュウは苦しそうだ。


一瞬の隙をつきジンの手刀がリュウの槍を弾いた。


無手ではリュウに部が悪い。万事休すだ。


「ハッハッハッ!楽しめたぞ!じゃあな!」


ジンがニタついた笑顔を見せ、高く上げ両手をリュウに降り降ろさんとしていた。


ザン!


何かが起きた。

太陽を背にしたジンのシルエットには首が無かった。


リュウは何が起きたのか理解出来なかった。


ジンの巨体が倒れた後ろに人影があった。

円上の二降りの刀を手に持っている。


「お、お前! テンか!?」


「大丈夫ですか!リュウさん!」


〈五条 天〉であった。

たくましくなった天をリュウは天界の王子のテンと間違えたのだ。

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