第7話 断罪を止める為に
いつもの私の部屋で目が覚める。
部屋には卒業パーティー用のドレスが飾ってあった。
このドレスは王子の瞳の色に合わせて作った碧を中心としたドレスだ。デザインは肩がグッと開いており男から見ればかなりいやらしいのかもしれない。そもそも私の胸が大きくてこっちの方が良いとされた。
私はクローゼットを開けて以前の夜会で着たドレスを出した。どれも胸が強調されたものばかりで嫌になった。王子が少しでも私を見てくれるようにと。作ったものであったのに王子は私とのファーストダンスが終わるとさっさと離れていったことしか記憶にない。
なるべく地味な色のドレスにして胸元はショールで隠してしまうことにする。
そして制服に着替えると遠慮がちにノックされた。
「お、お嬢様…おはようございます…」
とヨニーが赤い顔で入ってきて…昨日の光景が思い出され、私も赤くなる。
「お、おはようヨニー…」
「………そ、その昨日は大変失礼なことを…」
と謝罪して出していたドレスに気付いた。
「お嬢様それは…」
「今日着ようと思って。一度の夜会で着たものだけど…違うものを着て行くわ」
こうなったらとことん抗って少しでも違う断罪にしてみせる!!
ヨニーは
「………僕もパーティーには武器をこっそり潜ませます。何が起こるかわかりませんから。お嬢様のことを守らないと…」
「ヨニー…」
そんなことを言われたらドキドキしてきた。
初めて意識してヨニーを見る。ヨニーも照れながら私を見て自然に近づいた。
ヨニーの胸に少し寄りかかるとヨニーが少し驚いて…でもそのまま私を優しく抱きしめたので私もヨニーの背中に手を回してしまった。
どちらともなくドキドキと鼓動がする。恥ずかしくて堪らない。
少し強めにヨニーが力を入れたのが判る。
「……お嬢様…心配しないで…きっと…守ります」
「ヨニー…きっとよ?」
「約束しますよ…お嬢様!」
力がまた強くなり離れ難くなる。
ヨニーが少し私を離し至近距離で見つめ合いドキドキした。婚約者以外の男性に私は今ときめいている!?
もう王子のことはほとんどなんとも思ってない。ヨニーは小動物みたいに可愛らしい顔をしている。目が円だし唇は薄く笑うと可愛い。茶髪に緑の瞳をしている。私はチュっとヨニーの可愛い鼻の頭にキスして
「そろそろ時間だわ。行きましょう?」
と言うと真っ赤になったヨニーは
「そ、そそそそそうですね!も、もう時間です!行きましょう!!」
と慌てながら扉を開け先導した。うふふ、耳まで真っ赤で可愛らしい。
*
卒業式はいつものように行われた。祝辞を述べ王子に睨まれ一旦パーティーの準備の為に家に帰り…私は目立たないドレスを着て胸を出来るだけ隠した。
正装したヨニーと一緒に馬車に乗り込んだ。いよいよだ。何が起こる?私は…断罪されないよう着いたらまずカルロッタ様の所に走った!
カルロッタ様はドレスを着て教室にいた。
「カルロッタ様!!」
ビクリと彼女がこちらを向く。
カルロッタ様はドレスが金で碧の宝石のついたペンダントを付けて思い切り王子に貰ったものと判るものだ。包帯は痛々しく巻かれてある。
髪は綺麗なクリーム色に薄桃の瞳をしており守ってやりたくなる美少女だ。
「どうしたのです!?アンネット様…私に何か…」
と怯えたので私は
「卒業おめでとうございます!カルロッタ様!そしてごめんなさい!!私今までのことを謝ります!!許してくれとは言いませんがどうぞ私を殴ってください!」
と言うと驚いてカルロッタ様が私を見る。
「アンネット様!?い、一体どうして?私が侯爵家のご令嬢に手を挙げるなど!」
と警戒された。私を殴ったと噂が立つのも良くないか。
私はこれから起こることを彼女に話し巻き戻りのことも伝えてみた。
「そ、そんな!嘘でしょう!?ずっと今日に巻き戻っているなんて…信じられません!」
「アロルド王子は事前に貴方に何か今日の事を行った?」
「あ、あの…アンネット様とは必ず婚約破棄するとは何度か申しておりました」
「それが今日なのよ!彼はきっと待ちわびてるわ。そしてもうすぐ貴方を迎えに来る!出来れば止めて欲しい。王子を止めることが出来るのは貴方だけ!」
「その巻戻りの犯人は…どこからかアンネット様が断罪されるのを見ているというのですね?」
「そうよ…。信じちゃくれないかもしれないけど…」
「……………いえ、私こんな必死なアンネット様を初めて見ました!王子に気がないなんて言い出すのもいつもとおかしい!…あ、失礼しました。…判りました。何とか王子を説得してみますわ」
「ありがとう!カルロッタ様!このお礼はきっとしたいけど犯人を見つけたいの…また巻き戻ってしまうと貴方は忘れてしまう…」
「…お嬢様、王子が向こうから歩いてきました!!」
と戸口で見張っていたヨニーが声をかけて大急ぎで教室を出るとこちらに気付いた王子が
「おい!そこで何をしている!?まさかカルロッタに何かしたのではないか!?」
「いいえ!しておりません!今までのことを謝罪しておりました!!」
「本当かどうか判らないな!」
とめっちゃ睨まれた。
そこへカルロッタ様が
「王子本当です!私に謝罪してくれましたの!私アンネット様とお友達になりましたのよ!本当です!お茶会にも呼ばれて…」
「カルロッタ騙されるな!こいつは悪女だ!!お前を馬鹿にしているんだ!調べたのだ!こいつが手を回して君に怪我をさせたと!今日は婚約破棄する為に準備してきた!皆の前でこの女を断罪し婚約破棄してやる!」
と王子は言う。
もうされたようなものじゃない。
「アロルド様!本当にごめんなさい。もちろん婚約破棄はお受けします!でも皆の前ではやめてくださらないでしょうか?明日でも直ぐに今でも!」
「皆の前で恥をかくのが辛いと見えるぞ!アンネット!見苦しい奴め!!」
「アロルド様!辞めて!事情があるのです!」
とカルロッタ様は巻き戻りのことを話した。
王子は信用できないようでまだ睨んでいる。脳が固まっている。
「信じられぬ。嘘だ!この女は断罪されたくなくそのようなことを言っているんだ!」
「でもカルロッタ様を迎えに今いらしたんでしょ?私では無く。私も本当は今日着てくるはずだった貴方様の瞳色のドレスは着てきませんでした!犯人に断罪させる場面を見せたくないのです!」
「いもしない、犯人にか?演技が上手いな!アンネット!」
ヨニーはついに前に出た。
「本当です!僕も一緒に巻き戻っています!!今日きっと断罪しなければ何かが起こります!!念のため警備を強めることをお勧めします!」
とヨニーが言う。
「できぬ!お前たちを信用などしない!」
「では、私が出席するのをやめます。ここでアンネット様とヨニーさんとお話していますわ!そうしたら断罪など起こりませんもの」
とカルロッタ様が言ってくれた!
「な、何でだ!カルロッタ!自分を虐めたものを許すなど!心が広すぎるだろう!こいつは仕置きが必要だ!お家取り潰しに国外追放に娼館送りに厳しい修道院送りの刑に決まっている!」
と言う。
「そのどれもを言い渡されましたが結局朝が来ると戻ってしまいます」
「そんなに言うなら私もここにいよう。何が起こるか見届けてやろう?」
と椅子にドカっと座る。
こうして私たちは何かを待つことにした。
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