番外3 シスコン気味の兄達
俺の妹は、人が良すぎるところがある。あれだけ幼馴染の
他人を信じることは悪いことではない、とは思うけれどもその一方で、誰でも彼でも信じるのは愚かなことだと、思っていた。妹には忠告をしていたものの、妹からすれば友達を悪く言う兄には好意を持てないようで、暫く俺は敢えて見守ることしか出来なかった。
南部の性格が悪いことは、妹から紹介された瞬間に理解した。ああ、コイツは所謂ぶりっ子とかいうヤツだ、と。見た目は優し気で愛くるしい容姿だが、実際には顔だけの女の子だと思った。可愛い女の子を演じているだけの偽善者。
最初は単に、俺を取り込もうとしたのかもしれない。俺に媚び諂う様子を見せていた
妹が俺と
その頃には既に
それでも
小学生の頃からそういう嘘を平気で吐く
頭の出来の良い俺が、あんなお花畑の頭の中身で、自己中な女を追い詰めることが出来ないなんて…。それだけ
俺は妹を大切に思うし守りたいけど、肝心の妹が
小学生の時のクラスでの発表会で、クラスでやる劇の主役を巡り、表向きは
ところがその直ぐ後に、佐々木兄妹が転校して来たことを機に、俺達兄妹の方へと風向きが変わって来た。妹と仲良くなった佐々木・妹が、華奈未の味方をする理由は知っているが、俺と親友になった佐々木・兄までが、何故か華奈未の味方に付いてくれたのだ。
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「俺の妹は人見知りが激しいから、俺がしっかりと見守ってやる必要が、あるんだよ。」
そう語る柚弦は、妹を心配する優しい兄だった。俺も妹には色々と思うところがあり、常に心配している状態だ。誰にでも優しくて穏やかな性格で、時々突っ走るところがあるのが
何時の間にか柚弦は、華奈未と知り合っていた。仲良く話す2人を初めて見た時、俺は置いて行かれたような気分になる。何となく俺よりも、華奈未を理解している柚弦を見て。実兄の俺には相談が出来ないことも、柚弦には相談している華奈未を知り。何となく…華奈未を、柚弦に盗られたような気がして……。
その後に妹の親友が偶々、柚弦の妹だったと知らされた時には、そういう繋がりなのかとホッとした。小学生で既に完璧な柚弦に、妹が盗られた俺の存在は何だったのかと、自信をなくしかけていたんだよ。あの時は血の繋がりが切れる訳もないのに、何故そういうことを考えたのか分からずに…。しかし今ならば、どういう意味なのかを理解出来るよ。
あれは恋愛的に盗られるのだと、思ったのだろうな…。昔の俺は恋愛なんて知らないし、実は今も恋をしていない。それぐらいまだ恋には興味がないし、あの頃はそれ以上に恋か家族愛なのか、その違いが全く理解出来なくて、同様の物だと思っていた節がある。恋愛感情は別だということぐらいは、今は理解しているつもりだ。それでもまだ恋愛の経験はないので、恋心なのかそうでないのかは判別がつかず、また恋がどういう感情なのかは、未だよく知らない俺。
最近になって、柚弦が俺の妹を「華奈」と呼ぶようになった。何時の間に、そう呼び合う仲になったんだ…。
華奈未を大切に想う柚弦が言い出した、
兄としては不本意だったが、華奈未が本気で嫌うような行いを、柚弦が仕掛ける訳もないので、俺は柚弦に協力する道を選ぶことにした。……ふん。今回だけは華奈未の為にも、お前に協力してやることにするよ…。
こうして南部を嵌める準備が、着々と進められて行く。柚弦は罠を幾つも仕掛けていて、中々にエグイ仕返しを考えていた。俺は
……うわあ。
先ずは
だからと言って…柚弦が良いとは、俺は絶対に…言ってないぞ。芝居中の華奈未と柚弦が、本物の恋人同士に見えた時には、流石に俺も額に皺を寄せていたようだ。特にあのシーンは、柚弦が華奈未の腰を引き寄せたシーンは、台本に書いてないだろっ!……おい、柚弦。勝手に本番で、アドリブを入れるなっ!…俺の妹に、必要以上にベタベタするんじゃない!
俺は嫉妬心を丸出しにして、舞台袖でイライラしていたようで、裏方に居た生徒達から苦笑されていたらしい。そんな中で
俺が恋を知るのは、まだまだ先になるだろう。そして我が妹も、恋を知るには早すぎる。今はまだ兄妹で仲良くしていたい。今しかそういう機会は、ないのだから。
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番外編3作目となります。次は、この人が語ります。
主人公お兄ちゃん視点となりました。本編では影の薄い兄ですが、妹のことは忙しい両親に代わり、溺愛しています。咲歩子のことはずっと危険視していたけど、妹が仲良くしていた為、反対出来なかったようですね。
また主人公同様に恋愛には疎いですが、柚弦の華奈未に対する気持ちには、いち早く気付いていて…。身内の勘でしょうか…。
※本編は既に完結しています。残すは、番外編のみとなります。この作品は、残り2回ほどで完全に終了となる予定です。
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