第2部 断罪をされる人達
「そこまで、です!…そこのお
特段、大声を出したつもりはなかったけれど、思いがけず響いてしまったようである。丁度、誰もお喋りしていなかった時を狙ったから、そうなってしまったのであろう。アネモネ公爵令嬢は、今のセリフが私が放った言葉だと、直ぐに気付いた様子で、「何、あんたが仕切っているんですの?」と、今にもそう言いたげな顔をしていた。……はい、はい。貴方の取り巻きの私が仕切って、悪かったですね~。
そして王子殿下からも、ギロリと睨まれてしまう。「お前…誰だ?…ああ、そう言えば、普段からアネモネの後ろに居る取り巻きに、1人だけ目立たない奴がいたよな?…それって、お前だったのか…。」と、言われているように感じた私は、別に被害妄想が酷い訳ではないですが…。まあ単に、「お前みたいなモブが、王族の俺に命令するな。」という、気持ちなのかもしれない…。
残り1人のエリザからの視線も、まるで可哀そうな人でも見るような、憐みを感じる視線である。要するに彼女から見れば、突然3人の言動に口を挟んだ私は、空気を読めない痛い人なのだろうな…。まあ、私からすれば、エリザこそが空気を読まない痛い人だと、思っていたけれどね…。だって、今回こうなっているのだって、エリザが切っ掛けとなっているんだよね、間違いなく…。
「先ず、王子殿下にお伝えしたいことがございます。王子殿下は政略的なものとは言え、婚約者がありながら他の女性と浮気をされました。真実の愛だと仰られておられますが、本当に真実の愛ならば、王子殿下としての地位を失くされても、そう仰れますよね?…国王陛下から王子殿下にと、お手紙をお預かりしております。どうか、どちらかをお選びくださいませ。第一王子の地位をお取りになられるか、それとも…エリザ男爵令嬢の手をお取りになられるか…。」
そう私は王子殿下に向けて発すると、国王陛下から預かっていた手紙を、第一王子であるライオット殿下に、私は手渡した。私は手紙の封筒の裏側を、王子殿下の方に向けると、
私は手紙の中身を見せてもらっているから、何が書かれているのかを、よ~く理解していた。「昔からバカ息子だとは思っていたが、お前は正真正銘のバカ息子だったな。(中略)…という訳で、例えお前がアネモネを選んでも、王位はライオットには継がせない。もう既にお前は、失敗したんだよ。これ以上は、見逃してやれないからな。父より」と書かれてあるのだった。国王陛下も、
王族の封蝋に、国王陛下の文字で書かれた文章は、流石に王子殿下でも私に文句を言えないようである。どちらにしろ王位を継承出来ないということは、お飾りの王子となるのか、それとも王位を放棄し貴族の爵位を受け取るか、後は…庶民にまで堕ちるのか…という内容も、書いてあったかな…。
お飾りの王子ならば、国王陛下のお気持ち次第もあるだろう。貴族の爵位を受け取るならば、アネモネと結婚することになるだろう。そして最後の庶民になるということは、エリザを選んだ時…なのだろう。今のエリザでは、どちらにしても貴族の奥方としての仕事は、出来ないだろうからね。流石、国王陛下だわ。よく人柄を観察されていらっしゃる。
「…エ、エリザ……。私が王位を放棄して廃爵となっても、私と共に…居てくれるよな?…エリザは、私を見捨てないよな?」
「………えっ?!…………」
「次はアネモネ公爵令嬢に、お伝えしたいことがございます。王子殿下が浮気されたこと自体は、全面的に王子殿下がお悪いとは、国王陛下もご同情されておられます。しかしご令嬢は自ら、エリザ嬢に手は出されませんでしたけれども、取り巻きのご令嬢方が手を出されることには、黙認をされておられました。これに関しては、王子殿下が不義をされたことが原因とは、国王陛下も理解すると同時に、残念にお思いです。王子殿下が心を入れ替え、アネモネ様を選ばれた時には、王子殿下と共に新たな爵位を受け取られる筈でした。アネモネ様には特に厳罰などはございませんが、アネモネ様も一から礼儀を習い直せ、という陛下からのご命令です。」
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今度はアネモネにそう発言し、これまた陛下からの手紙を手渡した。彼女もまだ反省はしておらず、また私へ文句を言いたげではあったが、陛下からの手紙だと手渡せば…その途端に、ガタガタと手を震わせた。いや、手だけではなく身体も震えているようだ。流石に国王陛下からの手紙は、恐怖なのね…。彼女も手紙を開封し読み進めるにつれ、ドンドンと顔色が青になっていく。これも私は内容を知っており、やっぱりそうなるよね…と同情する。
アネモネは礼儀作法は素晴らしいが、時々傲慢のところが見られた。元々この婚約は、幼い頃アネモネがライオット殿下に一目惚れし、王子殿下との婚約を望み結ばれたものだ。陛下達も、ライオット殿下の性格を問題視しており、アネモネの身分も礼儀も的確と思われた。しかしアネモネは、ライオット殿下の意思を汲み取れずに、独り相撲で満足していた。その結果が、最悪な幕引きとなったのだ。
「最後にエリザ。貴方は、王子殿下を惑わせた悪女という烙印が押されました。陛下からの打診では…1つ目、ライオット殿下と結婚し庶民になる。2つ目、修道院に入り一生を終える。3つ目、国外追放の厳罰を受ける。…以上、どれか1つをお選びください。」
「…えっ!?……どういうことですか?…私、元々…ライオット様と結婚する気は、ないですけど?!」
「ええっ!?…エ、エリザ、どうして……」
「…ライオット殿下、今は…お黙りください。では、修道院か国外追放かをお選びください。」
「…えっ……私、何もしていないのに……。」
「何もされていないと仰いますが、果たして本当にそうでしょうか?…アネモネ様が、ご自分の取り巻きのご令嬢にご忠告されないことも、貴族の礼儀として問われますのに、この国の貴族の中で一番身分が低い貴方が、何も問われないと?」
「王立学園では、生徒全員が平等な筈よ!」
「まさかそれで何をされても良い…と仰る訳では、ございませんよね?…王立学園は表向きにそう掲げているだけで、教師が生徒を指導しやすくするのが、本来の目的なのですわ。教師の身分が低い場合、身分が高い生徒が試験免除や単位を、要求することもありますの。あれは、その為のカモフラージュですわ。生徒全員が平等という訳では、決してありませんのよ。身分がなくならない以上、教育を平等に教え、また不平等にならない扱いをする、というだけのものです。生徒達は
「「「………」」」
殿下が今の地位を失うかもしれない…と判明した途端、エリザは結婚する気がなくなったようで、ライオット殿下が慌てて真意を問うて来た。私の話の途中なので、邪魔だとハッキリ言って遣る。私の形相に恐れを
私の説明に、アネモネもライオット殿下も理解したのに、一番理解しなければならないエリザが、理解出来ない。「イチャイチャが駄目ならば、そう注意するば済むわよ。」と呟いていた。イチャイチャ=禁止、と理解しただけ…?
「貴方にも分かりやすくご説明します。社会に出る前に、礼儀を自然に学ぶ場が王立学園です。他の令嬢の振る舞いを見本とし、貴方のように礼儀作法が必要な人も、見よう見まねで学ぶ場なのですよ。いきなり社交場で失敗するよりは、学園で失敗するのならば…見逃してあげられます、ということですわ。しかし、エリザ。貴方の場合は、その見逃す範疇を超えましたのよ。つまり、陛下のお怒りに触れてしまったのですわね。自業自得でしてよ。」
「………」
仕方がありませんので、私が詳しく教えて差し上げましょう。今度は理解出来たようで、エリザの顔色が青くなるのを通り越して、土色になる。漸く、理解してくれたようだ。しかし、既に陛下の指示が出た後なので、後悔しても…もう遅いよ。
「……レギラーナ。どうして…貴方が、陛下のお手紙を預かられておられましたの?…どうして貴方にこのような重要事項が、
レギラーナとは、今の私の名だ。流石は、勉強も優秀であるアネモネ。その他大勢の代表として、この疑問を投げ掛けて来た。子爵家の令嬢である私が、どうやって陛下に取り入ったのかを、不思議に思うのは仕方がないだろう。
だけど私は、今は正直に話すつもりは、毛頭ない。さてと…どこをどこまで、どういう風に誤魔化そうかなあ…。
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愈々、各々の断罪が始まりますが、お決まりの断罪シーンでは、ないですね。
取り巻きによる断罪が、本格的に始まりました。何故か、王子・ヒロイン、そして悪役令嬢までもが断罪されることに…?
子爵令嬢が物申す…とは、3人も想像していなかったようです。しかし彼女だけでは限界があるので、国王陛下の直筆の手紙が3人を追い詰めます。(※エリザは手紙を受け取っていない。)
漸く本来の主人公の名前が出て来たけど、何か隠していそうで…。
※読んでいただき、ありがとうございます。他の作品より優先して、早めに仕上げたいと思います。
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