第26話 最後のセット

 試合は大接戦となった。

 花南はあのあとも獣でとめタイミングに合わせて無理やり元に戻すことで桃花ちゃんの動きに合わせることができてきた。だがそれでも桃花ちゃんは一枚上だ。何度かは止められず点が入る。それに対してこちらの攻めは攻めれば攻めるほど桃花ちゃんに動きがよまれてきてなかなか入らなくなってきた。

 それに花南に与える負担は半端なく、数回の獣のonとoffをしたことで動きが鈍くなり獣から戻ることがきつい。


 第4クォーターも目前。限界が来ている花南を下げることも考えたが本人が拒否をしてきた。俺からしてもここまで隠さず作を練ったことだしここで負けれて終わるわけにはいかない。それに、最後は神奈斗が入ってくる。そうなれば確実に止めることができない。一本差で逆転となれば桃花ちゃんの獣がある。勝つためには追いつけない点差にするしかないってことだ。


「花南無理するなよ」

「大丈夫。足はまだもつ。でも獣になれば止まらないかもしれない」

 花南が獣を使っても体力以外でもっているのかというと単純に今回はふたが少ないからだ。なるべく獣はタイミングに合わせた時だけの限定的なものだから調整もしっかりとしている。だが、体力はもう限界に近い。無理やり元に戻すことは相当きつい。

「最後がんばりますか」

「最後は東郷、唯、花南、悠斗、大斗でいく」

 高さをとるために身長のある二人。神奈斗と桃花ちゃんを止めるための唯の復活。あとは俺がゲームを作れってことか。なんやかんや前半出てない分重要の時に俺が一番きついんか。面白い。


「お兄ちゃん。私ゆうにとめるから二人よろしく」

「お前もう切れたのか」

「もちろん。そんな長く続くわけない。あの揺さぶりとかつらかった」

「気をつけろよ。あの時感じたものを悠斗が無意識でも」

「多分まだ無理だと思う。でも警戒はしておく」

 

 最後のクォーターが始まった。いきなり俺に桃花ちゃんがマークか。

「もうみんな私との試合で限界でしょ。ゆうにいを封じれば連携が崩れていく。ここまでいろいろと私の作を壊されたし今度は私が壊す」

 最後の最後に司令塔をつぶしにきたか。

「俺でいいんか?あっちの二人暴れるぞ」

「うーんお兄ちゃんなら勝てると思うよ。花南姉限界だし。もう片方の子はまだ本調子でないっぽいし」

 さすがずっと付きまとわれていたこともある。


「唯よこせ」

「いかせない」

 神奈斗対唯は不利面が多すぎる。とはいえ桃花ちゃんから外れてもすぐにコースをふさがれる。

「唯ちゃん私に」

「はい!」

 そこに機転をきかせ花南がとりにいった。

「いかせん」

 しかし、神奈斗がパスコースをふさぐ。だが、それならゴールに切り抜ければ。

「大斗さん」

 何かを察したのかマークされて少し無茶があるが一番もらえる可能性がある

大斗に円状でパスをした。

「ナイスパスだ!おら!」

「もらった!!」

 さらに神奈斗がゴール下に走り大斗がシュートをする前に追いついた。

「っち」

 手からボールが離れる直前だったためさらに後ろにパスができない。

「いっくよ!」

 神奈斗がはじいたところは俺と桃花ちゃんがいるところ。

「!。まずい。お前ら戻れ」

 さっきの集中モードとは違うがものすごい圧をかんじた。つまりもう一つの力を開放している。獣のスピードは俺には負えない。この序盤に使ってくるなんて予想してなかった。

「なーんちゃって」

 ボールがとられ着地したタイミングで冷静に遠距離パスをし、ゴール下にいる味方にボールが渡った。

「ナイスシュートです」

 フリーとなりそのままゴールが入った。

「急すぎてびっくりしたよ。ナイスパス」

 だがおかしい。どういうことだ。あの時桃花ちゃんは完全に獣に入っていた。それなのになぜ冷静にパスを回している。ま、まさか。

「解除したのか?」

「うん。あの作戦すごくいいね。私のやつ一発撃ったら終わるしこうやって使えば長く使えるしいいものもらったありがとう」

 獣の解除。方法は必ずしも無理やりってことではない。むしろ桃花ちゃんはもともと制御もできている。一つのプレイだけにいれるなら花南よりも楽にできると思う。だが、この一瞬でできるのだろうか。


「お兄ちゃん。桃花ちゃんはやっぱり私が」

「思考勝負を仕掛けてきたってことは多分限界に来てる。頭使うなら俺のほうがいいろ」

「わかった」

 残り一本の差。これを死守して勝利をつかみとる

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MixtureBasketball! 蓮蠱 @rusiruhu

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