第23話 目覚めた力

 第一クォーター終盤なかなかの接戦となっている神奈斗たちとの試合。俺は後半には出してもらえる雰囲気がある。今は全体をみて作を練ろって感じだ。それはわかってはいるが、それでも厳しいのは実感している。早くでて流れを変えないとと思ってしまっている。

 花南の作戦は確実に二人の動きを止めている。だから今は追いつめれているって感じだ。神奈斗と桃花ちゃんが慣れ、動き出せば点差が離れるのは確実。いくら二人以外のところで点を狙えるとはいえ、止めることができなくなれば勝てなくなるのは明らかだ。どうにか俺がでるまでは試合をつめていてほしいものだ。


 終盤しかけるのは大斗。神奈斗に攻めるということは、勝ちに行くというよりは新たなる戦法をためすということだろう。こちらはぎりぎり作を作り続け慣れれば捨てていき新しいものを。俺がでるまではそれで十分だ。

「やばいな。お前ら。練習試合でまさかあれになろうとしているとは思ってなかったぜ」

「あ!どういうことだ」

 大斗と神奈斗が何か話しているようだ。挑発というよりは何かを教えている感じだ。

「すぐにわかるさ」

 神奈斗が「どうぞに抜いてください」と言わんばかりに足の力を抜いた。集中力を切らしているようだ。

「なめんなボケが!」

 大斗はそのままゴールに走り決めた。

「おまえどういうことだ!」

 これはこれで少しまずいな。大斗が熱くなりだした。夏奈というストッパーがいないと多分このままミスをし始めるだろう。

「そうあつくなんなよ。今のはどちらにせよ止めれてない。無駄なことをしなかっただけだ」

 それはそれで珍しい。あいつが無理と判断するとは。

「大斗君。点を取るなら今なのかも」

「どうした花南」

「うまく表現できないけど桃花ちゃんの動きがにぶい。何かの予兆なのかもしれないけど元に戻る前に攻めるから。ボール頂戴」

「わかった」

 桃花ちゃんをみるとただ突っ立ている感じだ。何かを観察しているというのが正しいのかもしれない。だが、それならベンチに入れるべきだ。それなのにコートに入っている。嫌な予感がする。

 

 ここから大斗と花南のうまい連携が点数をどんどん入れていった。神奈斗は攻めては来ているが桃花ちゃんがいい動きをしない分花南が止めに入れ、点数は入れさせなかった。そして点差を放していく。

 第一クォーターは26-18でこちらのリード。桃花ちゃんが何もしないとはいえ点差が離せたのはありがたいことだ。


「これからどうする?」

「桃花ちゃんがいつ動くかわからないから何も言えないけどまずは私と唯ちゃんと大斗くんを攻め中心に。外でうてるな犬山先輩にいれてもらいます。あとは東郷先輩を入れて高さを取りに行きます。蓮華は桃花ちゃんが動いたらまたお願い」

「わかりました」

「外はまかせておけ」

 思ったより犬山先輩とうまくいってそうだ。今の花南は冷静だし犬山先輩が起こる原因である獣の力に準ずることも起こっていないからか。

「おそらく神奈斗が俺にいったこと。それが起こるとまずいんだろう。そしてそのトリガーがあいつの妹ってことか」

「お兄ちゃんもあとからお願い。多分前半で私の動きはよまれるとおもう」

「わかった」

 今の花南はどこか安心してみてられる。こいつなら大丈夫と思える。


第二クォーターが始まった。

「おいおい。なんだ」

 第二クォーター今度は神奈斗と桃花ちゃんがベンチにいる。こちらとしては一気に点差を話すことのできるチャンスではある。だが、嫌な予感しかしない。

「多分後半から何をするかわからないので今点差を離していきましょう。特に医務山先輩の道を作り三点ずつでいきましょう」

「まかせておけ。久しぶりだが外さない」

 コートの中も抜けたからと言って警戒を抜けたわけではなくて安心した。むしろ警戒心はより強くなってそうだ。

「悠斗。わかっているな」

 監督が俺に声をかけてきた。

「もちろんです」

 二人が再び導入するのであれば俺が入ってくる頃と同タイミング。つまり、俺のゲームメイクが勝負を決める可能性がでかい。これは前半休んだこともあるし責任重大だ。


「犬山先輩」

 花南がわざと相手をひきつけるようなドリブル裁きを見せている。それに合わせて犬山先輩がうまくフリーな状況を作る。そのまま犬山先輩がスリーを決める。

「ナイスパス」

「ナイスシュートです」

 この二人って練習中はコミュニケーション全く取れない関係なのに試合になると結構行きがあってる。試合まであの雰囲気をするわけもないだろうが、それよりも互いに実力を信じているようだ。

「くそ取り返すぞ」

 相手のボール。パスをした瞬間に唯がマークにつく。

「っくそ!」

 相手も唯のマークにイラついているようだ。唯はうまくパスコースをしめつつも抜かせないよう立ち回っている。

「よこせ!」

「もらった!」

 うまく抜けたパスコースに相手がパスを出す。しかし、そこには大斗が待ち構えている。

「ください」

「唯!」

 マークをした相手と少し隙間を開けパスをもらう。そしてそのままゴールを決めた。


 やはり神奈斗のチームは神奈斗と桃花ちゃんが抜けると差がつくりやすい。逆を言えば、あの二人だけで五人分を相手にできるってのがやばいんだけどな。

 その二人は今何やってるんだろう。神奈斗はじっと試合をみている。だけど桃花ちゃんのほうは妙だ。ずっと下を向いている。それだけのはずなのになんだろうな。強い威圧を感じてしまう。


「犬山先輩」

 花南がまた犬山先輩にパスをだす。しかし今度は相手がしっかりマークについている。

「ぴったり」

 パスをしようとモーションに入ったボールを唯が分捕ってそのままゴールを決めた。なんだあの連携。あんなの初めてみたぜ。なんか二人だけは自慢げにしてるし。二人でさっき思い浮かんだやつって感じか。


 そのまま点差をつけ50-32で第二クォーターを終わった。点的には思ったより離せていない気もしない。それほど相手のも対応力はあるって感じか。


「よーし。これくらいなら余裕ですね。あとはまかせてください。あとは私が点とるので皆さんはなるべく三点を取らせないようにしてください。お兄ちゃんは終盤の追い込みまでは休憩で」

「あ?何言ってんだ桃・・・いやわったよ自由にしてろ」


「今桃花ちゃんが目を覚ました感じの素振り見せましたし多分ここからが本番ですね。まーこちらも兄妹タッグがいるのでいいですけど」

「こっからは二年中心で行く。まずは唯は体力の限界だな。第二クォーター終盤足引きずってたろ。犬山もスリーの制度が落ちている。さすがに久しぶりだししょうがないだろう。だからここからはいったん二年五人でいく」

 二年五人つまり、俺、花南、蓮華、純太、大斗。身長と守備のバランスを考えてもいい。だが、得点力は落ちるだろうな。それでも守りのほうを優先にするってことだろう。なら点は俺と花南が回すとするか。


 第三クォーターが開始した。案の定桃花ちゃんが入ってきた。だが、神奈斗はまだのようだな。

「蓮華と純太君で三人お願い。多分桃花ちゃんは私とお兄ちゃんで行かないとまずいかも」

「了解。なら大斗くんは外で」

「まかせておけ」

 開始早々。桃花ちゃんがボールを持った。

「いっくよ」

「止めるぞ」

「うん」

 すぐに桃花ちゃんに二人で着いた。

「やっぱり二人で来るよね。でも残念」

 二人でついているはずなのになんだよまじで。おびえるどころか威圧ですぎだろ。

 

 桃花ちゃんのドリブルがだんだんと早くなっていく。自然と目がボールを追ってしまっている。まずい。

 あれ、どこいった。

「お兄ちゃん」

 一瞬のすき。そこを桃花ちゃんは見逃さず。花南をさけるように俺の横を抜いた。

「いかせない」

 つかさず花南がカバーに入った。

 しかし、桃花ちゃんはさらに切り返し、花南が追いつく前に逆のほうから抜いていく。

「まだ!」

「っちょ」

 ダン!!

 切り返そうとした花南が俺に激突してきた。

「止めるぞ」

「残念」

 中に入っていった桃花ちゃんは人を集めた。まずいこのムーブ。

「先輩!」

 外がきれいにあいてしまった。そのままスリーポイントシュートが入った。

「あはは!!これだよ!さぁ始めよ。ここからが本番だよ」

 なんだ今の桃花ちゃん。

「まさにけ」

「お兄ちゃんあれは違う。獣みたいに本能でなく桃花ちゃん自身ですべて計算した結果。多分今までの時間集中力を高めていたんだと思う。獣が短時間しか使えない桃花ちゃんだし。多分本気になる集中力にするために相当時間がかかるんだと思う。」

 なんとかなくわかった。つまり今ここでこれたってことは。

 最後まであのバケモン相手に戦うわないといけないってことか



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