第22話 戦術戦
先に得点をとられた俺らのチームは次の攻撃態勢に入る。そして、今ボールを持っている唯と桃花ちゃんの一騎打ち。これが次の桃花ちゃんのプレイに大きく影響するのは確実だろう。
ハーフライン。二人は一子即発。周りから誰も寄せ付けず、一対一でやらせろと言わんばかりの交戦を全く動かないのに見せている。
「もらうね」
いっこうに動かない戦況の中動き出したのは桃花ちゃんだ。唯もすぐに切り返そうと試みるがそこをうまく疲れてしまう。
「圧はいいけど結局実力派ないんだね」
さっきのあおりのおかえしだろうか。この二人は仲良くできなそうだ。
「・・・」
とられたボールをおうきもない。戦意がいっきにきえている。
「唯ちゃんどうしたんだろう」
「敗北感を感じたってところだろ」
おそらくそれはありえない。もともと勝てない可能性のほうを想定しているはずだ。この二プレイだけで無理だと悟るには早すぎる。
守りの陣形を保てなくあっけなくさらに得点されてしまった。
「監督いつ俺らだすんですか?遅くなる前に手を打たないと」
「うーんそうだな。だがまだ早い」
「あの、お兄ちゃんだけでも」
花南も先ほどの余裕がなくなったようだ。練習試合とはいえってことだろうな。
「だから、見てろって」
それからもこっちが点を取っているとはいえ、点差が話される一方である。いまだに神奈斗と桃花ちゃんを止めれるやつはいない。唯はうまく時間稼ぎ程度にはなっているが、最後には抜かれる。そして、止められる。
そして第一クォーターが終わった。
「どうだ岡江?」
「十分持てばいいかと。次のクォーターで攻めるのならもうやります」
戦意がないように見えるのは変わらない。だがなんだ。
「そうだな。五分だけ時間をやる。今の全力をぶつけろ」
「え、どういうこと?」
花南も戸惑っている。というより、監督と唯以外は全く理解できていないだろう。
「中学時代から私は実力に合う体力はなかったんです。なので毎日トレーニングを貸させないとすぐに使い物にならなくなる。しばらく継続しなかったので、体力はがた落ち。継続してる時ですら体力がもたないから休憩を入れたりしてたけど、さすがにもどせていないので、今は圧だけであの人を止めようと。全力でやっても止めれるか微妙です。慣れてこられたら負けます。なので、残りの前半戦で追いつめておくので後半はこちらの兄妹に任せるとします」
これは本当に練習試合なのだろうか。あきらかに公式戦で使う手だ。今回使えば次回当たった時によまれてしまう。
「あの、だったら私出ていいですか?」
「おいおい、岡江のいったこと」
「はい、知ってます。でもそれは今やることでない。今は二人を倒して次回に圧をかけるため。唯ちゃんは本気になっていいです。ゲームメイクは私がやります」
つまり、蓮華と交代して桃花ちゃんと真っ向しかも得意分野で戦わせるためにゲームを作り直すということか。こいつが司令塔をやったためしがないからうまく以下はわからない。
「それで持つんですか?今回大事なのは強豪と試合したときに体力と実力で何が足りないかを見ることが大切だと思います。それに」
「知ってる。私が追いつめられればおそらく暴走する。相手が桃花ちゃんだから止められないくらいに。でもそれはそれでいい」
「わかったそれでいこう」
監督が受けいれた。
「あと純太君と犬山先輩交代でお願いします」
「どうしてだ?」
花南が犬山先輩のことを名指し、しかも同じコートで並べようとしている。
「あなたなら私を止めれるますよね」
「なるほどな。悠斗はまだ早いってことか。後半も戦うために温存。わかったそうしようだが、攻めも守りも正直弱くなるぞ。高さは勝てても機動力がなくなるぞ」
「安心してください。私がでるので」
花南もやる気のようだな。
第二クォーターが始まった。
「お、花南出てるじゃん」
「うん。面白いじゃん」
最初のボールは花南が持った。つかさず桃花ちゃんが仕掛けてくる。
「花南姉は私が」
「うん予想通り」
そんな桃花ちゃんに対し、花南は笑みを見せた。
「行ってらっしゃい」
「え、」
「了解です」
花南は軽く前にボールを投げた。桃花ちゃんにぎりぎり届かない程度に。
「逃げるの?」
「そうだね。だってチームプレイだし」
二人の試合の戦いの隙間を切り込んだのは唯だ。そして、そのままゴールを決める。
「これでいいんですよね」
さっきまで桃花ちゃんにマークされていたのは唯。そして、今は花南がマークされている。つまり、唯ちゃんのマークは別の人、十分ほぼ丸々化けものにマークされていた人間が普通の人のマークから逃げるのはたやすいことだ。
「なるほど」
桃花ちゃんも気づいたようだな。この試合は神奈斗をうまくマークしている大我&夏奈。そして、桃花を倒すために花南と唯が仕掛ける。つまり、二人を完全に封じる手だ
「だったら」
神奈斗はすぐにノーマークの人にパスを回した。もちろん止めに入るが、それは間に合わない。
「ひっさしぶりの試合だ。暴れてやる」
犬山先輩が止めに入った。
「さとやんにパス回してください」
さとやん。佐藤矢伊香(さとうやいか)。神奈斗のチームの一年。現状ノーマークになっている人の一人。
「よめてんだよその行動は」
相手がパスモーションに入った瞬間。犬山先輩が手を伸ばした。パスされた球は手にあたり外に出る。
「ナイスです先輩」
「お前これ狙っていたのか?」
「はい。先輩目はいいので。あとは私と唯ちゃんの連携で崩しつつです」
犬山先輩の目の良さ。そして即座に行動できる行動力を持っている。神奈斗や桃花ちゃんのような早い動きにはおいつけないにしろ。勢いが薄いところであれば判断できる可能性が高い。この動きは純太にはできない。花南は唯と二人で戦うことを考えて最善の人選をしたようだ。そこには自分が嫌う感情を含めていない。ただ、勝つための判断。これができるのは花南が冷静だからである。やはりこいつ獣を抑えだしてから思考すらも少し違う。
「これなら私の負担の減りますね。花南先輩すごいです」
「いや、これ通用するのは今だけだよ」
「桃花。二人相手に勝てるか?」
「余裕」
あっちの兄妹も作戦をねっているのか。今と同じ攻撃はもってここ数回だけそうだな。動きになれれば止められてくる。
今度は反撃。桃花ちゃんがドリブルをはじめる。
次は桃花ちゃんと花南の一騎打ち。唯はマークをつくわけではなくただ全体を見通している。
桃花ちゃんの切り返しにもしっかり反応をする花南。さっきの流れを考えると途途中で逃げる作ををとる。だがこんかいは違う。確実に花南をしとめようとしている。その証拠に二人の顔がまじだ。しょうじきこえー。かわいい顔が台無しだぜ。
勝てない!!
一騎打ちは一瞬にして終わった。
花南は動きを完ぺきにとらえていた。だが花南は勝てないと感じてしまった。そこで一瞬のスキが生まれたのだ。その一瞬を桃花ちゃんは見逃さない。そのすきを一気に切り抜け花南を抜いた。
「まずい」
唯もすぐにカバーに入ろうとするも入る間もなくそのままゴールを入れた。
「はぁはぁ。まずい」
あの一瞬だけでも花南は相当の疲労とためた。そして本当の自分との格差をしみじみ感じている。
「花南姉。遅いね」
膝をついた花南を見下すように見る桃花ちゃん。王者といってもいいだろう。
「まだまだ」
桃花ちゃんが練習で見せたプレイはほんの序の口ってことか。本気になればもっと早くなる花南ではおいつけない。
ここでタイムアウトをとった。このまますると点差が開くのは時間の問題だからだ。何か新しい作戦を練る必要がある。
「花南先輩。やっぱり一対一は避けたほうがよさそうですね」
ここで俺が出れば流れが変わると思う。それはコートにいる誰しもがわかっている。それでも俺を入れて流れを変えようとしていない。だから様子を見ることにする。このムードを崩すことが大きな問題だから。
「いや、次もやる。唯ちゃんは攻めのサポートと私の制御をお願い。それと大斗君」
「なんだ」
「神奈斗君をよろしく」
神奈斗は花南を抜いた桃花ちゃんより強い。それを大斗が抑えるとか無理がある。
「は、おまさっきのさくは」
「作戦変更。私桃花ちゃんに勝てないから神奈斗君で」
花南のことだから何か作があるのかもしれないが、リスクのほうが高い。今回使うパターンは次に使えなくなるかもしれない。このリスクを背負ったとしても花南は勝ちたいのだろうか。
「あいつそうとうやるんだろ」
「へぇー勝てないんだ」
夏奈のあおりが発動。というより花南はここまで予測してるんだろうな。
「あ!勝てるわぼけ」
さすが大斗。夏奈の言葉への反応が早い。
「じゃーよろしく私交代だから」
「逃げるんだ」
「うん。怖いし。適任者は私より蓮華さんだし」
「それでよろしく」
夏奈と蓮華の交代か。こいつら今から何すんだよまじで。
「じゃーよろしく大斗くん」
「了解」
試合再開早々。大斗にボールが渡った。そして自ら神奈斗のほうに入っていった。その時だった絶望の始まりは
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