第20話 光の感覚

 部活が終わった私とお兄ちゃん。それと発案者で後輩の岡江唯ちゃ純太君と蓮華もきてくれた。場所は唯ちゃんの聖地とも言っていいコートで放課後のバスケを始めた。

「まずは軽く流しましょうか」

「なら俺と唯。純太、蓮華、花南でやろうか」

「いえ、花南先輩一人で」

 さすがなハードモード。いや鬼モードだなー。四体一。さすがに獣動向でなくて手を抜いたらぼろ負けだろうな。

「っちょ。いや、獣の力抑えるためにはそれがいいが、花南はいいのか?」

「大丈夫。それくらい。勝つことよりも獣制御が優先。だったらそれくらいがいい」

 とはいえ、軽く流すという言葉が似合わなすぎー。

「っじゃやりますか」

 

 試合する前から気づいているけど余人でパスを回されたら結構まずい。でも勝ちたい!

「きたきたきー!!」


 試合が始まりそうそう。花南は暴走モードとなる。テンションが一気に上がった感じだ。

「おいおいまじか。いきなりって」

「あとは私たちは全力でやるだけです」

「パスを回すぞドリブルでは切り抜けない。あとはなるべく制御させれるよう積極的につめていくことを忘れないでくれ」

「了解悠斗。んじゃ。俺から」

 

 純太が話を無視して速攻をしかけた。


 バン!!!


「おいおいまじか」

 純太がシュートモーションに入った瞬間。もうすでにボールが手元から消えていた。

「やっば。じゃなくて純太パス回せつったろ!!」

「ごめんごめんどれくらい強いかみてみたいからよ」


 獣の暴走に関しては謎のことがある。それはプレイ以外ではおとなしいことだ。ボールが一度止まるとその時は息を整えているような呼吸をして突っ立っているだけ。プレイが始まれば猛攻。つまり、花南はこの休憩の時に制御することが一番のりそうとなる。


「今度は四人で止めましょう」

 がっちり四人でスリーポイントより内側に入った。抜くコースはほぼない。

「すー-はー-」

 花南が一息つくといきなりシュートモーションに入った。

「やっばその位置からいきなりシュートなんて。止めないと」

 それに合わせて蓮華が詰めに入った。

「バカ!」

 しかし花南のシュートモーションはただのフェイク。動きが完璧すぎる。つられ前に出た蓮華を利用し、間をすんなりと抜ける。

「悠斗先輩」

「わかってる純太は外警戒。俺と唯ちゃんでこのバケモンを止める」

「わ、わかった」

 今のシュートモーションだけでも暴走した花南のシュートの射程距離はハーフコートすべての可能性がうまれる。ただ抜きに来る可能性だけでなくなった。だから、外の陣形を蓮華と純太。そして、中に切り込むドリブルは、唯と悠斗が止まることなった。

「先輩。とはほぼ初陣形ですね」

「一つ試していいか。多分このままだと花南は元にもどれない。何かきっかけを作りたい」

「わかりました」

 優斗はゴールギリギリのラインまで下がった。そして、唯は花南がドリブルで仕掛けてくるルートをふさいでいる。縦の陣形。そして、花南が抜いたところでシュートコースには優斗がいる。

 外の二人がうまく機能しているおかげで花南はなかなか中に入ろうとはしない。ましてや外から打つという行動もとろうとしていない。

「うわー-!!」


「先輩このままでと花南先輩の頭がパンクする。これ以上の負荷は」

「いいんだこれで。いいか絶対にあいつに打たせるな」

「わかった」

 優斗は気づいている。花南の獣の力の本能の弱点のことを。


「倒す」

 花南のドリブルのペースが上がっていく。そしてドリブル一つ一つの音が大きくなっていく。

「いまだ」

 花南が勝負を仕掛けてくるのと同時に優斗が一気に花南を詰めに行く。

「お前ら下がってろ」

「わ、わかった」

 蓮華と純太は言われるがままゴール下に走る。優斗はたった一人で交戦。

「どけ」

 花南がだんだんとスピードを上げているが、一向に優斗を抜けない。

「う、うぅ」

「そろそろばて時だろ」


 これでは勝てない。獣の力。いや私自身の本当の弱点をお兄ちゃんは知っているから。本能のままに動く獣では私は勝てない。もしここを止められれば勝ち目はなくなる。

 でも今の私には見える。目の前が。見えるあの景色が。見える。勝つ方法が。これなら。


「見えた!!」

「!」 

 うなりをあげていた花南が一変。鋭い目は見開き。人を見下す笑みとは違い、目の前の敵を倒そうとする意志。そして、兄への経緯を強く感じる。

「ありがとうお兄ちゃん。これなら。・・・・う、」

 花南は一瞬だったが自分の意志で獣の力をおさえることができた。しかし時すでに遅し、おさえるだけで体力が尽きてしまったのだ。

「なん、で」 

 そして震えが止まらないのである。これは、優斗との脳内の争い。そして、揺さぶり戦を繰り返したからだ。そのできごとが花南にとっては一瞬の出来事として負担となる。

「っま抑え方はわかったろ」

「う、うん。でも一瞬みえた光、その部分に手を伸ばすような感覚。ちょっと本番でやるのはむずいかも」

「花南先輩やりましたね。あとは試合でこれができれば」

 膝をついた花南にかけるよる三人。こうして、花南の獣の力解決策は完全ではないものの抑えれれるようになったのであった。

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