第17話 悪夢

「花南パス!!」

 バスケの試合をしている。

「負けないよー」

 相手は神奈斗君と桃花ちゃん。なんでこうなったかあまり覚えてないけど二人との試合に集中しないと。

「ナイスボールお兄ちゃん」

「花南姉は私が止める!!」

 桃花ちゃんがすぐに守りに入ってきた。でも、なんか自然に動きがみえる。抜ける気しかしない。

「え!!」

 桃花ちゃんを簡単に抜くことが出来た。そしてそのままゴールに入れることが出来た。

「ナイスゴール」

「お兄ちゃんごめん」

「さっさとあれ使え」

 あれ。何言ってるんだろう神奈斗君。獣の力かな。でも神奈斗君はあの力を使わせないようにしていたから多分違う。なら、新技かな。とにかく警戒しておかないと。

「ふー」

 桃花ちゃんの雰囲気が違う。やっぱりこれって。

「だん!だん!」

 一つ一つのドリブルの強さがすごい。地味響きを感じる。こんな力強いドリブル初めてだ。

 距離があるはずなのに何か目の前にいるような感覚がする。これはまずい。

 目の前にいる桃花ちゃんはものすごい殺気に満ち溢れている。それは私を近寄らせないくらいの。

「ざーこ」

 目の前にいたはずの桃花ちゃんがいなくなった。

「花南後ろ!!」

「え、」

 後ろに振り向くともう目の前に桃花ちゃんがいた。

「遅すぎ」

 余計な一言をいい、そのままゴールにかけだす。私が反応した時にはもうゴールが入っていた。


「反応できなかった。ごめん」

「ナイスゴールだ」

 私が謝るとお兄ちゃんは私を素通りして桃花ちゃんのところいった。

「流石は俺の妹だわ」

「ほんとすげーわ花南ちゃんは」

 何言ってるの。花南は私その人はとうかちゃ。

 振り向き笑顔が見せてきた。その人の顔は桃花ちゃんじゃない。私になっている。

「お兄ちゃん」

「ん。どうしたの---ちゃん。俺をお兄ちゃんって言うなんて」

 名前をうまく聞き取れなかった。

「これが現実。普通のあなたは必要とされていないんだよ」

 偽物が私をかたるな。私が本物だ。

「一対一させて。次は勝つ」

 思い知らせればいい。やむおえないから怒りも爆発させる。

 あ、あれ。獣の力が発動しない。

「それは君の物じゃなくて私の物だから」

 偽物の私が目を光らせた。桃花ちゃんのしかないからはっきりしてないけどこの目の変化はまさしく獣。しかもこれが私の力だ。

「返せ。私の」

「もう君はいらないんだよね。邪魔だから変わろっか」 

「え、」

 目の前がだんだん暗くなってきた。その時思い出した。私は今までとは違う変な感覚を思い出した。あの時感覚がなくなったんだ。ジャーもしかして今目の前にいるのって。

「やだ。私はもう」

「いい顔。そういうの好き。安心して私なら負けないから」

 やだ。助けて誰か。暗い世界。あの怖い場所にはいきたくない!!お兄ちゃん助けて。


「お兄ちゃん!!!」

「花南大丈夫か!!」

 はぁはぁ。

 くらい物がみえなくなったと思ったら保健室にいた。

「ずっとうなされていたけど大丈夫?」

「う、うー」

 頭がものすごく痛い。

「ほんと大丈夫か?お前」

「あれ、なんで」

 まだ頭の整理ができていない。だからかな。自然と涙がでてきた。あとは、怖い感覚は強く残っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る