第15話 最悪の帰還

「お兄ちゃんボールちょうだい」

 もう本格的に混合バスケの練習が始めた。まだ人数はそろっていないけどお兄ちゃんも何名か心当たりがあるから声をかけてみるらしい。私としてはお兄ちゃんと出来ればだれとでもいいかな。

「花南」

 完璧なコースだ。さすがはお兄ちゃんだ。

「よし!」

 普段通り動けてる。もうあの時みたいな違和感ももうない。今日は大丈夫だ。

「調子よくなりましたねよかったです」

 夏奈ちゃんが声をかけてきてくれた。あの日の光景をまじかで見てる人だもんね。気を使わせちゃってる。

「あの日はごめんね。怖がらせちゃったよね」

「いえいえ。使いこなせば強くなりますよ。花南先輩ならきっとできます」

 いい後輩を持ったな私は。こんな上手に気を遣って話してくれるなんて。


「久しぶりだなみんな!!」

 え。今の声って確実に。けがをしていなくなったはず。

 一声だけで私の背筋を凍らせた。

「大斗。きたな。あそこでやってるのが混合だ」

 犬山大斗先輩。東郷先輩とは犬猿の仲にして最高のタッグだった。足のけがをきっかけに部を離れていた。まさかこの時期に帰ってくるなんて。

 それに混合の話をしている。

 最悪なことを考えつつもその未来にならいないことを深く願う。

「なるほど良い一年も入れたのか人選は?」

 その反応やっぱり。

「悠斗がほとんどだ。しっかり男女の連携面も考えいている」

「そっか悠斗か。それで、あれがいる理由は」

 あれ。確実に私の話だ。犬山先輩は怖いところもあるけど基本はみんなに優しくすごく頼られる先輩。実力も私ほどではないけど、スリーポイントだけを考えたら私よりもうまい。

 でも、私は好きになれない。実力があるのは認める。それでも、私に雑魚呼ばわりしてひどい厳しいトレーニングばかりさせていた。昨年けがをしてからはあまり部活に来なくなったがたまに来た時は私にまた大変なメニューをさせてきた。ここ最近はいなくなったし部活をやめたと思ってほっとしていたのに。

「悠斗と兄妹である。男にも対応できる入れない理由がないだろ」

 東郷先輩は私のことをよくわかっている。私とお兄ちゃんが組めば敵はなし。

「なるほどな。っまいいや。さっさと参加しますか」

 この人が来たらまた、私にひどいことをしてくるんだろうな。

この人が私をしごいているときはお兄ちゃんも何も言わないし。少し怖いな。

「悠斗お久。それに他の一年諸君は初めまして。犬山大斗。けがしてからは部活から離れて筋力トレーニングしていた。だから冬からはほとんど部活に来ていない。やっと医者からも許可下りたから戻ってきた。本調子じゃないからって混合だけになったことだし。勝ちに行くためにしっかりサポートしているから何でも聞いてくれ」

 そうやっていい人ぶって。本当は最低最悪な人なのにみんな騙されてる。

 あの人が入るってことはずっとでなくても外の攻めも少しは補強される。でもそれと同時に私は混合から排除される気がする。

「お兄ちゃん。私ランニングしてきていい?」

 今は距離を置きたい。少しだけでも。

「待て」

 犬山先輩が声をかけてきた。

「話は聞いている。おかしくなって人にけがさせたんだとな」

「それがなんなんですか。次はおさえるんでお気になさらず」

 この人と会話をするのは怖くもあるがイライラしてしまう。

「はぁ。結局何も変わらないのか。だったらご自由に」

 皮肉を言ったはずがうまく返されてしまった」

「どういうことですか!!」

「自分で考えろそれくらい」

 やっぱりそうだ。言いたいことだけ言ってこっちが聞けば自分で考えろ。

「ランニング行ってきます」

 犬山先輩の目を見ることすら嫌だ。なんで。せっかく気持ちを元に戻せてまた頑張れると思ったのに、よりにもよってあの人と。

「先輩私も行ってきていいですか?」

 唯ちゃんがお兄ちゃんと話してる。唯ちゃんもまだ本調子でないから体つくりのためにもいろんな運動をしている。

「わかった。いってこい」

「ただ走るのではブランクは治らない。ストレッチなどケアも忘れるなよ」

「は、はい」

 戸惑ってるよ。無理もないなさっきあんなひどいこと言ってた人が手のひら返ししてるんだもん。唯ちゃん大丈夫かな。

「先輩早くいきましょ」

 心配ないみたい。戸惑いはあったのにもう気にしていない。

 私はあの人が言うことを無意識にでも意識してしまうのに。

 結局後輩に気を遣わせぱなっしだ。これでいいのかな・・・

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