第13話 兄のいない夜
なんか今日このまま家に泊まることになった。お泊りするとは考えてなかったけど、もう暗いことだしまだ、お兄ちゃんと会うのは少し怖いから了承した。お兄ちゃんには神奈斗君が連絡をしておいてくれるらしい。
「花南姉ゲームしよ!!」
もう九時か。このあたりでいつもお兄ちゃんに宿題やったか聞かれるんだよなー。今日はお兄ちゃんいないし問題ないか。
「いいよ」
「ちょっと待った。その前に桃花ちゃんお兄ちゃんがお呼びだぞ」
「え?あの今は」
「声を聞かせてほしいって」
どうするべきなのだろうか。今お兄ちゃんにあうのが怖い。電話でも少し抵抗がある。
「…」
「わかった無理っぽいか。そう伝えるよ」
本当にこれでいいの?。お兄ちゃんに助けられっぱなし。なのにお兄ちゃんには自分の意見だけで拒否をする。これって逃げ。私はお兄ちゃんにすら逃げいてる。やだな。お兄ちゃんにはまっすぐ痛い。桃花ちゃんたちみたいに兄妹だからこそなんでも言える存在になりたい。
「まって。話から」
そのためにもお兄ちゃんだけは逃げないようにしないと。
「わかった。ほらよ」
神奈斗君から携帯を渡された。
「か、かわったよ」
「お前足速いなやっぱり。追いつけんかった」
「え?」
何言ってるだろう。普通、「心配かけやがって」とか「探したんだぞ」とか言われると思ったのに。いきなりそれを言うんだ。
「母さんにはしっかり話した。そのせいで、怒られたけど」
「ご、ごめん」
「なーに気にすんな。俺も少し悪かった」
「お兄ちゃんは私より獣のことわかってくれたのに私がそれを壊したんだよ。私こそごめん」
「神奈斗と桃花ちゃんに迷惑かけるなよ」
お兄ちゃんはもうさっきのことはなかったことにしようとしてくれている。考えすぎずお兄ちゃんに合わせてあげますか。
「もちろんだよ!お兄ちゃんも私いなくてさみしがらないでね」
「声聞けたからなもう大丈夫だろう」
もう、寂しくなってたんだ。よかった拒否しなくて。
「ありがとうお兄ちゃん」
何の前振りもないが自然と声に出ていた。
「急にどした?」
「いいから。もう切るよ」
「おう、おやすみ」
「おやすみなさい」
まったく。お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだから。あの一言が何だったのかくらい察してほしかったな。顔赤くしちゃったじゃん。でも、少しは安心できた。お兄ちゃん気にしているかもしれないけど私のこと見放してなくて。
「ありがとう神奈斗君」
「あいつと話して顔がよくなったな。それと。電話してる間に桃花寝たからベットに置いてきたよ」
そんな長く話したわけじゃないんだけど、寝るの早いな。
「そうなんだ」
「寝る場所は桃花の部屋だし気にしないで入ってくれ。あいつ一度寝たら当分起きないから」
「うん分かった。あの神奈斗君一つ聞いていい?」
話さないと決めていたけどどうしてもきになったことがある。桃花ちゃんの前ではもしかしたらと思ったら聞けずにいた。
「何でも聞いていいよ」
「その桃花ちゃんがあの力を使い始めたときって最初から自分でだった?」
もし初めから自分で制御できていたのなら私とは状況が違うから話は終わる。でも、もし初めは私のように暴走だとしたら克服したことを聞くことが出来る。
「獣の力か。あいつは君と違い、みえたときには活用できていたよ」
やっぱりそうなのか。桃花ちゃんの感情は負はなく正。正だったら制御とかそういうのいらないもんね。
「花南ちゃんは制御ができない。つまり、君の力をはるかに超えた力だと思う。あくまで予想だけど桃花が力の延長だとしたら君のは亜種。だからこそ制御が難しい」
亜種。つまり、今の私の力とは違った力。私の中に眠るもう一つの力が獣として動いているのか。なら獣を制御した時、戦法がさらに広がる。つまり、もっと強くなれる。
「なら、それを打開しないと」
「あまり焦らないほうがいい。かえって悪くなると思うから。それに獣の力は今の筋力を超えている。そのぶん負担がひどい。解消できるかはわからないけど、今俺らが気付いている弱点。それを克服すれば少しは近づけると思う。君のためにもやはり無条件で話すべきだと思えてきた。」
私の弱点。獣の力を教えるのを条件に教えてくれるといっていた。つまり私の弱点は勝敗を分けるくらいの致命傷。もし気づかれれば逆転にされるくらいに。気になる。それに獣に勝てない原因もそこにあると思う。
「いやいいよ。制御は私がする。しないといけないと思う」
それでも私は断った。
「そっか。わかった。なら俺らとの試合でもし異変を感じたら止めに入るよ」
「それだけはやめて。試合してるのなら私がどんなでも倒しに来て」
一番されたくないこと。してほしくないこと。もしこの話をすれば確実に二人と全力で試合ができないことがわかっていた。だけど。神奈斗君には気づかれていた。その時点でこの展開になるのはだいたいわかってしまった。
「いいのか?」
「同情されて勝っても面白くないからね」
「もう勝ったきでいるのか」
「もちろん。二人には負けない」
「やっぱり日本に来て正解だった。楽しみが増えている」
私もうれしい。私と似た力の人が現れてそれが勇気になった。制御できるという希望を感じれた。この二人には感謝しかない。
「ちょっと。バカにい。なにベットに置いてんの」
二階から桃花ちゃんの声が聞こえてきた。
「もう起きてきたか。さすがにこいつには効き目が弱いか」
「何の話?」
「あいつに睡眠を促した。二人で話したほうがいいと思ったからな」
「え、もしかして」
「兄貴歴十五年をなめるな。他人の妹とはいえ、話ずらいとかは察しがつくんだよ」
神奈斗君。お兄ちゃんのより察しがいいな。他人のはずなのに。お兄ちゃんなら何も考えず言ってくると思う。
「ありがとう」
「花南姉もグルだったんだ。ならいいや。この二人きりの写真悠兄に送っちゃお」
相当怒っている様子だ。無理もないよね。だけどの今から桃花ちゃんがやる行為は相当まずいことに発展するから止めないとまずい。
「おい待て桃花」
「桃花ちゃんそれはダメ」
抱き合ってないけど顔の近い状態の写真がお兄ちゃんにいったら神奈斗君が殺される。お兄ちゃん私に似て、他の男の人と近づくの絶対に許さないマンだから。私はお兄ちゃん以外の男の人にあまり興味ないからあまりそういうことは怒らないんだけどね。
「やーだ。二人が悪いんだからね」
私も共犯者扱いされてる。早く止めないと。
「おい花南ちゃん取り押さえろ。あいつ携帯の入力下手だから時間はあるぞ」
「わかった」
ふー。なんとか取り押さえることが出来た。桃花ちゃんが部屋に入り込んでよかった。逃げ道がなくなったし。
「あの、手錠取ってくれません?」
たまたま部屋にあったおもちゃの手錠を付けた。なんでこんなものがこの家にあるのかはなぜだけどこれならメールだってできない。
「お前が勝手に寝たのが悪いんだろ。ほら写真は完全消去したから」
「ひどいよ二人とも」
「ごめんね。でも、あれを送られたらひどいことになると思うから」
「むー。でもよかった。私が昼寝に入った間で少しいい顔になって」
お兄ちゃんと話すことが出来た。それに神奈斗君に相談することもできた。だから吹っ切れたのかもしれない。
「ごめんね心配かけて」
「いや、この程度どっかの逃走バカと比べたら」
あ、その言い方はまずいような。
「誰のことだろうね?」
あ、怒っている。笑顔がなんとなく怖い。
「っまいいや。とりま、そこ花南んちゃんが今日寝るとこだからあとはご自由に俺は寝る」
「あの神奈斗君」
「どした?」
「ありがとう」
「気にすんな。俺はただ万全な状態のお前らと戦いたいだけだ」
勝負では全力の相手と戦いたい。どことなくお兄ちゃんに似てるんだから。
「何の話?」
「バスケの話」
「それよりさ。早くこの手錠を」
「さーて私も明日学校だし寝ようかな」
「あ、あの手錠」
少し涙目になってきた。もう少し様子見ておこうかな。なんか妹に嫌がらせしたら見せてくれるかわいい顔みたいになってるし。
「花南姉お願いします」
土下座してきた。
「おやすみ。あ、一緒に寝るならどうぞ」
確実に二人用のベットだし。ベットの中なら二人でゆっくり話せそうだ。
「あのだから手錠」
「おもちゃのだし壊せばいいんじゃない?」
からかうのってこんな楽しいのか。神奈斗君が桃花ちゃんにちょっかい出すのが分かった気がする。この光景での桃花ちゃんがとてもかわいい。
「いやそれが、その。これ、おもちゃに見えたと思うけどどっきり道具で、鍵でないと開かないんですよね」
…何を言ってるんだろう桃花ちゃんは。そんなまさか。
「ほんと?」
「ガチです。お兄ちゃんをいじめようと思って買ったやつです。なので、鍵がないとなんですよ。前ならまだしも後ろにつけられると力が入らないといいますか」
ものすごく丁寧な口調になっている。でも、わたしこれ付けたとき鍵なんて。
「鍵どこにあるの?」
「え、これと一緒にあったでしょ?」
私が部屋に入って見つけたときは手錠しかなかったような気がする。
「諦めて寝よっか」
冷静に物事を言っているが心の中では相当焦っている。
「え、そ、その。花南姉嘘だよね」
「いや、ほんとだよ。ほら明日起きたら取れてるとかって」
あーどうしよう。おもちゃだと思って付けたけど鍵が必要なんて。ペンチとかで壊すのもありか。あーでも鎖取れて手錠が外せないのか。
「バカにい。さっさと部屋からでてったよね。ちょっと行ってくる」
「いいよ。私が悪いし神奈斗君のところに行ってくるから待ってて」
神奈斗君がどういう経緯でこうしたかとか気になるし。そもそもまだ神奈斗君が犯人と決まったわけじゃないよね。
「ありがとう」
全くこの家はシャアハウスと呼ばれてもおかしくないくらい扉があるからわかりずらい。神奈斗君の部屋はたしか奥のほうだったよね。
「神奈斗君起きてる?」
・・・・
全く反応がない。桃花ちゃんのためだもんね強行しよう。
「神奈斗君?」
「ん?おうわるいわるい。全く気付かなかった」
ヘッドホンで音楽を聴いてるようだ。
「鍵持ってない?」
「あーこれか。ほらよ」
あっさりと鍵を渡してきた。
「何で持ってるの?」
「いや、いつあいつが俺にあれ使ってきてもいいように事前に鍵だけをとっておいたのさ」
手錠持ってること気づかれてたね。どんまい桃花ちゃん。
「ありがとう。邪魔してごめんね」
「あ、そうだ。花南ちゃんに一つ伝え忘れたことあったわ」
「何?」
「もしもの話として聞いてくれ。獣の力は本来誰でもなることが出来る。ほらよくスポーツ選手がゾーンとか言ってるだろ。あれとほぼ同じ原理だし。ただ、体ができていないからこそ強くなりすぎて体を壊すことがある。だから入れるのはごく一部だけだ。入り方は人それぞれだが、桃花は極限にバスケを楽しんだ時にできる。花南ちゃんはおそらく妬みとかが強くなったらだ。つまり、さっき言っていた亜種というのは本来花南ちゃんが持つこととなる力の一種ってことだ」
ゾーンと似ている限界の力。体のほうが追い付いてないからゾーンではなく獣と表現している。それで、亜種の力は本来私が未来に身につく力の表れ。だいたい言ってることはさっきの話の時に理解できていた。
「それで、何を伝え忘れたの?」
「あくまで、勘違いかもしれないが、君の獣の力は本来出てくるわけがない力だと考える。出す才能はあることを前提に話すと。君は誰かが意図してその力を発動させた。と思った。もしそうなら、前言撤回。何があってもその力を使わないほうがいい。体を壊すどこから選手生命が途絶える大きなけがだってあり得るから」
誰かが意図して発動させた。そう言われたとき一人の自分つが浮かび上がってきた。だけど、ならなんで、あいつは私の力に気づいたっていうのだろう。それに発動させる感情は人それぞれ。データがないのに。
「そうなんだ。でも、これは勝手になったことだから。でも、壊れるかもしれないってのは自覚あるしもう少し気を付けるね」
「そうしてくれ」
扉を閉めてすぐうずくまってしまった。竜ケ崎。あいつのせいで、私の人生がすべてくるってしまった。私せいなのもわかっているでも、それでもこんな体にしたあいつを許せない。そう思う。怖い。妬みたいのに、それが強くなると一瞬だけでも意識が飛んでしまう。そんな私が大嫌いだ。
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