第10話 竜の猛攻

 今俺らの体育館に竜ケ崎が来ている。

「久しぶりだね。クイーンそれにジャック」

 こいつはトランプで強さを例えている。つまりあいつはキングってことだ。

「何しに来たの?」

「怒らないでよクイーンただ君を見に来ただけじゃん。っま僕を見ただけで不安定になるなんてまだまだだけどね」

 竜ケ崎を見たとき。つまり、花南があの力を発動させたのはあいつが目に入ったからってことか。それなら納得がいく。

「……」

 何も言い返せないでいた。

「今日は様子見に来ただけだからもう帰るよ。じゃーね」

「待って。今度は負けない一本でいいから相手して」

 やけに花南がやる気を出している。

「お前。いけるのか?」

「一本だけなら。みんなには悪いけどこいつより強いことが証明できればあの力も消えるかもしれない」

「は?クイーンが僕に勝てるって?何バカなこと言ってるの」

 完全に性格が変わった。いつもはおだやか。だが、自分を馬鹿にされたときだけはさっきをはなつ。

「私は強くなった」

「はは!お前は気づてないようだな」

 急に不気味に笑い出した。

「何が?」

「っまいいか。ならやってやるよ」

 まずいなたしかに花南はつよくなった。だが、それはこいつだって同じ。勝てるのだろうか。


「ボールはお前からでいいぜ」

 ルールは1on1。オールコートで先に点を決めたほうが勝ち。

「獣になりな。おもしろくないから」

 獣っていうのは共通用語なんだな。

「ならない。それでかつ」

「無理だよクイーン」

 花南がドリブルをつく。しかし竜ケ崎はそっぽを向いて花南を見ていない。

「だったらこれで。」

「バーカそうすると思ってたよ」

 花南が視界になる部分をうまく使い。竜ケ崎の向いているほうとは逆のほうに走った。しかし、それに合わせて竜ケ崎も手を出す。

「!!」

 なんとかストップできボールを取られずに済んだ。

「よく止まったね。でも残念君の動きを止めた時点で僕の勝ちなんだ」

 しかし、花南の止まったと同時に竜ケ崎が詰めてきた。

「ん!!」

 切り替えしてどうにか抜こうとするがすべての動きに竜ケ崎が反応してくる。止めてはいるものの一向に取ろうとしない。とれるところもあった。しかし、とらない。あいつは何かを狙っている。

「だったら」

「やめろ花南!!」

 花南はいらいらしてきている。つまり、このままいけばあいつは確実に獣になってしまう。

「っち。さすがだなジャック。気づくとは大したもんだ。ならもういいか」

「え、」

 花南が足を滑らせて転んでしまった。そして、ボールを取りそのままゴールに決める。竜ケ崎の勝ちだ。

「まだ、負けてない」

 花南が手をついて起き上がろうとした。しかし、立ち上がれなかった。

「君は久しぶりに獣になった。その分疲労のたまり方も前とは違うんだから無理しないほうがいいよ」

 竜ケ崎が優しい言葉を述べた。二重人格とまでは言わないが、優しい発言も本来のあいつな気がした。

「っじゃーな。今日は楽しかったぜ」

「待てよ。お前は何でバスケをする」

 こいつはバスケを楽しんでいるわけではなく、バスケで蹴落としているだけだ。ストバス時代ならそれも悪くはないと思う。だが、学校でバスケをしてまで俺たちを追いかけてきた。それには他の理由がある気がする。

「ジョーカーを探すためだよ。それで、僕はもう目をつけてる人物がいる。そいつと正当に戦い勝つためにバスケ部で試合をした。だから、俺をもっと楽しませろよ。ジョーカー」

 ジョーカー?俺が切り札ってことなのだろうか。俺のプレイほとんど見ていないのになぜそう感じた。それに、こいつが目をつけていたのは花南のほうだ。だったら花南がジョーカーとなりうる可能性が高いと思う。

「そのジョーカーってなんだ」

「いうわけないだろ。俺は君がジョーカーだと感じた。だから普通にバスケをすることにした。だから僕をもっと楽しませてよね」

「おう」

 これ以上話してもわからないで終わるのは確実だ。だったらこれで話を終わらせておいたほうがいいと感じた。


 竜ケ崎は走って帰っていった。

「大丈夫か?」

 まだ起き上がることのできない花南のそばに行った。

「うん。ごめん迷惑かけて。私負けちゃった」

「気にするな」

 力が入らず立ち上がれない花南。ここまで消耗している姿もなかなか見れない。獣の力を使ったからもたしかにあるが、それ以上に竜ケ崎に圧倒されたからだろうな。


「悠斗ちょっと来い」

 男子バスケ部部長の東郷先輩に呼ばれた。

「ごめん。ちょっと行ってくるわ。いける範囲でいいから壁のほうによっておけ」

「うん」

 

 大体東郷先輩に呼ばれた理由は思いついている。

「お前ら、部活だからとはいえ、勝手に他校のやつと試合をするのはどうかと思うぞ」

「すいません」

「お前らのことだ。自覚があっても本能を優先するんだろう。一応黙認はしていたってことにしてやる」

「ありがとうございます」

「それでだ。お前らに今からやってもらいたいことがある」

「なんすか?」

「犬山を覚えているだろ」

「もちろんです」

 犬山と聞いて一人だけ浮かんできた。犬山大斗先輩。昨年の八月に交通事故にあい入院。一応歩けるようにはなったが復帰までは先が遠く、そもそも復帰できたとしても、引退した後かもしれないと聞いている。実力があり、何より誰にもやさしい。部活に顔を出さないのもみんなに気を遣わせないためといっていた。

「犬山が復帰するそうだ。ある程度バスケができる状態ではあるが、まだフルで動くことが出来ないらしい。だから、男子のほうには入れない予定だ。だが、混合のメンバーにしようと考えている」

 犬山先輩はもうそこまで回復したのか。さすがにすごいな。試合にフルでできないにせよ、うまく交代を使えばなんとかなりそうだし。

「俺は別に入れるのは賛成ですよ。ただ」

「わかっている。おそらくあいつは元々気づいていただろう。だからこそ、厳しかった」

 犬山先輩は誰にもやさしい人間。だが、一人だけには厳しい姿を見せいてた。獣自体をしっていたのかはわからないが、花南が体の限界を超える力を持っている。だから花南は犬山先輩のことが苦手なのだ。

「この状況で犬山先輩がいれれば、指揮力もチームワークも向上すると思います。しかし、今妹は力がでてしまった。それを恐れている。そこに上乗せで犬山先輩が絡んだらもっとダメになるのかもしれない。そう考えてしまいます」

「いれる、いれないにせよ。あいつは明日復帰してくる。二人の相性とか見て難しいと思ったら言ってくれ」

「わかりました」

 犬山先輩が明日から復帰か。仲間にしたい気持ちが強い。だが、花南のためを考えたら少し抵抗してしまう。


「何の話だったの?」

 花南のところに戻った。コートから出て壁によっかかっていた。さすがにまだ犬山先輩の話をするわけにはいかないよな。

「混合バスケの練習の提案とかだよ」

「ふーんそっか」

「どした?」

 いつもならどんなメニューとか聞いてくるはずだが、特にそういう会話もなく下を向いていしまった。

「怖い。あの力抑えれらなかった。最低だよね。もうならないって決めたのにこの有様。一年間何度も入りそうになったけど耐えれてた。なのにあの人を見たら耐えれなかった。ほんと無様だよね」

「っましょうがないだろ。俺が挑発したせいで起こったんだ。試合の前に起こったんだしこれから対策練らないとだな」

「なんで怒んないの?なんで罵倒してこないの?私が妹だから?傷つきやすいのを知っているから?ねぇなんで」

「帰り、ゆっくりはなそ。俺は練習に戻るから」

 今のこいつは冷静じゃない。少しでも時間をおいて落ち着かせないと。

「なら、私も…」

 立ち上がろうとするが、膝を抑えうずくまった。

「無理すんな」

「…」

 また下を向いていしまった。俺悪いこと言ったかな?大丈夫か。


「お、悠斗。蓮花はもう帰った。ひねった程度だからすぐに回復はするらしいぜ」

 練習を再開しようと持ったら純太が戻ってきた。

「そうかよかった」

「花南のほうはまだって感じか」

「いろいろあったし結構ショックだったんだろうよ」

 蓮花と保健室に言っていたしこの一瞬に起こったことをしらない。とはいえ、説明して同乗させるわけにもいかないしひとまずは黙っておこう。


 犬山先輩の復活。それが、あいつにどれくらい影響をあたえるのだろうか。

 

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