第9話 悪魔の登場
うちの女子の戦力は相当高い。あとはパワー系の男を集めれれば結構いいチームができると思う。まだいろいろ問題もあるが、まずは一番の問題を解決しないといけなくなった。
「言ってるだろ。無理はすんなって!」
花南は部活に復帰してすぐに前と同じように自分を追い詰める練習をし始めた。しかも俺に気づかれないように俺にいた一年生サイドの反対方向に。あいつが慣らすためとかいって俺に一年生すべて丸投げしたから全く気付かずにいた。だが、昨日無理をしたから見学することにした岡江唯(部活動参加初日)が気付いて俺に報告してくれたおかげで止めることが出来た。
「大丈夫だよ。これくらい。桃花ちゃんに負けないから」
今のこいつには焦りがある。桃花ちゃんという強い存在。そして、因縁の竜ケ崎宗助と身近な人物との接触。この二つがこいつを焦らせ無理をしてしまう原因になっている。
「だーかーら。けがしたらそもそも試合できねーだろ。もっと頭使え!」
「それで勝てると思ってるの?落ち着いて二人に勝てるの?それに竜ケ崎に宣戦布告した。だからあいつは必ず狙ってくる。そうなったら私」
花南が胸を抑え始めた。竜ケ崎宗助。花南と俺にとって勝たなければいない存在。だが、花南からしたら勝たなきゃいけないと思いながらも戦うのを恐れる存在。焦っているのは気にしていなかった恐怖が再来したからであろう。一年の時から竜ケ崎がいるのはわかっていたが、試合どころか、大会であったことがない。
「どちらにせよだ。また休まないといけないと悪いから少しずつペース上げていけ」
「うん」
「唯ありがとな」
「いえ。それより、その竜ケ崎ってどれくらい強いんですか?男とはいえ花南先輩があそこまでおびえてるのを見てると心配で」
「中学の時、俺が知る中で一対一惨敗した人物」
それだけじゃない。花南ですら決めれていない。そして、あいつのスピードについていけず、全部のシュートを入れられた。花南にも惨敗を経験させた唯一の人物それが竜ケ崎だ。
「それ強すぎですよね」
「だから焦ってんだろうな。っま俺は戻るからまた何かあったら呼んでくれ」
「任せて」
唯は基本敬語を意識しているが、たまにため口になってしまうよね。俺は気にしてないからいいけど。普段は人と距離を置くような正確なのに何かあれば声かけてくれるし。いいやつってことには変わりないし。
「どしたんすか先輩」
戻ると早川が声をかけてきた。
「なんでもねーよ」
「そうっすか。それで先輩あの女入れて俺を入れないわけないですよね」
まだこいつは入ろうとしているのか。もう入れてやろっかなめんどくさいし。やる気からしたらこいつをぬける一年はいなさそうだし。
「枠余ったらな」
とりあえずは隠しておこう。どうせ調子こくし。
「OKです。いい返事待ってます」
混合チームがバスケをしているコート(バスケ部は二面を使え、前までは一面の予定だったが、一年で半コートを使わせることから、女子と混合で反面ずつ、男子と一年で反面ずつとなっている)を見ると、花南が合流していた。それに唯もそっちのほうに行っている。完全にあいつ花南の監視係になってくれてんな。
そこのコートでは花南、大我VS蓮花、夏奈、純太で試合をしようとしていた。花南の状況を把握してるはずだし、大我が見てんだからあんま心配しなくてよさそうだな。
声とかは聞こえないが、大我と花南はなるべく攻めは大我で最後にシュートを決めるのが花南って感じか。それで純太たちは大我が一人で二人マークをしている状況のためパスをうまく回している。こいつらの連携を見るからにして俺が見ない間に相当成長している。これなら安心できるな。
「よーし一年。男女均等に二つに分かれろ」
今まではずっと個人のシュート練習やパスの練習をさせていた。結構時間たってきたし、パスからのシュートの流れの練習をさせることにした。
「いいか、片方がパスを出す。それをなんでもいいからシュートを決めろ。男子のほうは外したら腕立て伏せ十回な。女子はやりたいやつだけでいいぞ」
女子にあまいかって?あまいよ。俺はそういう男だ。
見てるだけだが、思ったよりみんなうまかった。しっかり基礎ができているからだろう。それに、腕立て伏せからの復帰が早い。こいつらほんとに一年かよ。
「先輩!」
再び唯がきた。
「どした?」
「花南さんが!」
コートのほうを見ると、花南の姿勢がいつもより低くなっていた。そして、誰も相手にせずゴールに入れた。花南の今の姿勢の状態を俺は知っている。あの姿勢になっているということは少しまずい。
「止めにいかねーと」
俺は急いで混合のコートに走った。
「花南!!」
「!!。あれ、私」
俺の一声で正気に戻った。花南の今の状態は分かりやすく言えば桃花ちゃんでいう獣状態。だが、性質は全く違う。こいつは憎しみが強くなると無意識につよくなる。 そして、敵味方関係なくボールを奪いシュートを入れる。桃花ちゃんのあの姿を見たときもしかしたらと思ったが、再び見てほぼ確信になった。こいつも獣の力は持っていたと。
「あやうくまた飲まれるとこだった。あぶなかったー」
飲まれるとこいつは力を抑えられなくなる。そして、今は正気に戻るが、なにをしても試合が終わるまで解けることがなくなってしまう。
「ごめん止めてくれたの?」
「もちろんだ。唯に言われてな」
「!!」
コートを見ると倒れている蓮花がいた。
「大丈夫か?」
「ごめん。花南に圧倒されてすべって足ひねっちゃった」
こいつのあの状態は強く見える。だが、無意識な行動なため、ほぼワンパターンの攻めしかしてこない。それに気づけば戦いやすくなる。っま初見だとただのバケモンだわ。
「俺が連れてくよ」
「わりーな純太」
「気にすんな」
気の使い方あいつできたんだな。花南はあの力を嫌っている。だから今は思考が停止してるだろう。その状況で俺がいなくなるわけにはいかない。純太はそれに気づいてくれたんだろうな。
「なぁ悠斗。あいつの力って」
大我が話しかけてきた。
「悪いが正直俺にもわからん。だが、桃花ちゃんに似ていた。それだけはたしかだ」
「だが、自我がなくなるってことか」
見ただけで気づくとはセンスがあるな。
「バカにしてはわかってんじゃん」
大我と話していると夏奈がつっかかってきた。
「んだとあほ」
「それより」
あ、大我が流された。どうでもいいけど。
「あの力って体持つんですか」
「持つわけがない。だから、封印してきた。だけど再び現れた。つまりあいつにはそれほど焦っているってことだ」
それほど、あいつは竜ケ崎のほうに意識してしまっている。それが一番の理由。だが、竜ケ崎のことは話さないし、うまく言葉を変えていった。
「そっか。なら、あの状態になったらとりあえず止めるべきだな」
「それで頼む。こいつはバスケ以外ではこれになることないから」
「わかった」
竜ケ崎をきっかけに現れてしまった花南の力。あの力を制御できれば相当強くなる。だが、無理だろうな。そんな意識ができるなら今の花南なら止めるこちができるはずだし。
「へー。ちゃんと生きてるんだあの力。安心したよ。クイーン」
花南のことをクイーンと呼び幼い声。この二つの共通点が結びつくのはひとつしかない。
「竜ケ崎!!」
そう花南の力の元凶。竜ケ崎である。
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