第6話 大接戦の争い

「花南姉ボールちょうだい」

「はい。桃花ちゃん」

 俺たちは今部活の真っ最中である。え、なぜ他校の生徒である桃花ちゃんがいるかって?それは今から数十分前の話になる。


 俺たちは普通に部活動に向かっていた。俺たちの教室から体育館に向かうときはいつも玄関を通る。そして玄関前にとある人物がいた。

「あ、やっときた。待ってたんだよ」

 そう、今普通に一緒にいる桃花ちゃんである。

「また喧嘩したの?」

「まーね。それで、逃げてきたついでに部活させてもらえないかなって」

「どうするお兄ちゃん」

「しょうがない。俺が部長に掛け合ってやるよ」

 桃花ちゃんの強さを見きわわめるために練習をさせることにした。部長たちにも事情を話したら理解をしてくれた。


「悠にい!」

 今俺たちがやっているのは、俺、花南、桃花ちゃんVS純太,蓮花、大我、西島で試合だ。3-4なのはハンデらしい。

「大我邪魔!!」

「んだと。てめーはマークするやついねーんだから引っ込んでろ」

 あいかわらず西島と大我は喧嘩をしている。幼馴染で付き合ってるのにな。

 俺のマークは大我。花南は純太がつき、桃花ちゃんには蓮花がついた。それで西島は全体サポート。この四人目のおかげで、パスが回らないこともあるが、俺と大我の一騎打ちに関しては邪魔をしてくれる。

 ゴツン!

 大我と西島が俺を止めようとしてぶつかった。

「んだよ。かす引っ込んでろや」

「なーにが、悠斗は任せろよだ。悠斗先輩に抜かれてるじゃないの」

 俺が抜けているのは西島のおかげでもあるんだけどね。っまいっか。そのすきをつきつかさず前に出た。

「止めないと」

 それに蓮花が反応した。だが、それはミスだ。

「桃花ちゃん!!」

「うん!」

 マークがいなくなって瞬間に桃花ちゃんにパスをした。そしてそのままゴールにいれた。

「ナイスシュート」

「ありがとう」


「おい悠斗!こんなお荷物俺らのチームいらねー。お前らにやるよ」

 西島を押し付けてきた。

「は?あんたがそういうなら行きますよ。先輩いいですよね?」

 後輩なのに怒った笑顔で圧力をかけてきている。

「だったらさ。あたしそっち行く」

 花南が言い出した。

「俺はいいけど。桃花ちゃんは?」

「いいよ」

 花南を敵に回すのはいい練習になる。それに桃花ちゃんがいる。ゲームメイクがどこまで通用するか利用させてもらう。

「先輩。私大我と、純太さんおさえます」

「いや、一年に二人つかせるわけには」

「いえ、先輩は花南先輩とやりたいのかと。それで、その人は蓮花先輩につく。だけど、それでは花南先輩に勝てない。だから私が二人抑えるので二人で花南先輩倒してください」

 このこの分析力とそれにあった策略がすごい。大我は、むかついてるからだろうけどもう一人を純太にしたのは経験からの分析。おそらく彼女には純太が経験が浅いのが見えている。そして、俺が花南とやりたいこと。そして俺が花南に勝てないことから桃花ちゃんのカバーまで考えている。

「なるほど。わかった」


「なんでお前がついてんだよ」

「文句言わない」

 敵になればさらに仲が悪くなるのは目に見えてはいたが、ここまでとは。

「へぇお兄ちゃんなんだ。私をつくの」

「もち」

 花南は目を桃花ちゃんにも向けている。確実に警戒しているな。


 花南のボールで試合が再開された。

「大我君!」

 花南はほぼノールックで西島のマークを気にせず大我にパスをした。

「ナイスだ。どけや!」

 自慢のフィジカルで西島を圧倒する。

「これだから筋肉バカは」

 西島をそれをうまくかわしボールに手を伸ばした。

「これだから頭でっかちはフィールドがみえてねーんだよ。純太!!」

「ナイス大我!」

「まずい!」

 西島は純太にも目をやるため、二人のパスをカットできるようにしていた。しかし、大我の勢いにやられむきになり、ボールに触りに行った。そうしたことで純太のパスコースができてしまった。

「俺が前だけ見てると思うなよ。しっかり周りを見て判断してんだ」

 大我にも新たな一連が見れた。今回の練習で結構しっかりと考えてバスケをしていることがわかった。

「だったらいいや」

 西島は落ち着き大我から離れなかった。

「バカか。おまえ」

「うちには花南先輩越えの人がいるその時点で私の仕事は終わった」

 大我からのパスはたしかに成功した。だが、西島がいいたいのはそこじゃない。パスをさせてしまった。しかし、こいつはしっかり仕事をしていた。なんせ。

「もらった!!」

 純太がドリブルした位置はまぎれもなく桃花ちゃんのほう。一瞬のスキで彼女はボールをカットできる。

「いっきにいくよ!」

 桃花ちゃんは一気にスピードをあげる。

「行かせない」

 それに対抗するため俺のマークをやめて走っていく花南。

 バン!

「ダンクだと」

 身長は150前後のはずの桃花ちゃんがダンクを決めた。なんだよあのジャンプ力は。まるでトランポリンが置いてあったみたいだ。

「花南姉。早いね。私のスピードに追い付けるなんて」

 花南はスタートが遅れただけで、スピードは桃花ちゃんよりも速かった。もっと早めに走っていたら止められていたかもしれない。


「はー。大我君頼みがあるんだけど」

 花南が大我の耳元で何かささやいていた。

「わかった。だが、いけるか?」

「蓮花がいるから大丈夫」

 何をする予定なのだろうか。


 今度は大我がボールをもった。

「純太」

 純太にパスを回す。しかし、いつもなら加速するはずの純太がゆっくりになった。

「花南」

「ありがとう」

 花南がボールを持つと三人が中に走り出した。

「ごめんお兄ちゃん」

 花南が俺の股の下にボールを投げた。そして、俺の後ろにボールがいきそれを花南が持った。つまり、簡単に抜かれたんだ。

「これで二人!」

 やばい。数的不利かつ、倍の違い対応がしきれない。

「止めるよ」

 桃花が花南の動きを止めた。そして一対一。二人の初めての一騎打ちだ。

 花南の動きは完璧に桃花ちゃんに止められなかなか抜くことができていない。調子が悪いわけでない花南をあそこまでしっかり押さえている。桃花ちゃんはやはり化け物だ。

「蓮花!!」

「ナイス花南」

 抜くことを諦め蓮花にパスをした花南。

「大我!」

「ナイスだおら!!」

 蓮花がゴール前にパスをだすとそれにあわせ大我が走りダンクシュートを狙った。

「ん!!」

 さっきのように桃花ちゃんは止めに入る。俺も花南のもとにもどれていてる。

「女が俺に勝てるわけねーだろ!!おら!!」

 しかし、桃花ちゃんはパワーに押し切られてしまった。

「ごめん」

「気にするな次行くぞ」

「うん!」

 

 そこからは点を取ればとられ止めれば止められる状況になった。

「桃花ちゃんどうするよ。もう時間がない。多分これが最後のプレイだ」

「ずるしていい?」

「急に何言ってんだ」

 桃花ちゃんが不気味な笑みを浮かべた。

「ラストですしやってみては?」

「ならやるね!」

 俺の意見はガン無視らしい。

「いっくよ!」

 ダン!!

 今までのドリブルとは全く音が違う。体育館中に響いてやがる。なんだよこの力。

「ほんとは隠す予定だったけど。へとへとの二人にこれ使うのずるいし、今見せるね。見ててね」

 一つ一つのドリブルの力も違うし、早さもちがう。

「おまえらあいつを止めろ俺がほかのやつのマークっすから」

 一瞬で大我は危険を察知した。そして、自分以外を桃花ちゃんを止めるよう指示を出す。

「その必要ないよだって」

 ドリブルの音が一瞬消えた。そして、その瞬間に桃花ちゃんの姿がなくなった。

「だって、誰も止めれないから」

 次に聞こえたドリブルの音は逆サイド。つまり、桃花ちゃんは一瞬でゴール前までいった。

「見えた?」

「みえない。何。あの速さ」

「これでこっちのかち…」

 最後までいう前に倒れだした。

「あーお前ここにいたのか。てか何使ってんだよ」

 倒れたとほぼ同時に神奈斗がきた。

「ナイスタイミング」

「でけードリブル音が聞こえたからもしかしたらと思ったがまさか、こいつらと一緒にしてたとはな。迷惑かけたすまん。こいつは連れて帰るわ」

「待て神奈斗」

 あの力がものすごく気になった俺は神奈斗にきくことにした。

「あの力のことだろ。あれはあいつが一週間に一発しかできないレベルの力。あれ使うと気絶する。だが、ラストワンプレイ一ゴールで逆転ができる状況で桃花は使う。そして、今まで使った中であれを止めたのは俺含めていない。俺らは獣といっている」

 なんか最終奥義みたいな使用頻度だな。それにしても神奈斗ですら止めれないのか。それは相当やばそうだな。

「神奈斗君これ」

 気を利かした花南はバッグを神奈斗に渡した。

「っま。あれはバケモンだから止めれると思わないことだな。そうだ。こいつダンクしたか?」

「したけど」

「はー。ふたかけすぎだろまた休ませんとか」

 ダンクもダメだったらしいな。また休ませる。喧嘩の原因はこれか。

「っまほどほどにな」

「ほどほどにしてたらこいつはバスケができなくなる。楽しむのはいいが、そこはかんりしてやんねーとなんだよ。っま帰るわ次の試合といってもどうせすぐ会うだろうし、また今度といっておくか」

「そうだな。また今度。お茶でも」

 一つ付け加えておいた。


「限界を超える力、か」

「どした?」

「ううんなんでもない」

 っま聞こえてないわけないんだけどな。獣か。花南があの力を使いこなせたら、なんて考えないほうがいいよな。もし制御できんならこいつも危険が及ぶかもだし。


 

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