第3話 試合中止!!

 俺と花南はアメリカから帰ってきた小学校の時の友達の神奈斗と妹の桃花ちゃんと試合をすることになった。

「軽くアップさせろ。さすがにゲリラでお前らとはやれん」

 神奈斗は練習時間を要求した。

「いいのか?お前らのプレイ見られるんだぜ」

「いいよ!そっちのほうがフェアだし」


 神奈斗と桃花のアップは部員全員が注目した。

「っまそうなるな。とりあえず桃花2,2,1で」

「わかった」

 2,2,1はこいつら独自の練習法なのだろうか。聞いたことはないな。


 ハーフラインで桃花ちゃんがボールをもちドリブルを始めた。そして、ゴールに向かって走り出す。

 そこからターンをして神奈斗にパスをした。


「あいつら相当やるな」

「どういうことですか?」

 隣で見ていた東郷先輩が深く感心していた。

「一見普通にやっているように見えるが、あいつらはいろいろな動きをしているが、全くスピードが落ちていない。2,2,1。二人ぬき、二人ぬきってことか」

 そういうことか。神奈斗の言っている数字はマークの数。まず、桃花ちゃんが二人にマークされてその二人を抜くような動きをする。そして、神奈斗も同様に2人のマークを抜く動きをする。そして、残す相手は一人」

「お兄ちゃん」

 桃花ちゃんのスピードの完璧に神奈斗はパスをした。そして、ボールが流れていくようにリングのほうに上がった。

「すごい。あのパスの精度にスピードそして」

 ダン!!

 ボールに目が行きリングのほうを見たときもう神奈斗がダンクの体制になっていた。アリウープ。リングの近くにボールを投げ、それを空中でキャッチしてダンクシュートをする。ダンクができないというのを抜いてもあそこまで完璧ないきが俺と京香でできる気がしね。

「お兄ちゃんあれ、本当にアップなの?」

「あいつらにとってはだろうな」

「勝てると思う?」

 今度は確実に弱気になっている。あんなの見せられたら勝てる気がしない。それは俺もわかっている。

「桃花。あと半歩行けただろ」

「行けないから。お兄ちゃんこそボール半個ぶんくらい近づいたほうがいいよ」

 二人でそれぞれの行動の意見を述べている。見た感じ喧嘩にしか見えないが。

「あっちのほうがかっこいいだろ」

「かっこよさでなくて確実性をとってよ。ほんとこれだからお兄ちゃんは」

 確実に喧嘩で間違いないな。

「は、なにか?お前俺に勝てないくせに意見は達者だな」

「か、勝てるし。最近は負けてあげてるだけじゃんいいきになんないでよ!!」


「ねぇあの二人大丈夫?」

「大丈夫だろ。兄妹だし」

 俺も花南も少し心配になっているが、喧嘩するほど仲がいいともいえるしそっと見てやることにした。


「これだから。お前は。花南ちゃんを見ろ。あの子はしっかり合わせてくれるんだぞ」

「花南姉は花南姉じゃん。私は私なの!」


「お兄ちゃん止めたほうがいいんじゃない?」

「もうちょい見てよう」

 なぜか止めなきゃいけない状況なはずなのに笑えて来る。まだ見ていたと思ってしまう。てかこんな見てるんになんでだ誰も止めに行かないんだよ。


「ならもう一回やってみろ。お前に合わせてやるから」

「ならしっかり合わせて」

 

 解決したのか?っま神奈斗だし合わせれるといってたから何とかなるのだろう。


 次は神奈斗がボールを持った。そしてドリブルに合わせて、桃花ちゃんが前に出てそれに合わせてパスを出す。

 だん!

 そして、桃花ちゃんはそのまま神奈斗に向かってパスをした。いや、パスというか投げつけたのほうが正しいか。

「合わせるんでしょ?どしたの?」

「と、とうか!!」

 さすがの神奈斗もブチギレた。

「あ、やっば。花南姉と悠にい試合は延期ってことで」

 そういうと靴を変えずにそのまま外に走っていった。

「待ておら―!」

 それに合わせ神奈斗も走っていった。


「なんだったの今の」

「よくわからんが、今日はあいつらと試合をしないってことらしい」

「帰ったことだし。練習始めるぞ。あいつらは隣の学校だ。地区から強敵がいる。気を引き締めろよ」

 東郷先輩が声を出すとすぐに準備に取り掛かった。

「すごかったね」

「あんな二人だが、あの連携はやばいな。花南と俺で何とかできそうにない」

 花南はまだしも、俺はあのスピードに追い付ける気がしない。予想はしていたが、やばいほどあいつら強くなっていやがる。


「そうだ。花南と悠斗お前らは今日から別メニューだ」

 東郷先輩が声をかけてきた。

「何するんですか?」

「悠斗とメンバーを集めつつ、二人で神奈斗と桃花を抑える策をねっていろ。お前らに半分やる。そこで混合メンバー揃えての練習をしていろ」

 男女それぞれ、一面を利用している現状。半分というと普通の試合ができる大きさになる。

「そんなに使っていいんすか?」

「これは先生からの指示だ。そして、メンバーがそろい次第男子レギュラーと女子レギュラーとの試合を後半戦にやることになるだろうから。しっかり準備しておけ」

「わかりました」

 とりあえずメンバーが決まっている純太と蓮花と四人での練習となるってことか。それでは、こんなにコートを使うのは申し訳ない。だが、それほど混合の試合にかけているともいえる。


「蓮花もっと攻めていいよ」

 軽くアップを済ませたら俺と純太VS花南と蓮花の試合形式の練習を始めた。

「うん」

 なるべく俺と花南は攻めずそれぞれのペアを生かす練習をしている。理由としては、試合は俺と花南が機能してればマークされるのは確実になる。その時にうまく対応する。それこそこの試合に勝つ秘訣と考えているからだ。

「純太。お前、前ですぎ。もっとまわりみろ」

「わかってっよ」

 純太は攻めに意識するとゴールにしか目に行かない癖がある。そのため、基本ドリブルからのパスは誰かの声が聞こえないとない。もともとの欠点でもあったしこの練習の間に直してやることにした。


 そして、約三十分練習をした。

「お疲れ」

「やっば疲れた」

 休憩を挟まず四人でオールコートはさすがに疲れた。

「っじゃ純太君とお兄ちゃんペナルティーね」

 三十分分フルでガチになっていたのは、罰ゲームを用意していたからだ。途中から花南が負けたくなくて攻めたせいで負けてしまった。練習の主旨変わるんなら罰ゲームとか提案するんじゃなかったと後悔している。

「っで、なにすんだっけ」

「外周を5分らん。できないなら部活終わるまで繰り返しだ」

「もうそんな体力ねーよ」

 普通に軽めのランニングだと外周8分ってとこである。だから5分ならきつくはない。しかし、めちゃくちゃ疲れている状態となると話が全く違う。

「いってらっしゃい」

 マジでこいつら鬼だ。

 

 ランニングを始めると純太が激走した。よっぽど走りたくないんだろうな。俺も少しペースは上げているが、ずっとランニングしてきた感覚として五分であればつくペースで走った。


「っ……ふ……っ」

 走っている途中で誰かが泣いてる声がした。時間ギリギリのペースで走ってる俺は余裕がないし無視をしたいが、助けてやるか。

「どうした?って!」

 小屋の裏の小さな林で泣いていたのは桃花ちゃんだった。

「あ、ゆう、にい。ごべん。ぎょうできなくて」

「それはいいけどどうして泣いてるんだ?」

「わだちだって。わるがった。けど、おにいじゃんも悪いじゃん。なのに、わだちを捕まえたあと、そどですごせとかいうんだよ」

 神奈斗は相当怒ってるようだな。

「ここにいたらなんだしとりあえず、部室行こ。部活終わったら謝りに行ってやるから」

「あ、ありがど」

 妹がいるからだろか。年下の女の子はほっておけないんだよな。神奈斗も多分一人になって冷静になってると思うし。


 桃花ちゃんを部室に送って体育館に戻った。体育館に案内しなかったのはめんどくさくなりそうだから。

「お兄ちゃん何してたの!!」

 そうだった普通に五分普通にオーバーしてる。

「わりわり、喉乾いたんだわ」

「ほんとに?彼女とかと会ってたんじゃないの?」

「か、かのじょ?悠斗あんたいたの?」

「いるわけねーだろ」 

 蓮花は真に受けすぎた。現に俺は彼女いないし。女と会ってないというのはうそになるけど。

「絶対嘘だ。お兄ちゃんが約束破るわけないもん」

 兄のことを大好きな妹はかわいいけどこの嫉妬ぶりはさすがに疲れるぜ。こいつには桃花ちゃんの話どっちにしろしなきゃいけないし話しておくか。

「彼女はいない。だが、困ってる後輩がいたから助けてやっただけだ」

 よし、違和感全くない。これなら花南も納得するだろう。

「ふーん。ならいいや。お兄ちゃん二周目ガンバ」

「いってくるよ」

 なんか一人会話に入ってきてないと思ったら体育館の壇上で大の字でぶっ倒れていた。



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