あの日の再会 2日目
昼からの儀式を終え、夕方になる少し前。
近くの馬車の寄り合い所の一角を借り、濃い茶色のあまり目立たない馬車を降りた。
そこから心地よい風を感じながら店へと歩くと、扉は開け放たれていた。
何故こんなことになっているのか……。ただ、そう思った。
店主であろう少女はカウンターにもたれ、静かな寝息をたてていたのだ。
その様子にカインは声を殺して笑い、お前が起こせと指で指し示す。
仕方なしに声をかけると、本当にぐっすり眠っているようで呆れてしまう。無用心にも程がある。
何度か声をかけ目を覚ましたものの、目をこすりつつの眠たそうな表情にやはり子供っぽさを感じてしまった。
その流れで知った年齢は、信じがたいものだった。 自分と二つしか違わない、とっくに学校を終えた歳だったとは。
その後、茶の煎れ方を教えてもらうと、その所作は手馴れたものだった。
無駄のない動きで平然とこなす姿はしっかり者に見えたが、先程の寝起きを見た者としてはその違いが面白く感じてしまう。
ふと両親の話になった時、微かに浮かんだ寂しさとも、懐かしさとも見える表情が胸に沁み、何故か手が動いていた。
後ろできっちり丸く結われた髪を崩さないように。そのすぐ近くにある肌に触れぬように。
そっと髪を撫でると胸に沁みていた何かが消え、温かくなった。
静かにそれを受け入れてくれる姿がどこか嬉しく、カインの冷やかしが入るまでずっと、手を離せないでいた。
帰り際に交わした小さな約束。明日も来たいと思った。
この店に来たい、だったのか、会いに来たい、だったのか……
その時はそんなこと、考えていなかった。
「選出の儀」に参加する気はないと、はっきりと言われた後だったから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます