第3話

 多分、この身体の本来の持ち主は、あの負傷で死亡したのだ。あの多量の出血では、日本で輸血したとしても助かるかどうか。

 冒険者ギルド内の酒場兼食堂、周囲の喧騒を完全無視、Bランクの『蒼き雪風』と同じテーブルで食事中。

「考え込んで当たり前だ。このラングレン王国から君も出るべきだ。強制はしないが、この国に利用されるな。これだけは頼む」

「カインの言う通りよ。レイア、貴女の力を戦争に使われたら、皆が困るわ」

「このカインは、国王に苦言して騎士団長の身分剥奪、牢屋にぶち込まれた。だから、俺と一緒に逃げられた訳よ」

 盗賊のリックと同じ牢だった訳か。スケベな盗賊なだけじゃないな。別の国からの潜入調査員って所かな。

「ボクも出る・・・本気で追っ手が、騎士達が来てる、逃げるよ」

 支払いは終わってるから、外にいるシーザーに追っ手を殺さないように注意してから時間稼ぎ。

「爆裂拳(手抜きモード)」

 ギルド前の石畳を素手の拳でコツン、それでも直径1メートルのクレーター、爆発の砂煙で目潰し煙幕。

 シーザーも爪を出さずに手抜きモード、手加減モードで前足を振る。

 騎乗している馬ごとコロコロ転がる騎士達、攻撃と言うより遊んでるな。元々Sランク魔物の子供だから、当然らしいけど。

 衛兵達は最初から遣る気なし、手の槍だって構えて持っているだけ。

 Bランクの『蒼き雪風』+勇者モフモフマスター、最初から勝負に成らない。

 「捕まるなよ」と小声で手を振るのは衛兵小隊長、閉まっていた大門が少し開いている。

 シーザーは自力で大門を飛び越え、ボク達は扉の隙間を走り抜けた。

 大門とナージャの町が小さく成ってから、シーザーに魔法使いマーベルと共に跨がる。

「ちょっ、俺達は、自分で走れってか!?」

「4人は流石にムリでしょ」

 近い内に全員が乗れるように、後3匹が必要か。シーザーと同じ位に強く速い魔物か、そんな簡単に見付けて仲間に出来るかな。

 もちろん、途中で走るのを交代する。目的地は国境の町ザーガス、交易の町なので警備も厳しいらしい。

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