問⑥【遠距離と近距離】

 彼女が優秀だってのは分かっていた。

 だってずっとそばで見てきたんだから。


「予想はしてたんだけど、遠いところに行くことになったの」

 彼女がそう言ったとき、やっぱりな、とそう思った。


「それってどこ?」

「遠いところ。たぶんココには戻らないと思う」


 僕が彼女に惹かれた理由はいくらでも思いつく。

 だけど彼女がボクのどこに惹かれたのかは、僕にとっていまだに謎だ。


 ただこれだけはハッキリ理解していた。

 ここで彼女の手を離してしまったら、僕たちの縁はそれまでだということ。


「そっか……遠距離恋愛ってことか。でも連絡手段はいくらでもある。ボクはここで待ってるよ。ここでずっとキミを待ってる」


 と、彼女はここで大きく息を吐いた。

「それはあなたのためにも、あたしのためにもならない」


「待つのもダメなのかい?」

「あたしは関川君に一緒に来て欲しい。でもあなたにはここでの生活や仕事があることも分かってる」


 ボクはすぐに返答できない。

 失うものは少なくないのだ。


「ねぇ、一度だけわがままを言わせて。ここでの全部を捨てて、あたしと一緒に来て」


 彼女は僕を見つめ、それからゆっくりと手を伸ばしてくる。


 僕は……


※ここまで





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「ゴメン…ボク…どうしても…『ソッチ』には『イケ』ない…!」

 彼女に懇願するボクに…。



「そんな…! 関川君…⁉

 関川君…『アッチ』の世界も『イケ』る口だって言ったじゃない…⁉」

 大きく目を見開き問う彼女…。



「『アレ』は…。

 キミが…。

 キミが…彼女になってくれるならと思って『イッタ』だけで…!

 ボクには…『アッチ』の世界は…本当は…無理だったんだ…。

 ボクには…ボクには…『イケ』ないんだ…ッ‼」

 そうまくてるボクに…。



「そんな…⁉

 やっと…やっと…『同志男子』に巡り合えたと…!

 男女で…『アッチ』にも一緒に『イケ』る…!

 もう戻って来れないくらい…!

 『アッチ』に一緒に『イケ』ると思ったのに…⁉」

 と、彼女もまくててる…。



「ダメだよ…ダメなんだよ…。

 普通の男子にはね…。

 アダム君と、アダム君で、『アレ』な世界を妄想して…。

 『アッチ』に行くなんて…。

 どだい…無理だったんだよ…ッ‼」

 と、涙するボクに…。



「そんな…?

 そ…そんな…⁉

 一緒に…アダム君と…アダム君で…!

 はにゃ~ん☆…や!

 きゃう~ん☆…できると思ったのに…ッ‼

 酷い…!

 酷いよ…関川君…ッ‼」

 もう彼女は…人目もはばからない…。


 人目もはばからず…。

 アダム君とアダム君で…。


 はにゃ~ん☆や…。

 きゃう~ん☆な事を妄想して…。

 『ソッチ』に『イッテ』ばかりいるのを…。

 自白して『イク』…。



 それを見て…。

 ボクは…再度…思った…。



 見た目だけは最強な彼女だったのに…!

 何で…⁉

 何で…『アレ』系なんだよ…ッ⁉

 『神様のクソが…ッ‼』…と。

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