問⑤【この服を着ろと?】

 目の前で、愛しい彼女が微笑んでいる。


 こんなに幸せなことはない。

 ここのところ、お互いに忙しくて、なかなか二人の時間を持てなかったのだ。


 やっとできた、二人だけの時間。

 キミが満面の笑みでボクを見つめてくれる。

 キミのためなら、なんだってしてあげたい。

 心から、そう思える。


――と、ついさっきまでは思っていたんだけど――


 すまない。

 やっぱりムリだよ、コレ。


「似合う! 似合うよ、関川君!!」


 キミが絶対に似合うと言いながらボクに着せた服。

 鏡の前で、言われるがままにポーズをとってみるボク。


 でも……ダメなんだ。

 今日だけは、キミの願いをきいてあげることができそうにない。


「これ着て一緒にお出かけしようねっ!」


 ああ、彼女の弾ける笑顔がまた可愛い。

 この笑顔を曇らせるなんて想像するのも嫌だ。

 嫌だけど、この格好だけは……

  

 ああ、ボクはいったい、どうすればいいんだ?


 ※ここまで




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「ゴメン……。

 キミの願いは聞いてあげたい…。

 叶えて上げたい…。

 でも…。この服だけは無理だよ…。」

 ボクは、そう彼女に告げた。



「え~…⁉

 こんなに似合うのにぃ~⁉」

 と、彼女は目を丸くして驚く。



「これは…。

 この全裸の上に、

 この青いツナギの服だけ着るのだけはダメなんだ…!

 『アレ』っぽ過ぎて…!」

 と、ボクは彼女に懇願する。



「そんな…⁉

 せっかく…『ハッテン場』の公園に連れて行って、

 ツナギのホックをゆっくり下げて貰って、

 『やらないか?』って言って貰うプレイで、

 関川君がハッテン場のムサいオジサンと、

 『アレ』で『ソレ』な事になるパライソを想像して、

 『アッチの世界』にけると思ってたのにぃ~…⁉」

 と、彼女が既に『アレ』な妄想でヒートしてるらしく、

 ボタボタと鼻腔びこうから三倍の『アレ』をながしながら言って来る…。



 ああ……。

 彼女は…実益としてはボクが本当に好きらしいが…。


 正直…彼女の…この『趣味の世界』だけは…。

 厳し過ぎる…。

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