番外編 問①【女子更衣室にて】

 かしましい声がどんどん増える。

 女子更衣室の熱気はもうすぐピークを迎えるだろう。


「ねーねー◯◯くんとはどうなってるのよ」

「普通かな。そういうアンタこそ関川くんとどうなのよ」

「ちょ、まだコクってもないし! できればコクらせたいし~」


 ヤバい、完全に脱出機会を失ってしまった。

 僕はロッカーの中で、これから起こるであろう展開を想像し、恐怖におののいていた。


 好きな子の匂いが付いた服を顔に押し付けてスーハーしたいなんて思わなければよかった。ここまで上げたパブリックイメージが水の泡に……


 あの子が笑談しながらここに近づいてくるのが分かる。

 僕の入っているロッカーがカチャカチャ鳴り、そしてとうとう。


 その瞬間が訪れた。


「えっ、関川……くん?」


 正直に土下座するべきだろうか?

 それとも誤魔化すべきだろうか?




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「……なんてね!

 そんな…こんな更衣室の中の…

 私のロッカーにまで入ってくれて…

 私の下着を頭に被ったりして…

 それでスーハーしてくれたりする程…

 関川君が私を想ってくれていたら…。


 きゃう~ん! そんなの! 嬉し過ぎるんだけど…ッ‼

 

 流石に…想い過ぎで…。

 何か幻覚まで見えてるのかな…。


 何だか…関川君が…本当に私の下着を頭に被って…。


 ロッカーの中に居るみたいに見えるなんて…。


 私ったら…! はきゅ~ん! 期待し過ぎよね…ッ‼」

 と、何故か、明らかに目の前のロッカーの中で、

 彼女の下着を頭に被ったボクが居ても…。

 全然気づかない彼女…。



「もう~!

 ホンット、アンタは、関川君、一筋過ぎよね!


 でも、そんなロッカーの中で、

 アンタの下着被って入ってるなんて、

 そんな嬉し過ぎる状態になんてならないって!


 なんたって…あの関川君なんだし!」



「だよねぇ~!」



「あ~! ホント、私も、関川君になら、そんな事されたいよぉ~!」

 と、よく分からない内に、

 彼女たちには、ボクのパブリックイメージが、凄い事になってるらしい…。

 だけど逆に…より…ここからの惨状さんじょうが怖いんだけど…ッ⁉



「でも…ちょっと幻覚が過ぎるかなぁ…?

 関川君が…頭に被った私の下着以外…。ほぼ全裸で…。

 目の間に、関川君の『ドラゴンボール』が、

 ぶら下がってる様に見えるんだけど…?」

 と、目を何度も、こすりながら、

 ボクの『ドラゴンボール』を試しににぎる彼女…ッ⁉



「や~ん…何だかプニプニで…!

 なのに…妙に生暖かいっていうか…!

 この『ドラゴンボール』でなら…!

 出て来る神龍シェンロンも…柔らかくて優しい…。

 何個でも願いを叶えてくれる子になって出てくれそう…!」

 と、なおもプニプニとボクの『ドラゴンボール』をにぎってから…。



「ま…そんなはず無いけどね…。


 こんな幻覚まで見ちゃって…。

 こんな感覚まで感じるなんて…。

 ホンット…関川君が居ないと…私…もう…ダメ…ッ‼


 仕方ないから…今晩にでも…。

 電話で、関川君をディナーにでも誘っちゃって…。


 そのまま…関川君に…。

『デザートに私も食べて行かない? あのホテルで!』

 って、頼んじゃったりしちゃったり…ッ!


 はみゃ~ん…ッ‼」

 と、赤くなった顔を手でおおい、イヤイヤしながらも、

 自前の『ドラゴンボール』をにぎられたり、

 衝撃の告白の、前準備告白まえじゅんびこくはくゼリフを聞かされた事で、

 ボクが昇天してるうちに、


「よし、バッチリ着替え完了!」

 と、いつの間にか着替えを完了した彼女によって、

 ボクを入れたロッカーは閉められた。



「ホンット、気合入ってるじゃん、今日は!

 それならさぁ…!

 案外…関川君だってさぁ…!

 ホテルにも来てくれて…!

 アンタに昇天させられるかもだよ~…!」

 と、ひじで彼女をつつく友人。



「はきゅ~ん!

 是非! 是非! 是非!

 関川君と…そんな風に…私…昇天したい~!

 よ~し! 今日のお誘いは頑張るぞ~…ッ!」

 と、意気揚々いきようようと更衣室を後にする彼女。



「ガンバレ! ガンバレ!」



「ファイト! ファイト!」

 と、彼女の友人たちが、さらける!




「ぼ…ボク…もう此処ここで…既に…さらに昇天しそう……。」

 自前の『ドラゴンボール』への彼女からの圧迫あっぱくうえ

 この凄まじいラブラブコール…‼



 もう…ボク…『イキ』そう…‼

 『向こうの世界』に…ッ‼

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