小説『ノンストップ・アクション』
小説『ノンストップ・アクション』シリーズの改稿作業がようやく完了した。
改めてご紹介すると、本シリーズは学生時代のバックパッカー旅行をもとにした私小説であり、2018年12月から2年かけて執筆した長編小説である。
太宰治が通った銀座のBARで「あとがき」を書き終えてから1年になる。
“とにかく書き切った“という幸せが落ち着くと、書き始めた頃との品質の差が気に入らなくなった。1話の長さもまちまちで、伏線の弱さやキャラクターデザインの甘さなど、構造的な問題も浮かび上がってきた。
早速年間スケジュールを敷き、2021年を”改稿に捧ぐ1年”と位置づけた。
正直、改稿などチョロいと構えていた。
ゼロからストーリーを生み出すわけではないので、せいぜい前日にざっと読み返し、リズムの悪い部分を補正すればいいだろうと考えていた。
ところが、終えてこの疲労感はどうだ。
改稿とは、細部のバリ取りではなく、均整の取れたチャプターに仕上げることが目的である。展開や着地点を見据えながら、作品全体のバランスを矯正する作業である。
かなり大胆な加筆修正を行った。結果的にシリーズ全体で7万字程度スリムになったことを考えると、かなり強烈なダイエットとなった。
もしかすると、キャラクターが飛び跳ねるに任せ、ゼロベースで書いていく方が楽かもしれない。すでに出来上がったものを伏線やバランスを考慮して調整していく作業は、第一に全体の流れが頭の中に入っていないと、どこかで”しわ”が発生してしまう。その上で1話2500字程度を意識し、長さを切りそろえていった。
これを月・水・金のペースで1年間続けるのは、片手間でできることではなかった。本来なら担当編集者の仕事なのだろうが、”こんな面白い仕事を他人に譲れるか”という思いが次第に芽生え始めた。
書くことは好きなので、これからも何らかの創作は続けていきたいとは思う。ただ、『ノンストップ・アクション』シリーズ以上の作品は書けないとはっきり認めている。
何故なら多分に実体験を含んでおり、その意味でもこれ以上有利に書き進められるコンテンツはない。そして何より、当時移動中のバスに揺られながら書いた旅日記を”いつか読み物として仕上げたい”という想いを20年も温めてきたのである。
私が専業の物書きになることはないだろう。ただ”これだけは世の中に遺せた”というのは『ノンストップ・アクション』シリーズだけでいい。文庫として書店に並ばなくてもいい。星の数も、PV数も関係ない。
この創作を通じて、多くの方々の支えていただいたことは生涯忘れない。それ以上のメダルも褒美もいらない。
『ノンストップ・アクション』シリーズの執筆中、一度某大手出版社の編集者とやり取りをさせていただいたことがあった。
曰く、「あなたが著名人であれば何を書こうが売れるが、名もなき新人の長編小説など誰も買いません」とのこと。
その言葉に少なからず動揺したが、これは出版業界のどうしようもない硬化したシステムと凋落を言い当てており、この時点で自分の作品を商業ルートに乗せるという期待は捨てた。
人に聞かれれば、「趣味的に書いて発表しているだけなので」と答えたが、中には「小説投稿サイトは、明日のプロを目指してそれぞれが頑張っている場所なので、そういう発言は歓迎できない」とメッセージを送りつけてきた人もいた。
全くの大きなお世話であり、「なぜ書籍化がゴールなのですか?」というこちらの問いにリプライはなかった。
編集者は、ある意味著者以上の力を持っている。その総責任者の名前を巻末に載せない出版業界もどうかとは思うが、とにかくこれは僕だけのゲームなのだ。誰にも触らせはしない。
もちろん多角的に磨いた方が、仕上がりはよいだろう。いつか信頼できる編集者と出会うことがあれば考えを改めないでもないが、だがこの作品に籠めた気持ちは「商業的な値打ち」とは別のところにある。
「これが私の作品です」と言えるものを作りたかった。
来年は細かいバリ取りをしながら再放送をしていきたい。
引き続き『ノンストップ・アクション』シリーズの応援をよろしくお願いいたします。
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