閑話 その気持ち
スゥ視点の出会いと現在。閑話…? 秘話かな?
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いつものように食べ物を捕まえていたら目の前に大きな何かが落ちてきた。
石? そう思ってすぐに距離を取ったけど、違うみたい。よく見れば私たちと同じような形をしている。
なんで上から落ちてきたのだろう?
私たちと同じ……ううん、違った。お母さんが言っていた『人間』なのかも。
私のお父さんも人間らしいけど会ったことはない。どうしてお母さんが会わせてくれなかったのかわからないけど、人間って本当に私たちと似ているんだね。
すぐに動きだすかな、と思ったけどその気配がない。
寝てる? そんなわけないか。人間は水の中で生活はできないから、寝ることもできないはずだし。
あ、よく見たらケガしてる。
水で薄まってうまく見えないけど、血も結構出ているみたい。
血はたくさん出たら死んでしまうってお母さんが言っていた。それに血が出るってことは痛いってこと。
それに動かないってことは……
嫌な予感がして少しだけ近づくのをためらう。でも、もし……そう思ってすぐにその人間に近づいて様子を見るとまだ生きていた。
でも、人間は水の中で生きてはいけない。
このままだと死んじゃう。水の中から出さないと。
そう思って私はこの人間を寝床に運ぶことにした。
寝床に人間を運んで寝かせる。
寝かせて改めて確認したら息してない。
このままじゃ駄目なのは何となくわかる。だからすぐに魔法で回復させてみる。
今までお母さんと練習でしか使ったことのなかった魔法だけど、上手くいくか不安だった。
それでも使わないわけにはいかない。
最初の魔法で人間は息を吹き返した。苦しそうにせき込んでいるけど息をするようになった。
よかった。うまくいった。
まだ起きそうにないけれど、その前にケガを治した方がいいよね。
まだ濡れている服を乾かして……邪魔だからとりあえず脱がさないと。
ボロボロになっている服をさらにボロボロにしないように慎重に脱がせていく。人の服を脱がせるのは初めてだから結構難しい。
ここをこうして、腕を通せば……脱がせた。
後は下も脱がして、パンツは………………、パンツは良いかな。
脱がそうとパンツに伸ばした手を引っ込める。これは何か脱がせたら駄目な気がする。
服を脱がせたからわかったけど体中、ケガいっぱい。血は最初の魔法で出なくなっているけど、ケガは全然治っていない。
もっといっぱい魔法をかけないと。
何度も魔法を使ってケガを治した。でも、私の魔法だと完全に治せていないみたいで、動くとたまに痛そうな声を出してる。
おでこに水がついているからきれいにしておく。
おでこをきれいにしたときにこの人の体が気になった。
別にケガがまだ残っているとかそういうのじゃなくて、何となく気になった。
お腹をつついてみる。……かたい。
「む…むぅ」
自分のお腹を触る。やわらかい。違う。
「むぅ……?」
私と違う。お母さんとも違う。
これが男の人?
顔を覗き込んでみる。
顔つきもお母さんと違う。ちょっと堅そう。あ、でもほっぺはやわらかい。
何となく、この人の顔を見ているとあったかくなる気がする。
お母さんと離れてから、こんなこと初めてだから、どうしてこんな感じになるのかわからないけど、なんでだろう。
気になるからもう一度顔をのぞいてみる。
寝顔がちょっとかわいい。
ルークに着いて行くなら
私たちは水の近くで生活するのが普通。別に水辺の近くじゃないと生きていけないというわけじゃないってお母さんが言っていたけど、大人になるまでは水の近くにいた方がいい、とも言っていた。
大人ってどうやってなるものなんだろう。
ルークがここから出ていくって言ったとき、一緒に行こうって言ってくれたのはすごくうれしかった。でも、ここを離れるって思うとすごく不安。私は他の場所を知らないから余計に。
私がどうしていいのかわからなくなっているとき、湖に残るかルークに着いて行くか、ゆっくり選んでってルークは言ってくれたけど、最初からルークに着いて行くつもりなのは変わらない。
でも、やっぱり不安だからもうちょっと待っててほしい。大丈夫って、ここから離れても大丈夫って思えるまで待ってて。
ルークなら待っててくれるよね?
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言動とか反応が幼い感じのスゥだって13歳の年頃の女の子なのです。
多少異性に興味はあるんです。その先の感情はまだ芽生えていないんですけど。
そも、スゥにとって同族も含めてルークが初めて遭遇した異性です(どこかで書いたかもしれないけど)
次話も閑話になります。
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