ま、まさかねぇ(汗)
なんか俺を餌にしてスゥをここから連れ出すって、なんというか騙しているみたいで嫌だなぁ。
スゥからすれば純粋に俺と一緒にいたいだけって感じなんだろうけど、その先のことを考えるとあっさり頷かれても困るというか。すんなり話が進んでくれるのはありがたいんだけどさ。
それにあっさり出るって言ってくれているけど、ここに思い入れとかないのか? 生活感とか最初も今も皆無ではあるんだけど、長く住んでいた場所だろうし何かしら思い出とかありそうな気もするんだよな。
「ここに思い入れとかって…ないの?」
「オモイ…イレ?」
「ああ、えっと、思い出とかないのかってこと」
言葉の意味を理解していない様子のスゥにもう少しわかりやすいと思う単語を使って聞いてみる。
「思いで…」
パッと思いつくようなことがないのか、スゥは少し考え込むように首を少しだけ傾げた。
「む……むぅ…」
あれ? これ本当に思い入れとかないのか。必死に思い出そうとしているんだけど、本当に思い出とか一切ない感じなのかもしれない。
「…ルク、拾った」
「え、あ。まあそうだね。それ以外は…」
「ルク、世話した」
「あ。うん、そうだね。他は…」
「ない」
「そ…そうですか」
本当に何もないんだな。そもそも出てくるのが俺を助けた後の話ばかり。……いや、まさかな?
「スゥってここに住み始めてからどのくらいなんだ?」
「どの…くらい?」
スゥの生活って時間感覚が曖昧だから正確に覚えていないかもしれないが、長いか短いかくらいはわかるよな。
「どれくらいなのかがわからないなら、長いか短いかでも教えてくれるといいんだけど」
できれば長いと答えて欲しいところだが……
「じゃあ、みじ…かい?」
「そ…っか。そうかぁ」
「?」
俺がため息をつくように返事をするとスゥはどうしてそんな反応をするのかわからないという表情で首を傾げる。
待って。ウンディーネの時間感覚が大雑把なのはおおよそ把握しているけど、流石に長いか短いかの感覚が大幅にズレることはないだろう。そうなるとどうだ?
最初、俺がスゥの歳を聞いた時俺と同じくらいだと答えてくれた。でも思い返してみれば、俺はあの時どう聞いた?
『スゥって何歳なんだ?』
『なん…さい?』
『うーん。正確にはわからないのか? 見た目的に俺と同じくらいか?』
『たぶ…ん』
思い返してもれば確かこんな感じの流れだったと思う。
これ、確かに俺と同じくらいとは言っているんだが、俺がそういうふうに聞いただけだよな? そもそもたぶんとしか答えていないし。それによくよく考えてみれば、スゥが親元を離れたのは10歳くらいだと言っていたから自分が何歳なのかは把握していてもおかしくない。
それに今もだが、スゥは俺の歳を把握していない。俺が一度も教えていないのだから知っているわけもない。
そんな状況で、一度も人に会ったことがなかったスゥが見た目だけで俺の歳を把握することはできるのか?
俺だってスゥの歳がどのくらいなのかはっきりとわからないのに、他の人どころか同族のウンディーネとすらあまり会わないらしいスゥが相手の歳を推察できるとは思えない。
そうなるとあれか。
スゥってもしかしなくても俺より相当年下だよな? というか下手すると10歳では?
いや最初から年下だろうとは思っていたけど、それだって1個か2個したくらいの感覚だった。実は10歳くらいでした、とか言われてもそれを飲み込むのに時間がかかる。
いや、違うな。俺が無意識のうちにそう思おうとしていたのか。
背は低いけど顔つきは同年代の女性と同じくらいだし、普段の態度がかなり落ち着いているからそうだと思っていたけど、俺が家に帰る時の態度とか帰ってきた時の対応とかをみると年相応な感じはする。
寂しがりなところも、必要以上に俺と離れたがらないところも、親と離れてからそんなに時間が経っていない時に俺がきて、その寂しさを紛らわすために俺を、っていう流れなら十分にあり得る。
ウンディーネは10で親離れしなければならないけど、人だったら離れなければならないわけではないからな。理屈としてはだが。
—————
親離れが早いところからわかると思いますが、この世界でのウンディーネの成長速度は人より少し早いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます