数日が経ちました

 

 

 スゥの元に帰ってきてから数日。俺はまだスゥにあの話を切り出せずにいた。


 普段だったら早く話を切り出して行動に移すのだが、俺が帰ってきたことを喜んでウキウキしているスゥに対してここから出ていくと伝えるのは少々気が引ける。

 今後のことを考えればさっさと伝えてしまうのがいいのだが、スゥがどういう反応をするのか、それを見るのが怖くて尻込みしてしまっているのだ。


 それにここに長く住んでいるみたいだし、ここから外に出ようと誘えば嫌がるだろう。

 断られたら俺一人で計画を実行するつもりではあるが、出来ればスゥも一緒に居てくれた方が楽に話が進みそうなんだよなぁ。それにできれば一緒にいたいってのもあるし。


 とはいえ、これ以上時間をかけるわけにも行かないので、話を切り出さなければならない。

 意を決し、俺はスゥに話しかける。


「スゥ」

「? なに?」


 ニコニコしながら草の敷かれた寝床を整えていたスゥがこちらを向く。それを見てさらに罪悪感を覚えるが、言わないわけにもいかない。


「あのさ。スゥってこことは別の場所で生活していたことってある?」

「おかぁさ、のところだけ……?」


 どうしてそんなことを聞くのか、といった様子でスゥは首をかしげる。

 他の場所で生活していたことがあればそこに移動してもらうのもありだと思ったんだが、やっぱりそう都合のいい展開はないか。


「それじゃさ」


 俺がそういうと何か嫌な予感でもしたのか、一瞬スゥの表情が少しだけ強張った。


「ここじゃなくて外で生活してみない?」

「……ルク、ここから出てく?」


 俺の提案を聞いてすごく泣きそうな表情になったスゥが、すがるように俺の服の裾を握りしめてきた。


 反応からしてスゥは俺だけがここから出ていくように捉えているようだが、一緒に外で生活しよう的な意味で言ったんだけどな。表情からして悲観的な想像をしてみたいだし、そのせいで言葉通りの意味に捉えられなかったのかもしれない。


「いや、俺だけじゃなくてスゥも一緒に外で生活しないかって聞きたかったんだけど」

「…いっしょ?」


 俺の言った言葉を頭の中で咀嚼しているのか、スゥは小さく首を傾げるとそう一言漏らして固まってしまった。


「いっしょ…なら、ルク…いなくならない?」

「え? まあ、一緒に来てくれれば…そうだね」

「なら行く」


 待って。スゥがここを出るの俺が一緒にいるかいないかで決まるの? しかも割と即答だったし。


 俺がスゥを好きになるのは別におかしいことではないと思うけど、スゥが俺のことをここまで重視してる理由がほとんど思いつかない。スゥが俺のことを好きになった、とかそんな自惚れたことを想像するほど俺は馬鹿ではないつもりだ。

 

 ここまで俺のことを求めているような感じになっているのは素直に嬉しく思うが、実際は1人は寂しいから他の人と一緒にいたいとかそんな感じなんだと思う。

 しかし、ここまでとは想定していなかった。


 いや、俺が少し前にここに戻ってきた時のことを鑑みればおかしなことではないのかもしれない。

 

 俺を保護する前までは1人でいても大丈夫だったんだと思うが、俺を保護して一緒に生活するようになって、多分母親と一緒に生活していた時の感覚が戻ってしまったんじゃないかと思う。

 母親と離れたのはウンディーネとして当たり前のことだから我慢できたけど、俺は普通の人間だからそれと同じように割り切れない、そんな感じなのかもしれないな。


 とはいえ、この流れでスゥをここから連れ出してしまってもいいのだろうか。

 





 ―――――

 お久しぶりです。本当にお久しぶりです。17ヵ月ぶりですね。

 前回の更新日を見て絶望しています。17ヵ月前ってどういうことですかね? 1年と5ヶ月って……某小説投稿サイトで次話が投稿される可能性が極めて低いって表示されるやつじゃないですか。まじで。


 待っていた方には本当に申し訳ないです。


 追加閑話の方も更新しましたので、よろしければどうぞよろしくお願いします。

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