暖を取り、考える
スゥが離れてから、冷えた体を温めるために魔法で火を起こす。大した火力もない魔法の炎だが暖を取るには十分な大きさの炎が目の前に現れた。
薪なり何なりに火を付ければずっと魔法を使い続けなくてもいいのだが、空気の通りがあるとはいえ洞窟内でそれをやるのは自殺に等しい。
しばらく洞窟の壁を背もたれにしながら自分で出した炎で暖を取っているとようやく体が温まってきた。
それに気づいたのか少し離れた位置で待っていたスゥが近付いてくる。そして俺の隣まで来ると何も言わず、肩が触れるほどの距離に腰を掛けた。
何も言わず隣に座ったことからしてスゥは凄く寂しかったのだろう。さっきの行動もそうだ。すぐに戻ると言ったくせに何だかんだ時間を掛けてしまった俺が悪い。
まあ、あのウンディーネと話している時に掻っ攫われた理由はよくわからないけど。あれも寂しさからきた行動なのだろうか。
見た目の年齢ならそれほど俺と変わらないスゥだが、精神面はかなり幼い印象が強い。言葉が拙いというのもあるが、俺に対して依存しているように感じるのもその印象を強くしている。
商会の手伝いをしている時に人付き合いの悪い奴ほど精神が幼い、なんて愚痴話も聞いた。まあ、人付き合いが悪い人が全員そうだとは思っていないし、大半は違うだろう。ただ、この理論が完全な間違いとも思えない。
思い出したくもないが、元婚約者のカイラもこれに該当していたという事なのだろう。
あいつの場合は性格があまり良くなかったから友人は殆どいなかった。その所為で周囲に居る人間は殆どが使用人。使用人は基本的に雇い主に話しかけることはないし、叱ることも殆どない。あいつは環境的に人付き合いという言葉から縁遠い生活をしていたわけだ。
結果出来上がったのがあの性格。自己中心的で我が儘、これは加減を知らない幼い子供の典型だろう。それと同じという事は外見よりもあいつの精神は幼かったということだ。あくまで予想だから絶対とは言えないけどさ。
スゥは、最初に話をした時にまともに話したことがあるのは母親だけだと言っていたし、人付き合いが今までほとんどなかったのは間違いないだろう。
これからして、カイラと並べたくはないが、スゥの精神の幼さもおそらく人付き合いの無さ、薄さから来ているものだろうな。
しかし、どうしたものか。
これからの事をスゥに説明しないといけないのだが、何もしていないでもこの反応だと説明したらどうなるのかわからない。
泣くかもしれない。いや、しっかり説明すればそれは無いか。精神的に幼いというだけでスゥは別に頭が悪いわけではないからな。
……本当に大丈夫か?
先ほどよりも強く肩をくっつけてきているスゥを見て、俺は不安に駆られた。
ここから出て外で生活しようって、スゥにとって家を捨てろって言っているようなものなんだよな。俺に対してこうも反応をするってことは、ここを出るのも嫌がりそうだ。
少し安心したような表情で俺の隣で座っているスゥを見て考える。これは、もう少しスゥが落ち着くまで待った方が良いだろうな。
下手に不安を煽るようなことを言って、泣かれでもしたらどう対応したらわからない。
それにあれなんだよな。申し訳ないけどスゥって力が強いから下手に暴走されると俺が死ぬかもしれない。
慎重に行動しなければ。
―――――
人付き合いの無さ=精神が成長していない、は個人的な見解です
深く考えないでください。おそらく答えはありません
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