会えたはいいが寒い
突然、スゥによって水の中に引きずり込まれたのだが、割と早く陸地、と言うかおそらくスゥが住んでいる洞窟内に到着した。
なるべく水の中に入っても中身が濡れないようにと密閉度の高い鞄に荷物を入れていたのだが、外側から触って中を確認してみた限り、濡れてはいないようだ。
「スゥ?」
俺が荷物の確認をしている間もスゥは俺の体にしがみ付いたままだ。
湖の中に入ったため全身が濡れていて結構冷たいし仰向け状態だから背中が痛い。ただ、その中にスゥの体温も感じられる。まあ、それ以上に濡れた服でどんどん俺の体温が下がっている気がするから、それどころではないんだけどさ。
「スゥ。ちょっと服の水分絞りたいから離れて貰ってもいいか?」
そう俺が問いかけると、スゥは嫌だと意思表示するようにしがみ付いている手の力を強めた。
「や。ルクすぐに戻る言ったのに」
10日はすぐじゃあないよなぁ。と思ったが、同時にウンディーネの時間感覚が人と一緒なのかが気になった。精霊と言われるくらいだから人よりも寿命が長そうだが、どうなんだろうか。
今のスゥの状態からすぐに聞くことはしないが、いずれは知らなければならないよな。長く一緒に居るつもりなのだから避けては通れない問題だろう。
「ごめんなスゥ」
必死に俺にしがみ付いているスゥの背中を優しくぽすぽすっと軽くたたきながら、宥めるように頭を撫でる。
スゥのために少し我慢していたのだがさすがに限界が近付いて来た。スゥがしがみ付いている場所は良いがその他の場所が拙い。仰向けなのも相まってなかなかに拙い状況だ。
「スゥ。ごめん。そろそろ限界。寒すぎるし、背中が痛い」
返事は返ってこない。ただ、嫌だ、と言った感じに頭をぐりぐりと俺の胸元にこすりつけて来た。
「本当にちょっとでいいからさ。お願いだ」
「……ん」
渋々といった声を出してスゥがしがみ付いていた手を放し、ようやく俺の上からどいてくれた。よくやくスゥの顔がまともに見えるようになったのだがスゥの表情は驚きと困惑でいっぱいだった。
「……ルク……顔!?」
「顔?」
起き上がりながら顔に何か付いているのか、と一瞬思ったが、あれだな。たぶん寒さから顔が赤くなっているとか青くなっているとか、そんな感じだろう。今もめちゃくちゃ寒い。スゥが離れたから余計に。
「寒い」
おろおろしているスゥに心配をかけないようにしようと努力するが、指先、足先どころか全身が震える。速く服の水を絞らないと危ないかもしれない。
「ル…ルク、ごめ」
「いや、大丈夫だよ」
真っ青な顔で謝るスゥの頭を撫でながらなだめる。そもそもの原因は俺が少しでも早くここへ戻ってこなかったからだ。
まずは服を脱がないと駄目だな。ここに来た時に比べれば水気は減っているがそれでもまだ結構な水分を含んでいるようだ。
服の裾に手を掛けた瞬間、うっすらと俺の体、いや服が光る。なんだ? と思った時には俺が来ていた服に含んでいた水分が一切なくなっていた。
「え?」
「ごめ……これ、先にやた方がよかた」
スゥがやったのか。ああ、いや、そうだよな。寝床に使っている草、いつも乾燥しているからこういうのが出来てもおかしくないよな。よくよく見てみればスゥの体と服、乾いているし、そういう素材、と思っていたけどそんなに都合のいい物なんて無いよな。
しかし、前ここから出る時に使わなかったのは忘れていたのだろうか? 何かそんな気がするな。あの時はすぐに水気を絞ることが出来たし、日も出ていたから問題なかったけどさ。
「いや、ありがとうスゥ。助かった」
身体が冷えているのは変わりないが少なくともこれ以上冷えることは無くなった。となれば、まずは暖を取らないといけないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます