カイラの家との話し合いに臨む

 

 俺が家に戻って来てから3日が過ぎた。直ぐにでもスゥの所に帰りたい気分になっているが、まだカイラとの事が済んでいないため、最低でも後数日はここに留まらなければならない。


 そして、今日は昨日カイラの家へ俺が生きていたことを伝えているため、カイラとその両親がここへ来ることになっている。


 基本的に話し合いをするのだけど、話し合う内容が俺とカイラの婚約の契約についてなので確実に揉めることになるはずだ。


 我が家としての方針は、確実に俺とカイラの婚約をカイラの責任として破棄することだが、確実にあちらもそうならないように尽くしてくるだろう。


 まあ、それを見越して今日までの3日間にやれることはやった。相手がやりそうなこと言いそうな事を予測し、それに対処するための情報や言い回しを決め、対策を練っている。幸い、俺が戻る前からそう言った事態に対処するために情報を集めていたから、そこまで手間はかからなかった。



 そして、予定の時間をやや過ぎたころにカイラたちが我が家にやって来た。

 商人的には時間に遅れると言うのは有ってはならないことだが、貴族にとっては日常茶飯事どころか、相手より自分の方が立場は上であると示す行為だったりもする。

 なので、カイラたちが遅れて来たということは自分たちが上であり、こちらには非は無くそちらの言い分は聞く気はないと示している可能性が高い。


「久しぶりですね。ヘキスト子爵殿」

「ふん! わざわざ呼び出しおって、こちらは忙しい身なのだ。さっさと話しを終えたいところだな」

「はは、そうですか。なら直ぐに部屋に向かいましょうか」

「ああ」


 カイラの父親が悪態をつきながら父さんと話しているのだけど、そもそも我が家で話し合いをすると言いだしたのはヘキスト子爵家側なのだけどな。

 もしかして、話し合いが不利になったら、強引に話し合いに呼ばれて脅されたとでも言うつもりなのか?


「ルーク、貴方生きていたのね」

「本当によく生きていたと思うよ。崖から落とされて生きていたなんて、俺はどれだけ運が良かったのだろうね?」


 生きていたのもそうだが、落ちたらスゥに遭えたのだからかなり運は良かったのだろう。それに、そうなったのは崖から蹴落としたカイラのおかげとも言えるから、ほんの少しだけは感謝している。

 まあ、今までの事や崖から蹴落とした事を鑑みると、スゥに遭えたのを加味しても評価はマイナスでしかないのだけどな。


「ちっ」


 俺が生きていたのが余程気に食わないのか、俺を見つけてからカイラの表情が険しい。まあ、確実に殺したと思っていた人物が生きて帰ってきたら嫌な顔もするか。

 ただ、父さんたちに私を庇って死んだ、と言っていたくせに、生きていてうれしいといった感じに繕わないのはどうかと思うけどな。


「何で生きているのよ。潔く死んでおきなさいよ」

「そうもいかないからな」

「っ!?」


 おそらくカイラは聞こえないように呟いたのだろうけど、辛うじて聞こえたので返事をしておく。すると、聞かれたことに気付いたカイラは失敗したと言わんばかりの表情をした。


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