家族の反応
家に着くと直ぐに使用人が俺の確認をするために来た。おそらく、捜索隊が別人を連れてきて成功報酬を得ようとしていると判断したからだろう。
しかし、確認しに来た使用人は俺を見て動きを止めた。そして数秒の間隔を開けて、顔が驚きの表情に変わる。
「えええ!? ルーク様!? 生きておられたのですか!? え、本物!?」
「あ、ああ。そうだ」
信じられない物を見た。と体全体で表し、あたふたしている使用人を若干引いて見ながら返事をする。と言うか、本物って何だよ。俺がいない間に偽者でも出てきたのか?
「直ぐに旦那様たちを呼んできます!」
「え、ちょっと、その前に風呂に入って、着替えをしたいのだけど。…聞いてないな」
残念ながら俺の声は目の前に居た使用人には聞こえていなかったようで、その使用人はそのまま屋敷の奥に走って行ってしまった。
勝手知ったる我が家だから別に許可を取る必要は無いかもしれないけど、今まで死んでいたと思っていた者が突然現れて家の中を歩いていたら、家の中で働いている使用人を無駄に驚かせてパニックになってしまうかもしれない。場合によってはゾンビと間違われて攻撃される可能性もないとは言えない。
そんなことを考えていると、忙しない様子で先ほど走り去っていった使用人が父さんを連れてこちらに向かってきた。
「ルーク様ぁ! 旦那様を連れてきました!」
「おぉ、おおっ! 生きていたのか!?」
そう言って俺の肩を掴んだ父さんの顔に浮かぶ表情は驚きと安堵。驚きに関しては、使用人と同じだろうが、安堵に関しては俺が生きていたことに対してと言った感じではなく、おそらくカイラの家との契約に関する不安が無くなったからだろう。
「まあ、死にかけていたけどね」
「ああ、そうか。その話は後で聞かせてくれ」
「わかったけど、出来れば先にふ」
「兄さん!」
どうやら先ほどの使用人がもう弟のサシャを連れてきたようだ。一月半ほど会っていなかったが、父さん同様変わりはないようだ。いつものように少し不機嫌そうな表情を浮かべている。
「ああ、サシャ久しぶりだ」
「久しぶりって、そうじゃないだろう! 何で生きているなら直ぐに帰ってこなかったんだよ!」
「いや、怪我していたんだよ。直ぐに動けないようなやつをな」
「うぐっ!」
それにスゥに匿われていたから自力で戻って来られなかったし。まあ、その辺りは詳しく話す必要は無いよな。いや、むしろ、変に話すとスゥに迷惑が掛かる可能性が高い。
「母さんは?」
父さんとサシャは使用人に連れてこられたけど、母さんの姿は無い。しかも使用人もサシャを連れてきた時点で、この場に留まっている。
「あいつは別の商会との会談に行っている。もし、お前が戻ってこなかった時のことを考え提携の話をしに行ったのだが、お前が生きて帰ってきたからその必要は無くなった」
「ああ、そうか。なるほどね」
ああ、そうか。確かに商会の会長は、所持している店を発展させ守るのが仕事だ。だから、カイラの家との契約がある以上、俺の生存がわからなくなった時点でそういう風に動くのは別におかしくはないし、当然のことだろ。そこにとやかく言うつもりはないし、恨むこともない。
「それでここまでの話についてだが……」
「ごめん。その前に風呂に入って来てもいい? さすがにこのままなのは気持ち悪いんだ」
「あ、ああそうだな。行ってくるといい」
父さんは今、俺の服装の状態が悪いことに気付いたのか、少しだけ言い淀みながらもそう言って俺を風呂の方向に促した。
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