助けてくれたのは
何処かで水が滴る音が聞こえる。近い場所なのかはよくわからないけど、その音はかなり周囲に反響しているようだ。
それに少しまぶしい気がする。目を開けている訳でもないのに、そう思うと言うことは、おそらくここがかなり明るいと言うことだろう。
音や光が気になって目を開ける。真っ先に見えたのは岩肌だ。そこには光源となるようなものは無い。
身を起こして周りを見渡す。周囲は岩肌に囲まれているようだ。
「……何で俺は生きているんだ?」
崖から転げ落ちて湖に落ちたはずなのに今はここが何処かなのかはわからないまでも、水の中ではないことは理解できる。
「ぐっ!?」
立ち上がろうとして体に力を入れると全身に痛みが走る。痛みがある、と言うことは俺が崖から落ちたことは事実のようだ。周りの景色に一切記憶がなかったので、もしかしたらあれは夢だったのではないかと思ったが違ったらしい。
と言うことは、俺は誰かに助けられたと言うことか? 落ちた場所的に人がいるような場所ではなかったと思うのだが。
しかし、ここは何処だ? 周りが岩肌で囲まれているからここがどこにあるのかすらわからない。せめて太陽が見えていれば、方角くらいはわかったのだけどな。
「もしかしてここは洞窟内なのか」
周りを岩肌に囲まれた場所と言えば洞窟以外に思い当たる場所はない。いや人工的に掘って作った牢獄とかならあり得るが、少なくとも鉄格子が無いからそれは無いと思う。
「って、いつの間にかに裸になっているんだが」
今更だが、俺はパンツ以外、一切着ていない状態だった。もしかしたら俺を助けてここに連れて来た人が脱がしたのかもしれない。少なくとも、湖に落ちたのだから服は濡れていたはずだし、傷の手当ても出来ないだろうからな。
「ん?」
誰かがこちらに近付いてくる足音が聞こえて来る。たぶん、俺を助けてくれた人だろうけど、洞窟の中だから音が反響してどれくらい音の元が離れているかがわからないな。
そうしてしばらく足音の主を待っていると、人の姿が確認できた。
その人はたぶん女性。たぶんと付けた理由は、さすがにまだ距離があるからと、おそらく勢いよく落ちた影響だと思うが右目の視界がかすんではっきりと見えていないからだ。治ってくれるといいんだが、まあ、生きているだけマシだろう。
次第にその女性が近づいてくる。もう姿は片目でもしっかり確認できる。長い髪、しなやかな肢体、胸もまあまあある気がする。
ただ、見た目的に女性と言うよりは少女だな。たぶん俺よりは年下くらいの印象だ。14,5歳くらいか?
そうして近付いて来た少女は俺が起きていることに気付いたようで、脚を早めた。
「あぇと、ぉき……てる」
ん? 何か話し方がおかしいな。やけにたどたどしいと言うか、話慣れていないのか?
「君が俺を助けてくれたのか?」
「そ……う」
少女が俺に近付いて来て、観察している。
「だい……じょぶ?」
「え? あーまぁ、そうだな」
「そぅ」
俺が返事をすると少女が柔らかく笑った。
近付いて来て初めて気づいたけど、この少女、笑顔が可愛い。凄く可愛い。何だろう。柔らかい顔立ちでみずみずしい肌。唇も柔らかそうだ。はっきり言って好みなんだけど。
しかし、凄い濡れているがもしかして水場が近いのか? それとも俺を助けてそれほど時間が経っていないのか。
「凄く濡れているが、君は寒くないのか?」
「わた……し、ウンディ……ネだから、こ……れがふつ」
「え? うんでぃね? ……ウンディーネか? え? ウンディーネ!?」
「っ、ぅあ…そぅ」
驚いて叫んでしまい目の前の子を驚かせてしまった。
ていうか、え……なに? この子、人じゃないの? そもそもウンディーネって空想の存在じゃないのか? と言うか俺ってウンディーネに助けられたの!?
まさか、崖から落ちて死にかけている中で遭遇したのが精霊と言われているウンディーネとは。もしかしてここ、死後の世界とかではないよな?
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