日記帳? 教科書じゃない?
シュネは日記帳を片手に自室に向かう。
ランプに火を灯して座椅子に座ると日記帳のページを捲り始めた。
ここから俺の新たな人生が始まる。
まずは店舗の名前を決めよう。
トリミングサロン「ムナカタ」……違うな。
トリミングサロン「タケル」……自分の名前は無いな。
ムナカタ……ムナカタ……タギリ……タゴリ……イチキシマ……イチキシマ。
トリミングサロン「イチキシマ」……長いか?
トリミングサロン「サヨリ」……う~ん。
明日にでも妻に聞いてみよう。
「タケルって名前だったんだ」
シュネは日記を読んで初めて祖父の名前を知った。
まだ名前を知っただけだが、それだけでもシュネは嬉しいと思った。
統皇暦5年 5月14日
妻と相談して名前を決めた。
トリミングサロン「イチキシマ」
これが俺の……俺たちの店の名前だ。
一度はあきらめたトリマーへの道をまた歩ける。それは喜ばしいことだが、やることが沢山ある。
道具とトリミング方法の確立だ。
まずは道具の作成から入ろう。
統皇暦5年 5月15日
今日はラブラへ道具の調達と作成依頼をしに行った。
ハサミの作成依頼を鍛冶屋に頼みに行ったが、求める素材がなかった。
取り敢えず試作でいくつか作ってもらうことにした。
技術者を幾人か見て回ったが、スリッカーブラシの作成は厳しそうだ。
当面は獣毛ブラシだけでやっていくしかないだろう。
コームは銀製が売っていたので今度製作者を尋ねてトリミング用に作ってもらおう。
問題は爪切りだ。
ギロチン型は無理でも、ハサミ型はあるだろう思ったが、ハサミ型すらなかった。
一から作らなければならない。これは苦労しそうだ。
明日は魔法都市コーテッドへ行ってみようと思う。
統皇暦5年 5月16日
妻と一緒にコーテッドへ来た。
俺も妻も攻撃魔法は使えるが、生活魔法は使えない。
そこで一から魔法について調べることにした。
【メモ】
・詠唱魔法……言葉にすることにより、周囲の精霊に力を貸してもらい自身の魔力を特定の属性に変換し魔法を発動させる。
自信の魔力をその都度消費するので燃費が悪い。
・術式魔法……詠唱を唱える代わりに術式を書くことにより強大で繊細な魔法を発動させることができる。
時間が掛かる上、膨大な魔力を消費する。
・呪符魔法……札に術式を書き、特定の魔法を封印して即座に魔法を発動させることができる。
消費魔力量は少ないが、札一枚につき一つの魔法を封印することしかできない。
・刻印魔法……術式と呪符の中間の魔法で、道具に刻印を施せば複雑な魔法を発動させることができる。
中間の魔法故に込める魔力量の調整や施す刻印が難しく、些細なミスで魔法の暴発が起きる可能性がある。
理想は刻印魔法をうまく扱えるようになることだろう。
魔道具屋の店主に聞くと中立国家マテリラに刻印魔法に特化した工房があるという。
ここでの調べものが終わり次第、マテリラへ向かおう。
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